双国の姫、戦地に降り立つ――再会と共に戦局が動き出す
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◆煌龍国・野営地前──
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双国から駆けつけた三人が、広大な野営地の外に辿り着く。
兵たちは忙しく動き回り、焚き火の煙が空をくゆらせていた。
レイラは外套の帽子を深く被り、顔を隠している。
(美しすぎて戦前に無駄な騒ぎになるため、とテュエルの指示で隠されている)
煌龍兵A
「止まれ!名を名乗れ!」
槍の穂先が向けられる。
馬から降りる三人――
レイラ
「……双国の者だ。通して欲しい」
煌龍兵B
「双国……?」
そんな報せは兵には届いていない。
そもそも煌龍国王ですら、レイラが“戻った”ことはまだ知らない。
煌龍兵A
「煌龍国は今、凱帝国との戦準備の最中!
部外者は通せぬ!」
レイラは一歩引き、言い返しを堪える。
代わりに後ろから、誰より声の大きい男が出てくる。
シャガル
「貴様らァ……!」
「助けに来てやった余に槍を向けるとは、
人間はやはり礼儀というものを知らんな?」
不機嫌極まりない声音。
威圧が空気を重く沈ませる。
テュエル
「……失礼。
こちらにおられるのは、双国の正統な主――
レイラ様です。」
声は低く、荒れていない。
だが、場の空気がぴんと張り詰める。
テュエル
「事情は承知しています。
しかし、客人に槍を向ける前に、
言葉を選ぶべきではありませんか?」
煌龍兵A
「れ、レイラ……?」
(名前だけなら噂で聞いたことがある……双国の“姫”……?)
煌龍兵B
「そもそも“姫”など……どこにおられる?
男の装束に、その背丈……。ふざけた戯言を申すな!」
テュエルの眉がぴくりと動く。
テュエル
「……今……なんと言いました?」
煌龍兵A
「だから!姫だと言われても信じられ――」
テュエル
「おい貴様ァァァァ!!
レイラ様を侮辱するとは何事だこの凡愚ッッ!!
その口、二度と開けぬよう縫い合わせてやろうか!!」
※レイラが絡むと冷静ではいられません
煌龍兵たち
「ひっ……!?」
シャガルもまた、静かに怒気を滲ませる。
シャガル
「ほう……余の女を“男扱い”とは。
人間の目は節穴か?それとも命が惜しくないのか?」
兵たちは完全に腰が引けている。
テュエル
「その“余の女”、呼び方をやめろ。
誰も貴様の女ではない」
シャガル
「ふざけるな。
余が惚れた女だ、余の女で相違ない」
煌龍兵C
「な……なんなんだこいつら……!」
半ば呆然と呟く。
テュエル
「しかし……助けに来てやったというのに門前払いとは!!」
「頭を垂れて感謝するのが礼儀というものだろうが!!」
※いつもはもっと冷静で協調性ある笑顔の青年です
レイラ
「お前たち……やめろ……」
しかし兵からすれば、目の前の三人はただの怪しげな集団に過ぎない。
煌龍兵B
「証を見せろ!
名乗りだけで通すほど我らは甘くない!」
シャガル
「ならば力ずくで通るが――」
本気でやりかねない気配で、一歩前へ出る。
レイラ
「待て!!!」
レイラが袖を掴み、強く引き止める。
シャガル
「む……」
(戦前に兵と戦う気かこのバカ殿は)
露骨にそう言いたげな顔で、レイラは睨む。
騒ぎは次第に大きくなっていく。
兵たちも緊張し、ざわめきが広がり、
弓兵までもがこちらへ狙いを定め始める。
張り詰めた空気。
一触即発――
そのとき。
???
