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酔ったレイラが放った“好き”の一言で全員の理性が死んだ夜

夜風が香りを運ぶ頃、城の一角——

普段は使われない小さな広間に、淡い灯りがともっていた。


レイラは訝しげに扉を開ける。


レイラ

「……?

 どうして灯りが……?」


部屋に入った瞬間——


パンッ――


乾いた音とともに、色紙がひらりと舞った。


「姫さま!いらっしゃい!^^

 ほれ、姫さまのために、私が夜通し準備したんじゃ!」


レイラ

「……爺……?」


爺は胸を張り、得意げに髭をしごく。


「昨日は色々あっただろう?

 私なりに思うところがあっての。

 “仲直りの席”を作ったんじゃよ」


レイラ

「……仲直り……?」


その言葉に視線を向けると——

少し離れた席に、シャガルとテュエルが座っていた。


二人は同時に肩を揺らし、目を合わせてすぐ逸らす。


シャガル

「…………」


テュエル

「…………」


レイラ

(…ぅ……まだぎこちないな……)


爺は気にする様子もなく、卓を叩いた。


「さあさあ、酒と料理をたんと用意しておる。

 今日は何があろうと三人で飲め。

 笑え、泣きたきゃ泣け。

 ……殴るのは――まぁ今日はやめとけ!w」


レイラ

「……ありがとう、爺」


胸の奥がじんわりと温かくなる。


テュエル

「……あの……酒……レイラ様はお嫌いですが……」


その言葉に、シャガルの眉がわずかに動いた。


――レイラが酒を苦手としていることは、シャガルもよく知っている。


だから――

この場で酒を口にするつもりは、最初からなかった。



だが――


レイラ

「………………飲む。」


テュエル

「!? レ、レイラ様!?」


シャガル

「…レイラ、本気か……?」


レイラ

「せっかく爺が用意してくれたんだ。

 それに……シャガルにも、いつも我慢させていたからな」


その言葉に、シャガルの表情が一瞬だけほどけた。


レイラは杯を手に取る。


テュエルが止めようとするより早く、シャガルが酒を注いだ。


シャガル

「……無理はするな……」


レイラ

「……わかっている」


杯を口に運ぶ。


一口。


レイラ

「……っ……」


すぐに頬が赤く染まる。


テュエル

「レ、レイラ様!?」

(弱い……!圧倒的に…!)


シャガル

「まだ一口だろう……!?」

(どれほど弱いのだ…!)


レイラは首を振る。


レイラ

「……意外と悪くない……まだ……いける……」


次の瞬間——


一気に飲み干した。


テュエル

「レイラ様あああ!?」


シャガル

「待て、速すぎる!」


しかし――もう、遅かった。


レイラ

「……ふふ……♡」


視界が揺れ、体がふらりと傾く。


——その瞬間。


爺はすべてを察し、静かにその場を去った。


 


テュエル

「レイラ様!? 大丈夫ですか!」


レイラ

「……テュエル……なんでそんな顔してるんだ……?」


とろんとした目で袖を掴み、ぐっと距離を詰める。


テュエルの思考が止まる。


レイラ

「顔に……怪我……するな……

 せっかくの顔なんだから……」


 


ふらりと距離を詰めて——

頬を寄せる。


すり、すり。


 


テュエル

「っ……!?」

(こ……殺す気か……!)

(……可愛い)

(いや無理だ)

(死ぬ…)


思わず鼻を押さえる。



シャガル

「……レイラ、余のほうにも来い」



「……ずるいぞ」


ぽつり、と漏れる。



「さっきから、猿ばかりだ」



レイラ

「……?」


きょとん、としたまま——


 

レイラ

「ん……シャガルぅ……お酒……おいしいねぇ……

 我慢させて……ごめんねぇ……」


 

シャガル

「……構わん」

(それでお前が離れぬならな)


 

レイラ

「やさしいぃ……」



ふらりと、今度はシャガルへ寄る。



そのとがった耳へ、指を伸ばす。


 

レイラ

「……きれいな形ぃ……」



なぞる。


 

シャガル

「な、なにをしておる……!」



ぴく、と耳が震える。

わずかに頬が赤くなる。


 

レイラ

「ん……」


 

そのまま、ふらりと顔を寄せ——



かぷ。



シャガル

「ッ……!!?」


 

レイラ

「……んむ……固い……」


 

シャガル

「や、やめろ……!!

 そんな無防備に触れるな……!」


わずかに顔が赤くなる。



レイラはそのまま二人にしがみつき、


レイラ

「……ふたりとも……好きぃ……」


 


その一言で――


空気が止まった。


 


シャガル

「……い、今、言ったな……?」


 


(好き、と……言った……?)


