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第13話


「一刻も早くお金を稼ぐ必要がありますね」


 アリシアは自分自身の財布を見てそういった。俺は全くもって否定する根拠も元気も無かった。


「……すまない」

「仕方ないですよ……まずはニナを助けることからですね」

「それについては今夜何とかする」


 俺は予め練っておいた計画をアリシアに話した。最初は反対をされたが俺の説得によってなんとか了承を得ることが出来た。


「……では私は簡単な依頼をこなしてお金を稼いでおきますね」


 何故かアリシアの言葉に刺があるように感じたがそれはともかくとして、作戦の実行に備えるために仮眠を取ることにした。


 深夜、街も皆寝静まったころ俺は一人宿屋の屋根に立っていた。見つめる先にはこの街のなかで最も大きい建物である『城』がある。


「……あくまでも推測でしかない以上外れたときは見当がつかないが十中八九あそこにいるだろうな」


 そして俺は目を閉じ息を大きく吸い、ゆっくりと吐き出す。そして意識を集中させて目を開く。足に力を入れ、一気に屋根を蹴り他の建物の屋根へと移る。それ何度もを繰り返していくうちに城門が見えてきた。


 最後の屋根から城門まではそれなりの距離があるが俺には関係ない。魔力を体に巡らせて最後の屋根を蹴る。


「はぁぁ……!」


 体を空中に踊らせると体内に巡らせた魔力を背中に展開する。その姿はまるで戦闘機を彷彿させるような翼だ。空気抵抗を極限まで減らしてそのまま空を飛ぶ。


 城門には衛兵が立っているが俺の服が黒いのとそもそも空を飛んで入ってくるとは思っていないらしく、上への警戒がお留守だった。何事もなく無事に城の敷地内に侵入すると俺は城の屋上に着陸した。


「まずは侵入成功だな」


 屋上に着陸した俺は『魔力操作』で城内をスキャンする。城内にいる生物すべてのスキャンは少しばかり時間がかかるのでそれをしながら必要になりそうなものを幾つか生成した。20分ぐらい経つとようやくスキャンが終わった。これでニナがどこにいるか分かった。


 どうやら城の中央付近にいるようだ。俺がこの城の内部構造を把握していないためまだぼんやりとしか分からないが内部に入れば正確な位置が分かるだろう。


「では作業に取りかかるとしますか」


 手にはスキャンするタイミングで作ったスコップを持ち、それに『破壊属性付与』を使う。勿論体が重くなるが気にせず俺の目の前の地面を掘り進め、下の階が見えたところでスコップを分解して小休止を挟む。


「よし次だ」


 そのまま拳で人の通れる大きさまで広げて、中に潜入するとそこは古びた倉庫らしく長年使われていないだろう物が放置してあり埃にまみれていた。そんなガラクタの中には何かあるかもしれなかったが、優先順位を考えて奥にある扉を開けて部屋の外に出る。


 部屋の外は薄暗い階段が続いているようで下は少し明るくなっていた。明るい方に進んでいくとそこそこ大きな部屋にたどり着き、部屋を見渡すとベッドや棚があることから使用人の部屋だと推測できた。


 ニナのいるだろう方向に進んでいくと曲がり角でバッタリと使用人に会ってしまった。突然の邂逅にお互いに動きが止まってしまったが先手を打って俺はその使用人を無力化した。


「すまないな」


 使用人をさっきの部屋に寝かせてニナの行方を探す。深夜ということもあり城内にいる人は多くはないがそれでも警戒している衛兵などがいて気を抜くことはあまり出来ない。


 気配を消しながら慎重に先へ進んでいくと不意に濃厚な死の気配が漂い始めた。


「……物凄く嫌な予感しかしない」


どうやらその気配は目の前の部屋から漂うよっているようだ。俺は覚悟を決めて、部屋の扉を開ける。


「……やはり貴様か」

「そんな気はしてたが……これは面倒なことになりそうだな」


 開けた扉の先にいたのは宿を襲ってきた男だった。俺が『榛名』と『浜風』を展開して構えると向こうもそれに合わせて腰のところから剣を抜いて構えた。


「なぁ、お前達が誘拐した女の子はこの部屋の先か?」

「そうだ。姫は無言のまま部屋に閉じ籠って出てこられないがな」

「それだけ聞ければ十分だ。本気で俺もいくとしよう」


 誰も見ていない以上遠慮をすることはない。俺は地面を蹴り相手の懐に飛び込む。カウンター気味に向こうの剣が迫ってくるがそれが当たる前に進行方向のベクトルを急激に変える。


「はぁああああ!!!」


 くの字を描くように体を切り返し、相手の死角から切りつけると相手は体勢を崩して距離を取った。攻撃した相手からはまるで鉄を叩いたかのような感覚が伝わってきた。


「ちっ……何なんだあの硬さは」


 剣を振った腕が一時的に痺れてしまったが瞬時に痺れを治し剣を握る手に力を入れる。どうやら相手もそれほどダメージは受けていないようですぐに剣を握り直して俺に向かってくる。


「さっきの借りを返させてもらうぜ」


 相手の挙動に合わせて『榛名』を半弧を描くようになぞり、相手の剣を弾く。体勢の崩れた相手の隙を逃がす俺ではない。


 すぐさま『浜風』の方で追い打ちをかけるべく剣を振る。だが、相手の反応速度が速いせい掠り傷程度しか与えられていなかった。


「貴様……あの場では手を抜いていたのか?」

「はっ、俺は常にいつだって全力さ」


 どうにか俺の攻撃を回避している男にさらに攻撃を加えることにした。剣を主体とする攻撃の中に魔法詠唱を入れることによって、相手にかなりの負担をかけながら優位に戦いの流れを作る。


「そんな腕じゃ俺を止めることは出来ねぇよ?」


 切りつけ、魔法を使いながら相手を追い詰めるように立ち回り、ついに相手の手から剣を離すことに成功した。


「くっ……!しまった……!」

「その隙もらったっ!!!」


 俺はがら空きの胴体に『榛名』を滑り込ませ……


ドクンッ!


「っ……!!?」


 咄嗟に動きをキャンセルして、相手の背後に移動した。その直後、さっきまでいた俺のところに強力な雷が落ちていた。


「おいおい……2対1か?」


 よく目を凝らすとそこには、150センチくらいの小柄な女の子が立っていた。

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