「…………この声……」
聞き覚えのある声。
野営地の一角。
物音の中で、ひとりだけわずかに顔を上げる男がいた。
ナイル
「……この足音……この気配……」
目を細め、わずかに笑う。
ナイル
「……レイラちゃん?」
その声に、近くにいたシアンが反応する。
シアン
「ナイル…?どうしたの?」
ナイル
「間違いない……!あれは……♡」
シアン
「……レイラ?」
「……っ!」
ほんの僅か、表情が緩んだ。
シアンは振り返り、声を張る。
シアン
「リア!!」
――――――――――
真珠色の髪をなびかせ、リアが全力で駆けてくる。
リア
「みんな!!そこを……どいて!!!」
兵たちが一斉に道を開ける。
リアはレイラの姿を捉えた瞬間、瞳を潤ませた。
リア
「…………レイラ……!」
レイラは外套を外し、ふっと笑う。
レイラ
「ふっ……元気にしていたか?久しいな」
リア
「レイラーーーーー!!♡」
勢いよく抱きつく。
レイラはわずかによろけながらも、それを受け止める。
レイラ
「おっと……」
リア
「本当に来てくれたの!?
あなたの状況的に無理だと思ってたのに……!
ありがとう……ありがとう……!」
レイラは優しく、その背をぽんぽんと叩く。
――その光景を見つめる、二つの影。
テュエル
(レイラ様ぁぁぁぁぁ!!
なぜそんな距離感で!?)
地面にめり込みそうなほど、静かに打ちひしがれる。
シャガル
(……ちっ)
面白くなさそうに、わずかに目を細めた。
「……なんだこの馴れ馴れしい女童は。
レイラにべったりと触りおって……不愉快だ」
そこへ――
シュシャ
「レイラ殿!?!?久しぶりではないか!!」
ナイル
「相変わらず美人だなぁレイラちゃん♡
テュエル君も、久々に会えて嬉しいよ」
レオ
「姫姉ちゃーん♡元気してたか〜?」
シアン
「…また会えて嬉しい。」
その声をきっかけに、
天幕の影や人混みの向こうから、
見慣れた顔が次々と顔を出してくる。
気づけば――
懐かしい面々が、自然とレイラの周りに集まっていた。
レイラ
「みんな……久しぶりだな」
静かに目を細める。
感情を大きく表に出すことはない。
それでも――
その微笑みは、隠しきれないほどやわらかかった。
ナイル
「あれ?この人はだぁれ??」
レイラ
「そやつは……」
沈黙。
ナイルが一度、瞬きをする。
レイラ
「……私の……専属護衛だ」
ナイル
「なに?今の間w」
リアが視線をシャガルへ移し、覗き込む。
リア
「あなた…!すごい美形ね。
護衛にはつい最近なったの?」
シャガル
「……余が美しいのは認めるが……
余はまだそなた達を認めておらぬ。
気安く話しかけるな」
シュシャ、ナイル、シアン、レオ、リア――
全員がきょとんとする。
(余…………)
レイラ
「すまない……」
(訳ありなんだ……)
リア
「いいのよ!それより……この間は大丈夫だったの!?」
「双国の空が禍々しいもので包まれて……
レイラも苦しんでいる気がして……すごく嫌な気配がしたの……。
祈ることしか……できなかった……」
レイラ
「あぁ……あの時、リア達の祈りのおかげで助かった。
祈ってくれたから……私は私でいられた……」
少しだけ、柔らかく目を細める。
レイラ
「……ありがとう、リア」
リア
「ううん……それは違うわ」
リア
「レオが言ったの。“みんなで祈って”って……。
レオがいなかったら、私たち動けなかったもの」
少しだけレオの方を振り返る
リア
「だから……本当にすごいのはレオよ」
レオ
「言ったろ? みんなで無事を祈るってさ」
少しだけ照れを隠すように笑う
レオ
「俺はただ、見えたことを言っただけ♡」
レイラ
「……ありがとう、レオ」
シャガル
「…………あぁ、こやつがあの時の女童か」
(……あの時、内が溢れていたな)
リア
「女童………………?」
目が点になる。
シュシャ
「おいお前!!我らが姫になんていう暴言の数々!!
