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派遣の傭兵  作者: ハルピン太郎
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絶対絶命


 先ほどから銃声が止まらない。土嚢が幾重に重なっていようともこの状況下では流石に無理なのではないのだろうかと思い始めた。前方を確認したくとも必死に頭を下げて銃弾から逃れるので精一杯だ。右人差し指は引き金にかかっている。後は思い切り前に銃を投げ出し指を引くだけでいいのだ。しかし、前方の状況が全く分からないし、闇雲に腕だけを土嚢ぎりぎりのところまで上げて乱射しても当たる可能性は低いだろうし、ましてや今は贅沢に使えるほどの弾倉がない。

 感覚的には10分くらい彼の攻撃は続いている。後方からの支援も全く来る気配がない。考えれば考えるほど希望的観測とは程遠い絶望的想定しか頭に浮かばない。その間跳弾により何度も土片がびしびしと頭にぶつかってくるし、たまに石の破片の様なものまで凄い勢いでぶつかってくる。鉄帽をかぶっていなかったら確実に大怪我をしているか最悪即死しているだろう。

 ぐっと頭を下げてこらえ続けているとわき腹に何かを感じた。何かがつついてる様なそんな感じだった。ゆっくり頭をその方向に向けると、先ほどまでいなかった柴田さんが銃口で私のわき腹をつついていた。この状況下で匍匐しながらよくここまでたどり着けたものだと感心しながら少しいらっとした。恐らく安全装置はセーフティーにはなっているのだろうが、それでも銃口でつつかれる事が不快であり、就業規則では絶対にタブーとなっている項目である。万が一誤発砲でもしたらと思ったら不快感が怒りに変わりそうな気さえした。

「まずいですね、広瀬さん。どうしますか、この状況。」

 そのまま私の隣まで匍匐前進でたどり着くなり怒鳴るような声で言った。

「どうしようもこうしようも私だって分かりませんよ。何も出来ないんですよ。弾もないし、攻撃にも転ずることが出来ない。分からないですよ、私だって」

 先ほどの件もあり、半ば八つ当たりするように私も怒鳴った。

「あと何発です?」

 くっきり二重の大きな瞳が急に一重になりまじまじと私を睨んだ。

「弾倉が3つとポケットに数十発バラで入ってます。150あるかどうかです」

「なるほど。二人合わせて400あるかどうかですか。小銃だけではどうにもならない状況でしかもこの弾数じゃあね。恐らく彼は一個小隊以上は確実にいるでしょう。二人で何とかするってのは多分無理ですね」

 そんなことは分かりきっていた。敢えて口に出して言うことで絶望的想定が益々現実味を帯びてきた。なぜこの人はこうなんだろうかと思ったが現実逃避をしてる場合でもないのは確かだ。

「広瀬さん、ただね、一つだけラッキーなんですよ」

「この状況下でラッキー・・???アンラッキーの間違いでしょう」

 何を言ってるんだとだんだん又腹が立ってきた。その間も相変わらず銃声は止まない。終わらない雨がないと言うがこの銃声だけは一生続くのではないのかと思えるほどの長さだ。

「だからラッキーなんですよ。いいですか?確かに一個小隊以上はいるのは確実です。でもね、私たちはなんだかんだ未だくたばっていないんですよ。何故かわかります?小銃小隊しかいないんですよ彼は」

・・・・!!確かにそうだった。目の前の恐怖で冷静な判断が鈍っていた。確かに、通常なら迫撃弾がとっくに落ちてきていてもおかしくないのだ。小銃小隊だけでこの前線から先に突き進もうと言う魂胆ならそれこそ彼も無理難題の作戦だと思う。我の後方には2個中隊が控えている。それくらいの情報は彼の手元にもあるはずなのだ。それにもかかわらずたかだか一個小隊での前進とは通常はありえない。

「ねっ、広瀬さん。活路は皆無じゃないと思うんです。我々の弾数が400として、倍と見積もっても彼の攻撃もそろそろ一度止むはずなんです。流石に、ねっ、そこまで先見小隊が弾薬持ってると思います?だからこそ、ねっ、止んだ次こそがチャンスです。それに・・・」

 柴田さんはポケットに手を入れると何かもそもそとし始めた。この間、勿論銃声は続いている。

「見て下さい、さっきメールあったんです。小隊長からなんですが、多分広瀬さん受信してないんでしょう。ここ電波無いみたいだから」

 スマホを目の前に差し出すと確かに小隊長のメールが映し出されていた。簡潔に一行だけ


 1515彼の側方に向け前進


 受信時間が20分前になっていた。つまりもうこちらに前進し始めて10分は経っていることになる。時間にして後5,6分で着くって事だろう。

「ねっ、だからラッキーって言ったんです。もう少しです。だから耐えましょう、もう少しだけ。こんな状況下から脱出できるなんてもう自慢話確実ですよ。もうね、週末ですし、今夜はこの話をつまみに飲みましょう、いつもの店で」

 なんて楽観的なんだと、先ほどまでの悲観的思考が嘘のようだがもともと柴田さんはそう言った機転のきく男ではあった。このままでは駄目だと思っていた目の前の土嚢がなんだかとても心強い鉄壁の防波堤の様にすら思えてきた。


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