騙討
「撤退ー!!撤退命令ー!!」
長曾我部盛親率いる豊臣京防衛軍に大坂より命令が下った。
「速やかに兵を退き、大坂城に帰還せよ。」
という命令である。
「これは、なんと・・・・。ここを離れては朝廷の実験を奪回されます!!」
政信は、今後の事態を危惧し皆に警告を発した。
「しかし、和議が成ったためだと書いておる。兵を退こう。」
軍議の結果、陣を払い、大坂に帰還することが決定した。
しかし、辻政信は、納得が行かなかった。政信は、徳川支軍の動向を監視するとともに妙な動きをすれば家康襲撃を実行させる部隊を差し向けることを進言した。
「辻殿。念には念をか。よい。その役目、そちに命じる。」
「ははっー!」
軍議が終わってすぐ、京の陣を払い防衛軍が大坂に引き返していった。その様子を天海は、見届ける。
「今すぐ、大御所様に奴らが撤退したことを報告せよ。」
天海からの密書は、すぐさま家康に届けられた。
「これより、鴨川を越え天子様をお救いすー!!」
「えい!えい!おー!!!」
徳川家康率いる六万余りの軍勢が鴨川を突破し、京市街に躍り出た。大軍は、御所を包囲した後、
内裏に突入。武力による脅迫で貴族を屈服させ、幕府の復権と秀忠の将軍職位回復を要求した。
「困りまするでおじゃる・・・・。」
「あ?」
「こ、こ、困らないでおじゃる。」
「それでは、諸大名に勅命を下すとともに高札をいたるところに掲げよ。」
家康の命を受けた高虎が朝廷との交渉を担い、戦前の状態に戻していった。
別動隊を率いる政信は、御所の近くに潜伏し、忍びからの情報を逐一受け取っていた。
「まずい。和議の合意内容は、わからんが家康の思惑にはめられたようだ・・・。」
家康の暗殺を企むも、天皇への忠誠を誓う政信は、御所内で事を起こす気には、なれなかった。
「とにかく、この報せを急ぎ大坂へ!!」
政信は、暫く京に潜伏し、大坂に事の重大さを知らせることにした。
その頃、高野山では、大野治長、片桐且元らに捉えられていた真田昌幸がこの世から去ろうとしていた。
「わしは・・・もう長くな・・・・い、ことは・・・わかって・・おった・・。」
「安房守様・・・・!!」
「家康・・・・・を・・・・・討て・・・・」
最後に家康を討つことを大野らの兵に命じて息を引き取った。1611年七月のことであった。
京防衛軍は、大坂城に戻り隊長である長曾我部盛親が関白秀頼に謁見した。
盛親らを交えて和議の成立と今後について話し合いが持たれた。そのとき、朝廷より使者が参る。
「関白殿下に申し上げます。豊徳の和議、おめでとうございます。和議による結果をお伝え申します。」
「よう参られた。申せ。」
「徳川秀忠、将軍職に復位。大御所様を左大臣に任じる。京は、これまで通り徳川家が治安の任に当たる。豊臣家は、摂津、河内、紀伊を統治することを認める。」
「それだけか!?」
大野治長が使者に問いかけた。
「・・・・言葉に困るのですが・・・・」
「申してみよ」
秀頼は、柔和な笑みを浮かべ使者に話すように言う。
「関白豊臣秀頼、関白の任を解く!・・・と・・。」
「黙れ、たわけぇー!!!!!!」
治長が使者に斬りかかろうとし、それを且元が必死に制した。
「それは、我らに戦を決意せよ、と言うことか」
「そ、それは、大御所様にお聞きくだされ・・・!」
怒り心頭の豊臣幕臣の基に政信から衝撃的な報せが届いた。
「徳川家康軍に加え、秀忠率いる本体も京に合流!これより大坂を攻め滅ぼすべく兵を大坂に向けて
進軍中!!!」




