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道化師による楽しいダンジョン探索!!  作者: モノノキ


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第1話 探索者高等専門学校

どうも、モノノキです。

覗いてくださりありがとうございます!なるべく毎日投稿しておりますのでよかったらブックマークよろしくお願いします。

カーテンの隙間から差し込む朝日が、俺――紫灯遊木(さいとう ゆうき)の顔を無慈悲に照らし出す。


「あー……腹減った」


欠伸を噛み殺しながらキッチンへ向かい、適当に朝食を用意する。一人暮らしの気楽な朝だ。

俺の両親は金持ちだが、息子への関心は紙屑ほどもない。おかげで"探専"の近くにあるマンションで、俺は悠々自適なぼっちライフを満喫している。


熱々のトーストを齧りながらテレビをつけると、案の定ダンジョン関連のニュースが流れていた。


『――続いてのニュースです。埼玉県に位置する大規模ダンジョン、ヤマトダンジョンにおいて、第1階層の環境変化が確認されました。

今回の変化では"崩壊した大砦"の出現率が高まっており、探索者協会は注意を呼びかけています』


「ヤマトダンジョン、か。早く潜ってみたいな」


俺は自分の手元を見つめる。

日本では、15歳になったら『経験知オーブ』を使用し、レベルを1にすることでジョブを発現させる。

俺がそれで発現したジョブは――


「道化師、ねぇ…」


歴史上でも数回しか確認されていない超希少ジョブ。響きはいいが、要はピエロだ。

どうせならもっとこう、戦士とか格闘家とか、シンプルに格好いいのが良かった。槍でブスブス刺すだけの簡単なお仕事に就きたかったのに、まぁやることは変わらないけど。


俺はテレビを消し、着替え始める。今日から俺は、日本中のエリート(というか問題児)が集まる『国立探索者高等専門学校』の生徒だ。

特に服装指定もないから楽なもんだ。


マンションから出発してすぐに学校に着くと、そこは異様な光景だった。

ヤマトダンジョンの膝元に建てられた校舎は、学校というより要塞に近い。広大な敷地には訓練施設や、配信用のスタジオまで完備されている。

入学式は体育館で行われたが、周囲の連中の目つきが鋭い。なんせここに来るのは、全員が『戦闘ジョブ』か『希少ジョブ』持ちだ。


「おい、知ってるか? あいつ鑑定結果で『剣聖』が出たらしいぜ」

「マジかよ、エリート一直線じゃん。おもんね」

「ここが探専かぁ〜」


あちこちからそんなヒソヒソ話が聞こえてくる。

この学校にはランキング制度なんてものがあるせいで、全員がライバル同士。若干空気がヒリついてる気がしなくもない。

俺はといえば、隅っこの方で気配を消している。

自由に行動したい俺にとって、群れるのは時間の無駄なのだ。決して話しかける勇気が無いなんてことじゃない。


式典の内容なんて一つも頭に入ってこなかった。

唯一覚えているのは、校長が「死ぬな、稼げ、人類の礎となれ」と身も蓋もないことを言っていたことくらいだ。


その後、教室に移動して担任からの説明を受ける。


「いいか、この学校の授業は毎週月曜日だけだ。それ以外は各自ダンジョンに潜り、実績を積め。学校内の設備は自由に使って構わない。

この学校ではランキング制度が導入されている。学年ごとのランキング上位10名には報酬が出る。ランキングのルールについて気になる者は聞きに来い。以上だ、解散!」


いやぁ、実に合理的で素晴らしい。学校という名の、自由行動推奨機関。俺には御誂え向きだ。

俺は空の探索用リュックを背負って、真っ先に教室を飛び出した。


「ふぃ〜、終わった終わった。さっさとダンジョンに行こう」


俺は人混みを避け、校舎から少し歩いた場所にある『探索者協会』へと足を向けた。探索者協会のロビーは、探索者たちでごった返していた。

装備をガッチャガチャ鳴らすガチ勢や、最新の『ダンジョンドローン』を調整している配信者。

俺も一応既に探索者だ、準備の良い俺は登録を一足先に済ませておいたからな。


俺は受付を済ませ、ステータスを割り振るために専用の『鑑定機』に向かった。

魔法陣が刻まれた鑑定台に乗ると、目の前の端末に俺のステータスが表示される。


「さて、どうしたもんか……」


【道化師 Lv.1】

ステータスボーナス:100P

生命力:26

持久力:12

筋力:10

技量:12

知力:13

俊敏性:7

