第28話 次の管理層
王都の外れ。
古い塔の前で、
クロウが足を止めた。
石造り。
崩れかけている。
誰も近づかない場所。
ただの廃墟に見える。
クロウが言う。
「ここだ」
俺は塔を見る。
「……何もない」
クロウが笑う。
「見えないだけだ」
エリシアが小さく言う。
「重なってる」
俺は聞く。
「何が」
エリシアは答える。
「層」
クロウが壁に手を当てる。
石の壁。
何も起きない。
だが。
クロウが指を軽く鳴らす。
その瞬間。
空気が歪む。
塔の輪郭が、
ズレる。
もう一つの形が現れる。
同じ場所。
違う塔。
光のない構造物。
ログでできた建物。
クロウが言う。
「これが管理層」
俺は目を細める。
「……上じゃないのか」
クロウが笑う。
「上にも下にもある」
エリシアが言う。
「重なってる」
俺は手を伸ばす。
空間に触れる。
指先が沈む。
水みたいに。
クロウが言う。
「行くぞ」
俺は一歩踏み込む。
体が、
すり抜ける。
空気が変わる。
色が薄い。
音が遠い。
世界が軽い。
俺は立っている。
同じ場所。
だが違う。
塔の中。
壁はログでできている。
赤い線。
白い線。
流れている。
クロウが言う。
「ここが第二層」
俺は周囲を見る。
「……静かだな」
エリシアが言う。
「人がいないから」
俺は聞く。
「管理者は」
クロウが答える。
「いる」
少し間。
「ただし」
天井を見る。
「上位」
そのとき。
壁のログが揺れた。
文字が浮かぶ。
ACCESS DETECTED
俺は剣を握る。
クロウが笑う。
「歓迎されてるな」
エリシアが言う。
「違う」
「侵入検知」
ログが集まる。
床から、
何かが出てくる。
人の形。
だが顔がない。
ログで構成された存在。
監視個体。
クロウが言う。
「雑魚だ」
それが動く。
速い。
俺は踏み込む。
剣を振る。
一閃。
体が裂ける。
だが。
すぐに再生する。
エリシアが言う。
「核ない」
クロウが言う。
「めんどくさいタイプだ」
ログの存在が増える。
一体。
二体。
三体。
囲まれる。
クロウが指を振る。
一部のログが消える。
だがすぐに補完される。
俺は言う。
「終わらないな」
エリシアが言う。
「本体がある」
俺は聞く。
「どこだ」
エリシアは少しだけ迷う。
そして、
奥を見る。
塔の中心。
暗い場所。
「……あそこ」
クロウが笑う。
「だな」
俺は走る。
ログの存在が襲う。
無視する。
斬る。
進む。
止まらない。
クロウが並ぶ。
「急げ」
俺は言う。
「分かってる」
頭が、
少し重い。
思考が遅れる。
一瞬だけ。
足が止まりそうになる。
クロウが言う。
「来てるぞ」
俺は答える。
「……ああ」
削られている。
記憶。
判断。
反応。
全部。
少しずつ。
エリシアが言う。
「時間ない」
俺は言う。
「あとどれくらいだ」
エリシアは答えない。
クロウが代わりに言う。
「体感で分かるだろ」
俺は前を見る。
暗い中心。
そこに、
何かがある。
近づく。
ログが薄くなる。
静かになる。
そして。
それはあった。
人の形。
座っている。
動かない。
目を閉じている。
クロウが止まる。
「……上位だ」
俺は聞く。
「強いか」
クロウが言う。
「比べ物にならない」
エリシアが小さく言う。
「気をつけて」
そのとき。
その存在が、
ゆっくり目を開いた。
赤い光。
視線が俺を捉える。
そして言う。
「……また来たか」
俺は目を細める。
「知ってるのか」
そいつは答える。
「何度も」
少し間。
「殺してる」
クロウが笑う。
「いいね」
俺は剣を構える。
「……今回もか」
その存在は立ち上がる。
静かに。
そして言う。
「いいや」
少しだけ笑う。
「今回は違う」
空気が変わる。
ログが止まる。
世界が、
少しだけ歪む。
エリシアが呟く。
「……上位管理者」
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