Part42 よかったね
三日目の朝。長かった旅行も今日で終わりだ。
俺は昨日のような悪夢を見ることはなかった。
と言うのも、実は起きた時に、俺の左腕にリュイが抱きついて寝ていたようで、俺を昔のトラウマから守ってくれていたのかもしれない。
振り解くのに大体3分ぐらいかかったけどな。
いや、厳密には、起きてから「振り解く」という選択肢が出現するのに2分55秒かかった、が正しいだろう。
「それでは、各自忘れ物を再度確認した後、これより駅へと向かう。」
荷物を持ち、宿のロビーに集まっていた俺たち一年生は、次々と荷物を背負って、出口の方へと歩き始めた。
楽しい時間はあっという間に過ぎていくものだ。つい2日前に到着したばかりだと言うのに…。
「ここともお別れだね」
リュイが寂しそうに、だんだん遠くなっていく宿の建物を見ながらそう言う。
「でも、また来れるよ」
「…そうだよね」
そう言って、リュイは後ろを向いていた顔を前に戻した。
やっぱり元気なリュイが一番だ。
右の方を見ると、腕や脚がすっかり褐色に焼けた体育会系男子2名。
「エルさまー!また泳ぐの競争しような!」
「もちろん!何回でも勝負してあげるよっ」
褐色ショタもいいものだ。後で日焼け跡を拝見させてもらおう…。
茶色の肌と白色の肌が作り出すコントラストは、夏の間にしか拝めない貴重品だからな。
そういう俺も、少しだけ焼けた気がする。エルやレオとは違って、そこまででもないが…。
でも、一番気になるのはリュイだ。同じくらい遊んでたはずなのに、リュイの肌は来た時とほぼ同じで、真っ白だった。
「?」
半袖シャツの腕や胸元を俺が眺めていることに気付いたのか、きょとんとこっちを見るリュイ。
「…リュイの肌って、綺麗だよな」
「きれいって…急に何をいうのかと思ったら…恥ずかしいよぉ…」
そう言って、リュイはこっちに向けられた、細くて白い右腕を左手で軽く隠した。
はい。照れてるその仕草ももちろんかわいいです。
宿から数分歩くと、サーブル駅に到着だ。
来た時と同様、「貸切」と書かれた車両に、俺たちは全員乗り込んでいく。
馬の鳴き声が聞こえると、馬車はジュベナイルに向けてすぐに走り出した。
ーーー
「リオンくん、リュイ、この前は本当にありがとう」
「無事に成功してよかったな」
「僕もほっとしたよ」
ジュベナイルに戻ってきてから、最初の登校日。
そして、一年生としての、最後の登校日だ。
俺はリュイと一緒に、ノアにランチに誘われていた。
「気持ちを伝えられて、すごくすっきりしたし、これからノアのことも、もっと大事にできると思う…。」
「告白した時、どんな感じだったんだ?」
「うーん。レオは、正直まだよくわかってないと思う。」
俺たちはそれを聞いてちょっと拍子抜けした。続けて、
「でも、僕のこと好きって言ってくれたし、僕も、好きって言えた。今はこれで、満足かな。」
少し照れながら、ノアは笑顔でそう言った。
「ノアの気持ちがスッキリしたなら、それが一番だと思う。」
俺もそう言って、手元のアイスティーを一口飲んだ。
「で、今日レオくんは?」
リュイがノアに質問する。
「友達とグラウンド行ってくるーって、ご飯食べたらすぐ行っちゃった。」
「って、ノアのこと置いていってるじゃねえか…」
「レオくん、、、」
「…大丈夫。学校にいる間は友達と一緒でも、家に帰ったら、僕が独り占めできるから…」
「…」
微笑んでるノアを見て、俺はなぜか前世で観たヤンデレモノのアニメを思い出し、少し怖くなった。
ーーー
キーンコーンカーンコーン
「それでは、今日のホームルームを終わる。休みの間は体に気をつけること。そして、新学期の登校日を忘れぬように。では、散会。」
ミスターリュネットは、最終日も変わらずに、淡々と連絡事項を並べたのち、職員室へと帰っていった。
「リオンくん、帰ろう~!」
「忘れ物しないようにね」
「今いくよ」
リュイとエルに続いて、俺は教室を後にした。
2回目の人生、長かった1年生も、もう終わりだ。
少し寂しいような気もするが、2年生になるまでのおよそ1ヶ月間。久しぶりの夏休みを満喫するとしよう。
続く