肉体強度:18

魔力抵抗:17

戦気量:22

魔力量:19

ジョブスキル

『道化の心得』

所持スキル

『火吹き芸 Lv.1』


道化師は生命力や肉体強度、魔力抵抗に優れている。

つまり、打たれ強いピエロというわけだ。サンドバッグピエロとも言える。だが、この100ポイントをどう振るべきか。

というのも、道化師というジョブがどんな戦い方をするのかイマイチ掴めていない。


『火吹き芸』は、戦気を消費して口から拳ほどの火球を放つスキル。魔法スキルのファイアボールの下位互換として有名だ。


『道化の心得』は、注目を浴びるほど全ステータスが上昇し、見た目が派手だとまた追加で全ステータスが上昇。

さらに笑みを浮かべて笑い声を出せば戦気,魔力,疲労,傷が回復する。

……これ、もしかして戦場で爆笑しながら目立たなきゃいけないのか?


「……保留だ保留。今はまだ下手に振らないほうがいい」


俺はポイントを割り振らず、鑑定機から降りた。

まぁ希少ジョブらしく強力なジョブスキルだとは思う。そもそもの攻撃に影響するステータスが若干低めなのが気掛かりだが。

ジョブスキルを活用して戦うのが前提なんだろう。非常に、ひじょーーに嫌だが。


俺はダンジョン入口の大扉近くにある探索用品貸出所で、ダンジョンドローンと槍をレンタルした。銀色の球体が、俺の肩のあたりでふよふよと浮き始める。

配信をつけるか迷ったが、まだやらなくて良いな。槍でチクチク攻撃するだけの絵面だし。


「よし、相棒。俺の勇姿(笑)をしっかり記録してくれよ」


ダンジョンドローンは配信していなくてもダンジョン内の映像自体は保存してくれる素晴らしいものなのだ。

大扉を抜けると、そこには文字通り別世界が広がっていた。ヤマトダンジョン第1階層のセーフエリア。

中心には巨大な魔法陣があり、ベテラン探索者たちが一瞬で別の階層へと転移していくのが見える。


「にしてもまぁ……綺麗な空だな」


頭上に広がる空は偽物のはずだが、突き抜けるような青さだ。

目の前にはどこまでも続く草原、そして遥か遠くにはキャスターが言っていた『崩壊した大砦』のシルエットが、不吉な巨影となってそびえ立っている。


これが、日本の国力を支える巨大資源の源泉――ヤマトダンジョンの第1階層だ。

さすがにワクワクしてくるな。


「まっ、落ち着いて行こう。スライム辺りにボコボコにされても笑えないし」


「お、新人か?」


背後から声を掛けられ、俺は振り返った。


そこにいたのは、やたらとゴツい鎧を着た中年の男性探索者だった。背中には大剣。どう見ても歴戦って感じのオーラを漂わせている。


「まぁ一応」


「ふぅん、その槍……初潜りにしちゃマシな得物選んでんな。最近のガキは配信用に変な武器持ちたがるからよ」


そう言いながら男は俺の肩で浮いているドローンを見る。


「お前も配信組か?」


「いや、配信はまだですね」


「ほぉ、そうか。忠告しとくが、第1階層だからって舐めるなよ。特に最近は砦周辺が荒れてるからよ」


「そういえば、朝のニュースで見ましたね」


「ああ、初心者は草原地帯で慣らしとけ」


ありがたい情報だ。 俺は軽く頭を下げる。


「どうも」

「おう。まぁ死ぬなよ、新人」


男は手を振りながら転移魔法陣へ向かっていった。

ベテラン探索者の背中を見送りながら、俺は改めて目の前に広がる景色を眺める。


「よし、それじゃあ行きますか」


俺は軽く肩を回し、愛用の槍の石突で地面を叩いた。

セーフエリアの喧騒を背に、俺は青々とした草原へと一歩を踏み出す。

見渡す限りの緑、吹き抜ける風の匂い。空には太陽が輝いている。


「まずは小手調べ。スライム辺りを見つけて、この槍の使い心地を確かめたいところだな」


俺は肩の横でふよふよ浮いているドローンに目をやる。

こいつが俺の『初陣』を記録しているわけだ。今のところ、槍を担いで散歩しているだけの地味な映像しか撮れていないだろうが。

草を掻き分け、なだらかな丘を越える。

すると、視界の端で何かが『ぷるん』と動いた。


「お、いたいた。ダンジョンのマスコット」


そこには、バレーボールを二回りほど大きくしたような、青い半透明の塊がいた。

スライム。図鑑によれば『力を込めた人間の筋肉程度の硬さ』があるらしい。

ただのゼリーだと思って舐めてかかると、硬いゴムの塊をぶつけられたような衝撃を食らうわけだ。油断して大怪我する初心者も少なくない。


スライムは俺の存在に気づくと、その楕円形の体を器用に縮ませた。


シュバッ!


