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さすがだな!店員さん!

『術者の意識根絶を確認、千尋ノ魔法 零式リボーン発動。術者の意識を絶対領域下の再生速度に基づき、一時的に活性化させます』


 その命のこもらないただ平坦な言葉が脳内に流れ、俺の意識は途端に現実へと無理やり引き戻らせた。


「はっ!」

 意識が戻ったその瞬間に——

 ドッシィーン

 盛大に背中から落下した。


「ぐふっ!」

 背中から落下した衝撃で肺の中の空気が一気に出て行く。キモチわる

「大丈夫ですか⁉」

 すぐさま駆け寄って来るのはあの店員さん、あせあせと俺の体を抱き起こす。店員さん柔らかいな〜ってそんな呑気にしてる場合じゃない。

「俺は全然大丈夫ですから、メメナの方に」

 俺よりメメナの方がはるかに深刻だろう、精神的に。

 すると店員さんはキョトンと目を開き。

「え?メメナちゃん?どこですか?」

「ワッツ?」

 見てみるとそこにはメメナの姿はなく、もぬけの殻となった試着室だった。しかも試着室にははずれたはずのカーテンが無かった。

 一体どうゆー事だ?メメナはどうした?カーテンはどこ行った?まさかの謎解きタイムか?


「メメナちゃんはどこに行ったんですか?」

 キョロキョロ周りを見渡す店員さん、その姿はどこか心配そう。

「いや、俺も分かりません」

 こんな短期間で姿形を消すなんて普通の人が成せる技じゃないぞ。……あいつは普通の人じゃないよな……まぁ騒ぎにならなきゃいいけど。


 とりあえず俺は立つ、周りを見渡す為に。すると案の定、俺の予想通りに少しざわめきを見せていた。でも大して注目はされていないよう、これなら大きな騒ぎにはならないな。

 とりあえず一安心、でもメメナがいない事に変わりは無い。

 さっさと捜さないとヤバい事になりそう、そんな予感がする。まぁ俺の予感は本当にただの予感だけで終わるんだけどな、なら大して心配せんでもよいか。

 そんな呑気な俺とは裏腹に


「は、早くメメナちゃんを捜さないと!」

 凄く焦ってる、焦り過ぎて過呼吸気味になってる。確かにメメナがいなくなったのは問題だけどそんなに焦る事なのか?だってただの他人だろ?

「まだ店内にいるかも」

 独り言の後、店員さんは急いで店内を歩き始める、俺はメメナを捜すついでについていく。


 あっちへこっちへ店内をぐるりと一周するも、メメナの姿はどこにも見当たらない。いるのはリア充カップルだけだ。


「どこに行ったのよメメナちゃん」

 焦りが表情に現れている、営業スマイルはもはや無い。何か申し訳ないな、こんなにもなって捜してもらうのは、店員さんにも仕事があるだろうに。

 紳士な俺は店員さんに声をかける。

「大丈夫ですよ店員さん、メメナは急にふらっとやって来ますから、そうゆー奴なんです」

「それじゃダメなんです!」

 急にキッとなって声を荒上げる、ちょいビクッたわ。

「あ……すいません…」

 これまた申し訳なさそうにうつむく店員さん。そんな顔しないでよ、こっちが申し訳なくなるから。

 気が落ちる俺と店員さん、言葉も何か出しにくい状況に。そんな中で店員さんが重い口を開く。


「……でも捜さないとダメなんです、向こうから来るのを待つのは確実じゃないんです」

 血眼になって捜すとはこの事を言うのだろう、店員さんの目は赤く充血していた。そして微かに見える涙も。


 この人は本気でメメナを捜している、目を腫れ上げてでも捜している。

「何でそんなに必死になって捜すんですか?店員さんにはそんな義理はないでしょ?さっきだって助けてくれたし」

 無意識に話しかけていた、でもそれだけ心に残っていた。


 俺には何故そんなにも必死になるのかが分からなかった、だって店員さんにとっては赤の他人だ、こんなにもなって捜す理由なんてない。さっきだって俺とメメナが重苦しい雰囲気になった時に助けてくれたし、何でそんなにやってくれるんだ。


「何でそんなに捜すんですか?」


 その人の良さに少々腹が立ってくる、理不尽にも腹が立つのを抑えきれない。何故なのかは分かる、俺は店員さんの器の大きさに嫉妬しているんだ、俺には足りない人の大きさ。

 こういう人こそが主人公に向いているんだと直感で分かる、俺より圧倒的に主人公向きだ。だからこそ俺は嫉妬しているんだ、能力のある者が能力に見合った役割につかない、そんな現場を作った自分に。人の主人公やくわりをただ無情に奪ってしまう自分に。

 だからこそ俺は店員さんに聞く、何故メメナを捜してくれるのかを。


 店員さんは弱々しい風は微塵にも感じさせずにハッキリと答えてくれる。


「そんなの決まってます、万引きだからです!」


 …………理解がちょっと追いつかないんだけど、うん。

「あのー 店員さん……どうゆー事で?」

 何か怖い、何か知らんけど怖い、答えを聞くのが怖い、真実を知りたく無い、何か知りたく無い、とんでもないオチが待ってそうで怖い、全てひっくり返る様な気がして怖い、そんな予感がする。

 あ、でも俺の予感はただの予感で終わるからな大丈夫だ大丈夫だ、そんな心配せんでも。よし、店員さんの答えを快く聞こう。


「メメナちゃんのいた試着室に私が選んであげた服がなかったんです。せっかく高い服を選んでメメナちゃんをその気にさせて買わせようとしたのに、メメナちゃんはその服を持ってどこかに消えたんです、これはもう万引きです、それ以外の何物でもありません。だから私は血眼になってメメナちゃんを捜したんです、まだ店内にいるかもって、でも結果はいませんでした……このままじゃ店長に怒られます、もしかしたら解雇されるかもしれません……そう考えたら涙が………」


 手で顔を覆う店員さん、手で顔を覆いたいのは俺の方だよ………ちょっと待って、心の準備するから、………よし、行きます。


 俺のあの回想は何だったんだぁぁぁぁぉぁぉぁぁぁぉぁぉぁぉぁぁ‼‼‼‼あの真剣な俺は何だったんだぁぁぁぁぉぁぉぁぁぁぉぁぉぁぉぁぁ‼‼‼恥ずかしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ‼‼今思うとめっちゃ恥ずかしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ‼‼返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼‼俺の今までの今に至るまでの全てのキモチを返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼‼


 心の中に反響する悔み、悔み悔み悔み悔み悔み悔み悔み悔み悔み悔み。そしてそれを覆い尽くす恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい羞恥心。

「なのでお願いします!あの服を取り返さないと私の首が危ないんです!」

 俺の手を握って懇願する店員さん、上目遣いで覗き込むように俺の顔を見ている。こんな顔で迫られたら断れないのが男。

「はぁ……分かりました、一緒にメメナを捜しましょう」

 恥ずかしさを多少残しながらも了承。

 すると店員さんはパアッと表情を明るくして

「ありがとうございます!すぐ用意して来ますから店外のベンチで待っていて下さい」

 店員さんは機敏な動きですぐに視界から消える。


 店員さん……よくわからないな………


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