ばれたのは、そっち
――帝国暦三五〇年・春初め 昼休み――
昼の教室は、いつもより少しだけ生徒たちが集まっていた。
クロウの席のまわり。 ガイ、エド、ルーク、サムの四人。
「でさ」
ガイが机に手をつく。
「聞いたのか?」
クロウは少しだけ顔を上げる。
「……まだ」
「おい」
エドが笑う。
「頼むって言っただろ」
軽い調子でも、逃がさない。
クロウは少しだけ考える。
「……そのうち」
「そのうちじゃ困るだろ」
ルークが言う。
「次来るかどうか、重要なんだから」
「なんで?」
クロウが小さく聞く。
「いや」
ガイが少しだけ視線をそらす。
「なんか、いいだろ」
曖昧な答え、クロウはそれ以上聞かない。
(少し、揃ってない)
そのとき。
「お兄様ー!」
扉が勢いよく開く。
軽い足音。
教室の空気が一瞬で変わる。
「クロウ!」
黒猫を抱え、レーミアが立っていた。
――見慣れない顔。
教室の誰かが小さく呟く。
「……誰?」
「なんでいるの?」
ざわめきが広がる。
ミアは気にしない。そのまま、迷いなく近づいてくる。
「エナ姉、来てるよ」
クロウの肩が、わずかに動く。
(……来てる?)
一瞬だけ、視線が揺れる。
「え?」
「もう来たのかよ」
ミアは軽く頷く。
「さっき来てた」
当たり前みたいに言う。
クロウは一瞬だけミアを見る。 ほんの少しだけ、目を細める。
(たぶん、いない)
でも。
「……行く」
立ち上がる。
ミアが満足そうに頷く。
「でしょ」
そのとき。
「レーミアちゃん?」
女子の声。
「初めて見るけど……かわいい」
小さな笑い。ミアは軽く手を振る。
「うん」
特に気にした様子もない。
クロウは一瞬だけそちらを見るが、すぐに視線を戻す。
ミアが手を引こうとして、クロウは一歩だけずれる。二人は教室を出、扉が閉まる。
「……今の」
エドが口を開く。
「エナ姉って言ったよな」
「言った」
ルークが頷く。
ガイの目が細くなる。
「……クロウの姉?」
一瞬、静かになる。
「いや」
サムが首を振る。
「でも、あの人……」
言葉が続かない。
「……ザザだよな」
誰も否定しない。ガイが、ゆっくり笑う。
「なるほどな」
しかし、完全には繋がらない。少しだけ、引っかかったまま。




