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派遣の傭兵  作者: ハルピン太郎
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3月10日

 深夜のカップラーメンを啜りながら今日のことを振り返った。


 「残念だけど、君が辞めるって言うなら引止めはしないけど、私としてはね・・・」

 小さいため息をつくと人事課長はコーヒーを一口含んだ。続く言葉が出なかったのは再三の説得をしたにも関わらず私の意志が変わらないのを重々承知であった為であったと思う。

 「本当に、今まで色々としていただき感謝はしています。ただ、もうこれ以上は流石に続ける気はありません。申し訳ありません。」

 空になったコーヒーカップを再び口に持っていく人事課長。何となく間が持たない感じだった。

 「次の仕事は決まったのか?」

 「いいえ、未だです。でも、多分何とかなると思います。」

 何とかなる、そう言ったのは本心ではなく正直今後どうなっていくかは不安だらけであった。あてなど全くないし、今は少しでも早くこの会社を去りたかった。

 「そうか、いい仕事見つかるといいな。少なくともここより環境悪い会社はなかなかないよ。お前ならどこでもやっていけるさ。」

 「ありがとうございます。」


 

 ラーメンの汁を飲み干し、割り箸を咥えながらスマホ片手に仰向けになった。とりあえず次の仕事を早く探さないといけない。

 【転職 都内】

 キーワード検索すれば出てくる沢山の求人情報。給与、休日、福利厚生、全てが信用できないばかりの厚待遇内容で、気になる企業求人がある度に会社評価の掲示板を探し当てて本当はどうか探ってみたり、そんな作業をしていたらあっという間に時間が経ってしまった。

いくつか気になる求人をお気に入りに登録し、その日、眠った。



 翌日、メール着信のチカチカするLEDの光で目が覚めた。重たいまぶたを擦り、メールチェックをすると、十件以上ものメールが届いていた。それらは全て就職活動のサイトからの広告で、お気に入り登録していた企業からのメールは一通もなかった。そう簡単にヒットするものとは思っていなかったが、ここまで広告メールが来るものとは思っていなかったので、がっかりすると言うか何となく就職活動が非常に面倒くさいものだなと改めて思った。

 一件一件題名だけを確認し、削除していくと最後のメールの題名が気になった。


  単純作業で高収入必死


 多分、アルバイトか何かの紹介だろうと思ったが、何故かそのまま削除する気にはなれず内容を確認することにした。


  単純作業は本当です

  確認  引く  それだけの簡単高収入の派遣のお仕事

  時給3000円以上保障


 たった三行の説明だけ。一体何なのだろうか。それにしても時給が余りにも良すぎる。派遣の相場は高いと聞いていたが、ここまで高い相場の仕事はなかなかないし、しかも3000円以上と書いてあるので実際はもっと高いかも知れない。

 胡散臭い仕事ではある可能性は否めないが、当面仕事が見つかるまで派遣で繋げるのも悪くないし、仕事内容に納得いかなければ直ぐ辞めてしまえばいいのだ。そんな軽い気持ちでメール返信をすると、驚くことにその日の午後には若い男、派遣のコーディネーターから電話がかかってきた。

 山内と名乗る男は今案件の担当者で、非常に人員が不足しているので直ぐにでも来て欲しいとの事だった。詳しい話を面接でしたいとの事だったので次の日の面接を取り決めた。

 電話で幾つかの質問をしたが、時給に関しては本当に記載されていた額面、実際はそれ以上の金額が支給されているとの事と、作業自体は本当に簡単なものであること。それとやはりよく聞かれる質問らしいが、決して胡散臭い類の仕事ではないとの事だった。ただ、実際胡散臭い業者が胡散臭いですよと正直に言うはずがないと思いながらも、電話越しの彼の対応に好感を持てたし、実際面接を受けてから決めても遅くはないだろうと判断した。



 その派遣会社は自宅から電車で30分、駅から徒歩5分程の場所に位置するビルの四階にあった。エレベーターで四階まで来ると入り口にはタッチパネル式のターミナルがあり、面接者の方と書かれたパネルがデカデカと画面内に映し出されていた。パネルに触れるとコール音がし、直ぐに山内と思われる声が聞こえてきた。

「お世話になります。広瀬さんですね、お待ちしてました。今すぐあけます。」

 正面の自動ドアのロックが解除された。

「そのまま入ってください。」

 鞄の中の履歴書を手探りで確認しながら自動ドアをくぐった。直ぐに山内らしきスーツ姿の男が奥の方から小走りでやってきて微笑みながら軽く会釈した。

「初めまして、山内です。この度はわざわざお越しくださいまして恐縮です。とりあえずどうぞこちらへ。」

 内ポケットから名詞を取り出し手渡すと部屋の一角に位置するパーテーションに誘導した。

 パーテーションの中には長めのテーブルが一つ、両脇にパイプ椅子が3つずつ並んでいた。そして入り口に一番近い席には目のくりっとした男が先客としてそこに座していた。私が入るなり彼は大きな目を一重にし睨むように私を見つめていた。


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