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最弱ルーキーのナイト・スレイド  作者: フランジュ
ダブル・チェイサー編 第一章
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ストレンジ・ナイン(1)


3人はミディアランにある酒場へと向かった。

ジーナが仲間にするはずだったという人物を探すためだ。


彼女の死に関わったであろう、盗賊団のボスは間違いなく強敵だ。

そんな相手を3人で探し出して倒すというのは無謀である……というセラフィーナの意見によってパーティの強化を図る目的だった。



時はまだ昼と夕の間。


3人は酒場を見つけて入るが、時間的な問題なのかガラリとした店内。

右端にあるL字のカウンター席と、それに沿うようにしてテーブル席がいくつか置かれている。


カウンターには店主、そして席には酔い潰れた1人の客。

店の入り口の端にあるテーブル席に1人の客が背中を見せて座っているが、男が女かはわからない。



先行したのはミライだ。

迷わずカウンターへと向かい、無言でグラスを拭く男性の店主に話しかけた。


「すいません!」


「なんだ?」


「長い赤髪の女の人って、この店に来てたかしら?」


「ああ、あの綺麗な人かな。何日か前に来てたよ」


「誰かと一緒にいなかった?」


聞いて、すぐに店主は顎下でテーブル席を指した。


これほどスムーズに目的の人物に辿り着いたことに驚きつつ、3人はテーブル席へと向かう。


そしてミライを先頭に、"その人物"の前に立った。


足を組んで座るのは"長い金髪を後ろで結った40代ほどの痩せ型の男"だった。

青いロングコートコートとレザーパンツ。

首元を隠すように白いスカーフが巻かれ、胸にはカッパーのネックレスが見える。

なによりも印象的なのは目元を覆うほどの黒いレンズの眼鏡を掛けていることだ。


「サングラス……?」


ミライが呟くと"黒眼鏡の男"が反応する。


「ん?君たちは……どなたかな?」


「あたし達はジーナさんの仲間よ」


黒眼鏡の男は少し考える素振りをしてから、眉を顰めて口を開く。


「あー、ジーナちゃん……彼女は残念だったねぇ」


言いつつ、黒眼鏡の男は手に持ったカードの束を片手で器用にシャッフルし始めた。


「彼女が死んだのを知ってるの?」


「そりゃあ、あれだけ冒険者たちが騒いでたら耳にも入るさ。殺し方も独特だ」


()()()()()()()?」


ミライの発言に驚いたのはスレイドとセラフィーナだった。

黒眼鏡の男はシャッフルを止めるが、すぐに指を動かし始める。


「どうして?」


「ジーナさんが『仲間になりそうな人物がいる』と言っていた。それが、もしアナタなら最初に疑うのは……」


「なるほど。君は賢いねぇ」


「それで、ジーナさんを殺したのはアナタ?」


「まさか。オレなら()()()()()()はしない。あれはかなり悪趣味だ」


間があった。

"殺し"に対して何の抵抗も感じていないどころか、むしろ多くそれを経験してきているかのような発言にも聞こえる。


「本当の事を言ってるわね」


「ほう……昔の知り合いにも同じような能力を持った者がいたが、君もその部類なのか」


「単なる"女の勘"よ」


「そうか、まぁいいさ。それで君たちの目的はなんだ?」


「ジーナさんが仲間にしたかった相手なら話しておきたかったのよ」


「容疑者として?」


「まぁ、それもあるけど。仲間にできるならしたいと思って。ジーナさんを殺した犯人は手強てごわそうだから」


「なるほど。君らの目的は"復讐"か」


「"仇討ち"って言ってほしいわね」


「単に言い回しの違いだけだろ。中身は同じだ」


黒眼鏡の男はカードのシャッフルを止める。

そして一考の後、口を開いた。


「オレもジーナちゃんのことは気に入ってた。あの子、真っ直ぐで可愛かったから。一緒にゴールド・バラッシュに行くのを楽しみにしてたんだ。できることなら犯人を見つけてやりたいが……」


「なに?」


「君たちの実力を知りたいねぇ」


3人の顔色が変わる。

わずかに苛立ちを見せつつ、ミライが言った。


「そう言うアナタはどうなのよ」


「オレはなかなか強い方だと思うよ。少なくとも、この町にはオレに勝てる人間はいない」


スレイドとセラフィーナは眉を顰めた。

ここまで言い切られても信じられるわけがない。

単なる冒険者風情の強がりに思える。


……しかし、ミライは真剣な表情を崩さない。


「君にはわかるんだろ?真実が」


「ええ。アナタは強いみたいね」


「結構。じゃあ、オレとゲームをして勝てたらパーティに入るよ」


「ゲーム?」


「オレはギャンブルが好きでね。特にカードゲームが好きなのさ」


そう言って黒眼鏡の男は手に持ったカードの束をテーブルの中央に置いた。

大きさと束の量から見るに、恐らく"トランプ"だろう。


「なら、あたしが……」


「いや、後ろの彼女がいいね」


男が指定したのはセラフィーナだった。


「なぜ私なの?」


「君、ドネージュの生徒だろ?」


「元だけど」


「どっちでも構わないさ。昔、ドネージュとは色々とあってね。今のレベルがどの程度のものか興味がある」


セラフィーナの眼光が男を睨む。

この男は明らかに自分を下に見ている。

それが気に食わなかった。


いや、それだけではない。


この男はあまりにも犯人像に近い。

"ギャンブル好き"で"女好き"なんて探せばいくらでもいるが、この人物はジーナと関係を持っていた。

ミライは一瞬で見抜いて探りを入れ、犯人ではないと確証は得たが……


だが、もしミライの能力ライアー・デストラクションを掻い潜るスキルを持っているとするなら、自分たちは犯人を仲間に引き入れたことになり、間違いなく全滅する。


(だとすると、どんなスキルなのだろうか?)


様々な思考の中、無言でセラフィーナは黒眼鏡の男の前に座った。


「そういえば、名前を聞いてなかったわね」


「"ナイン"だ。親しい人間は皆、そう呼ぶ」


"ナイン"は笑みを浮かべつつ答える。

そして謎の男、ナインが提案したゲームが開始された。

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