無色
春が過ぎ、夏を迎え、秋を越え、冬が訪れる。
私は冬を迎える度に思い出す。3年前のあの出来事を・・・
あの年の冬は寒さが厳しく何度も雪が降った。辺り一面が雪の白さで覆われる中、
彼だけが「黒」かった。そして「赤」かった。
いや、正確には彼だけではない。「自分も同じ」なのだ。
「本当に何も分かってなかったな…私」
軽く頭を振りながら独り言を呟く。
あの頃の私は年相応にわがままで、オシャレを楽しみ、会社や上司の愚痴を友達と
言いながらお酒を飲んだり、恋の駆け引きも楽しんだりする。つまりは「普通」の
生活を過ごしていた。
毎日が同じで変哲もない日常。「平凡」で「普通」だがそこそこ居心地が良くて
きっとずっとこんな毎日が続いて行くものだと信じていた。
彼に出逢うまで。
いや、私が私に出逢うまで
気が付けばメインの通りである並木通りまで歩いていた。
何だかこんなにゆっくりと歩くのは久しぶりの事だと思う。
「貧しい国の子供達に愛の手を!」
「募金のご協力宜しくお願いしまーす!」
高校生だろうか。制服を着た生徒達が通りの両側に並び、募金箱を手にしながら
大きな声で募金の呼び掛けている。
「恥ずかしがらずにもっと大きな声で」っと言っているのは担任の教師だろうか。
無意識に腕時計で時刻を確認する。現在の時刻と学生が学校の活動の一環で
募金活動を行っているなら、あと30分位で撤収になるだろうと勝手に考え、
近くのベンチに腰を下ろす。
ボンヤリと並木通りを眺めていると行き交う人々はまるでそうする事が
当たり前で当然だ、と言わんばかりに募金箱に小銭を入れて行く。
生徒達も自分の持っている募金箱に募金されるのが誇らしいのか笑顔だ。
ベンチに腰掛け一つ大きく息を吸い込む。
冬の冷たい空気が身体中を駆け抜ける。
気が付けば学生達の姿は無く、町はまた直ぐ別の賑わいを見せ始めた。
まだ立ち上がる気にはなれず、暫くベンチの上で瞳を閉じる。
彼らと出逢い、出逢ってしまった。あの白くて赤くて黒い季節をまるで
昨日の事の様に思い出していた。