(余に対して……?)


(それは……どういう意味だ……?)


 


一瞬で、思考が巡る。


 


テュエル

「……へっ……?」


 


(す……好き……?)


(誰が……誰を……?)


(レイラ様が……ボクを……?)


(いや待て、シャガルにも……?)


 


脳が追いつかない。


だがレイラはそのまま力を抜き、


レイラ

「…ん……ねむい……」


「みんなで…一緒に…寝よ…ぉ……?」


そのまま崩れるように眠りに落ちた。



シャガル&テュエル

「……………………」


 


静寂。


 

(…………は?)



——この夜。


何かが確実に変わり始めた。


 ――――――――――


レイラが腕の中で完全に眠り落ちた瞬間——

広間には、シャガルとテュエルの“異様な沈黙”だけが残った。


二人同時にごくりと息を飲む。


シャガル

「……で、どうするのだ」


テュエル

「決まっているでしょう、寝室へお運びします。

 俺が。」


シャガル

「余が持つに決まっておろう…」


テュエル

「いえ、俺が持ちます…!」


シャガル

「お前に任せたら落とすであろうが…!」


テュエル

「落としません!むしろあなたのほうが手荒です…!」


レイラ

「ん……ぅ……」


シャガル&テュエル

「ッッッッ!!!!」

(今の可愛すぎるだろうが…!)


結局ぶつかり合いの末——


レイラを寝台へ運ぶという結論に至る。


だが運び方で再び揉め、最終的に——

レイラの左右を両側から抱きかかえるという意味不明な態勢に落ち着いた。


シャガル

「……この形、どう考えてもおかしいだろう……」


テュエル

「あなたが譲らないからですよ」


レイラ

「…ふにゃ………」


二人

(かわいい……♡)


互いに耳まで赤くしつつ、妙な合体みたいな形で寝室へ運ぶことに成功した。


寝台の上へ、そっとレイラを横たえる。


――そして問題の“添い寝”


布団の前で二人は固まる。


シャガル

「……まさか……

 本当に……三人で……?」


テュエル

「…無理です。理性が死にます」


シャガル

「余だって死ぬわ…!」


二人揃って踵を返そうとしたーーその時。


レイラ

「やだぁぁぁぁぁ…

 一緒に寝るぅぅぅ……!」


袖を、ぎゅ。


シャガル&テュエル

「…………っ!!!!」

(反則……!)


もう逃げられなかった。


レイラは真ん中に横たわり、その両脇にシャガルとテュエルがそれぞれ身を寄せる。


シャガル

(近い……!!腕が……触れて……いる……!)


テュエル

(……甘い…フェロモンが漏れているのか?)


(……近い……無理……死ぬ……)


※九尾固有のフェロモン※


お互いが同時にレイラへ手を伸ばし、

同時に相手の手を叩く。


シャガル

「触るな……!」


テュエル

「あなたこそ……!!」


だがそんなテュエルも、

レイラの寝顔に吸い寄せられていく。


テュエル

(可愛い……もっと…近くで……)

と顔が迫った瞬間


シャガルの足が

ガッッッ!!!

とテュエルの横顔を蹴り飛ばす。


シャガル

「なにをしておる貴様……!!」


テュエル

「いったぁぁぁぁっ!?

 あなたこそ距離を詰めてたでしょうが!!」


シャガル

「余は見守っていただけだ!!」

(本当は触れたかった)


テュエル

「俺だってそうです!!!」

(本当は触れたかった)


レイラ

「ん……」


小さく寝返りをし、

布団が揺れ、レイラの衣の胸元が少しはだけた瞬間――


シャガル&テュエル

「ッッッッッッッ!!?!?!?」


シャガル

(なんだこれは……!!!

 幸せ……では……ない……!

 ただの……拷問……!!)


テュエル

(む、無理だ……これは試練……修行……苦行……)

(心を無に……無……無……)


二人は寝ることも許されなかった。

眠ったら負けだった。

眠ったら相手に触られる気がした。


そして——夜が明けた。


 


レイラが目を開ける。


レイラ

「……………ん?

 ……お前たち……なぜここで寝ている……?」


左右には、

目の下にくっきりクマを刻んだシャガルとテュエルが生き絶えたように並んでいた。


シャガル

「………………」


テュエル

「………………」


レイラ

「……?」


シャガル&テュエル

「………………」

(話す気力もない)


こうして地獄の一夜は幕を閉じたのだった。


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