レイラ殿の護衛といえど、もう容赦せぬぞ!!」
シャガル
「ほう……?貴様ごときに余がやれると?」
リア
「……なんか……この二人、ちょっと似てない?」
ナイル
「ボクも思ったw」
「言葉がまっすぐで、強気っていうかw」
「仲良くすればいいのに、絶対仲良くならなさそうなのがまた面白いね♡」
レイラ
「…シャガル」
低く、明確な怒気。
珍しく本気で怒っている気配に、シャガルがわずかに目を見開く。
レイラ
「私の【大切な】友だ。
いくらお前でも、これ以上口を出せば――私が容赦しない」
シャガル
「む……」
わずかに視線を逸らす。
シャガル
「……すまない」
テュエル
「…貴様は戦が終わるまで昼寝でもしていろ。
邪魔なだけだ」
シャガル
「なんだと!」
……この二人を並べておく理由はないな。
そう判断し――
レイラ
「二人とも、どこか行ってろ」
テュエル&シャガル
「………………」
不満げに、とぼとぼと歩き出す。
レオ
「はははははw だいぶ賑やかになったなw」
リア
「ほんとねw」
ナイル
「ほんとだよ。
いきなり“余”なんて言い出すんだもん。」
「古の妖かと思っちゃったよ」
レイラ
「……そうだ」
ナイル
「……へ?」
レイラ
「あの日、禍々しく双国の空を包んだ張本人だ」
――沈黙。
リア・シュシャ・ナイル・シアン
「えええええぇえぇえぇえぇーー?!」
レオ
(うんうんw知ってたー)
――――――
ナイル
「え?!いいの!?いいの!?レイラちゃん!?
そんなの側に置いておいて!」
リア
「そうよ!レイラ!あなたを苦しめた本人なのよ!?
許せないわ!!」
シュシャ
「そうだそうだ!!それにあの暴言の数々!!許されん!!」
シアン
「傷つけるならダメ…」
レイラ
「……また暴れでもしたら困るから監視下に置いてある。それだけだ」
一拍。
レイラ
「……だが……結構いいヤツなんだ」
少しだけ困ったように笑う。
レイラ
「時間はかかるかもしれないが……
変わらず仲良くしてやってくれると助かる」
リア、ナイル、レオ、シュシャ、シアン――
それぞれが一瞬、互いの顔を見合わせる。
リア
「…………レイラがそう言うなら……」
ナイル
「……だね」
シアン
「…………」
(小さくうなずく)
シュシャ
「ぐぬぬ……リア様がそう言うなら……! そしてレイラ殿の頼みでもあるならば……!」
「……よし、努めよう!!」
レオ
「俺はオッケーよー」
レイラ
「……みんな、ありがとう」
ふっと微笑む。
そして――気づく。
レイラ
「…ロイロとシュンは……居ないのだな?」
リアの表情が、ほんの一瞬だけ止まる
リア
「……皇宮で流行病が広がっていて……
シュンは、それを見捨てられなかったの」
その言葉を紡ぐ間に、ほんのわずか――
リアの表情が揺れた。
レイラはそれを見逃さない。
ナイル
「……シュン君、レイラちゃんに会えるって知ってたら、絶対来てたよ」
「あの子、放っておけない性格だからねぇ。
自分が倒れるまでやるタイプでしょ」
シュシャ
「うむ……無茶をしてでも来たであろうな……」
シアン
「…残念………」
レイラ
「そうか……」
静かに息を落とす。
レイラ
「シュンはまた……人のために一人戦い、成長しているのだな……」
わずかに目を細める。
レイラ
「もし皇宮に戻ったら……会いたかったと伝えておくれ」
(リアのあの反応……)
(……ロイロが“不在”か……
いや、あの者に限ってそんなことはない……)
(折を見て……だな)
レオ
「しかしまた心強ぇ助っ人が来たもんだな」
リア
「ほんとに!!来てくれて嬉しい!」
レイラ
「あぁ……長居はできないが……
全力で戦力を削ってやるさ……」
ナイル
「くぅ〜♡……レイラちゃん♡かっこいい♡」
周囲の煌龍兵たちはざわめく。
(“あの一行”がここまで慕う人物……何者だ……?)
空気が一変する。
――その時
野営地の奥から、
落ち着いた足音がゆっくりと近づいてくる。
長身の青年が現れる。
煌龍国王――シンジュ。
兵たちは一斉に膝をつく。
リアはレイラからそっと離れ、シンジュへ向き直る。
シンジュの瞳が、レイラを捉えた瞬間――
わずかに細められた。
シンジュ
「……あなたは……?」
レイラもまた、真っすぐ見返す。
レイラ
「双国王代理――レイラだ。
この戦、力添えに馳せ参じた」
場が静まり返る。
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