短い破砕音と共に、スライムがそれなりの速さで跳ねて体当たりを仕掛けてくる。狙いは俺の腹辺り。


「ほぃっと!」


俺は最小限の動きで体を逸らす。

空振ったスライムが地面に着地するより早く、俺は槍を突き出した。


「ん、わりと手応えあるな」


槍先がぬるりと沈み込み、スライムの中央を貫通する。突き刺した瞬間、スライムの体は内側から弾け、光の粒子となって霧散した。

後に残ったのは、小さな紫色の石『魔石』が一つと、小瓶に入ったスライムジェルが二つだ。


「よーし。初めてのモンスター討伐だ」


魔石を拾い上げ、俺は軽く放り投げてキャッチする。

いや~、槍にして正解だった。戦いやすいのなんの。


俺はドロップしたものをリュックに放り込んで、再び草原を歩き出す。ターゲットは……お、あそこにいるのは『ファングラビット』か。

草むらから長い耳がピコピコと覗いている。名前の通り、可愛げのない凶悪な牙が生えたデカいウサギだ。


俺が間合いに入った瞬間、あいつは自慢の脚力で文字通り弾丸のように突っ込んできた。


「あっぶね!!」


俊敏性が『7』しかない俺にとって、この速度はなかなかにスリリングだ。ギリギリのところで牙をかわし、着地際、無防備な背中に槍を突き刺す。


確実な一撃。ファングラビットは短い悲鳴を上げて光の粒子に変わった。


「ふぅ……今のところは順調だな」


ステータスを振っていないせいか、一撃の重みには欠けるが、槍のリーチを活かせばこの辺りのモンスター相手に後れを取ることはなさそうだ。

魔石を回収しながら、俺はふと、自分のジョブスキルを思い浮かべる。

『道化の心得』

注目を浴びるほど、そして派手であるほどステータスが上がる。さらに笑えば回復する。


「宝の持ち腐れだな」


現状、俺はただの『ちょっと打たれ強くて槍を持っただけの地味な高校生』だ。

地味に戦いながら笑うのが難しい気がする。笑う練習でもしなきゃ……笑う練習?俺そんな心が壊れてる人がやるような練習をしなきゃいけないのか?


「とりあえず、もう少し奥まで行ってみるか」


草原の遥か遠くには、朝のニュースで言っていた『崩壊した大砦』がぼんやりと見えている。

初心者は草原地帯で慣らしとけと、あのベテランさんは言っていたが、遠巻きに眺めるくらいなら罰は当たらないだろう。

歩を進めるごとに、風に乗って微かな争いの音が聞こえてくるようになった。


モンスター同士の縄張り争いか、あるいは他の探索者か。俺は草丈の高いエリアに身を隠しながら、音がする方へそっと近寄る。

すると、少し開けた場所で、奇妙な光景が目に入った。


「あれは……ワイルドチキン? と、ゴブリンか」


巨大な闘鶏『ワイルドチキン』が、三匹の『ゴブリン』に囲まれている。

普通なら多勢に無勢だが、あのチキン、縄張り意識が強すぎて一歩も引いていない。むしろ、バカデカい鳴き声を上げながら、鋭い嘴でゴブリンの頭を突きまくっている。


「コケエエエェェ!!!」

「ギャアッ! ギャギャ!」


ゴブリンたちがこん棒を振り回すが、チキンのステップが意外と軽やかで当たらない。なんなら全然ゴブリンたちが押されている。

シュールだ。非常にシュールな戦いだ。


「ワイルドチキンはまだやめとこうかな」


そう言いながらも引き返そうと振り返ると、そこには不思議そうに俺を見るワイルドチキンがいた。


(いつの間に!? 何の音も聞こえんかったけど!)


時が止まる。


俺は驚きのあまり動きが止まり、一人と一匹は自然と見つめ合う。


「…………燃え盛る炎のような、立派なトサカだぁ」


「コケエエエエエエェェ!!!」

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