Part36 記憶
更新が遅れてしまい申し訳ございません...!
オレには好きな奴がいる。
年頃の中学生には当たり前かもしれないけど、オレの場合は違う。
オレが好きになった相手は男だった。小さい頃からの幼馴染。
公園で遊ぶときも、学校の席順も。二人でバカやって先生に怒られた時も。
いつも隣にいて、オレに優しくしてくれてた。
6年生ぐらいからかな…。
そいつの顔を見るたびに胸が締め付けられるような感覚がした。
それが「好き」っていう感情だっていうのに気づいたのはつい最近。中学校に入ってからだった。
思春期、っていうやつのせいかもしれない。
「男」を好きになるっていうのは、なんとなくおかしいことだとは思わなかった。
小学校のうちに彼女ができていたクラスメイトもいたし、友達から女の人のえっちなビデオを持ってるっていうのも聞いたことがある。
けど、別にそれが男になったからって、何も変わらないと思った。
「もうちょいで夏休みだな」
「うん」
夏休みに入る数日前の、部活が終わった帰り道。
いつものように、なんでもない世間話を交わしながら、オレたちは眩しい夕日の下を歩いていた。
「夏といったら、そろそろ俺らも彼女の一つぐらい作らないとだなあ。もう中学生だし~?」
そんな彼の一言に、オレは思わずドキッとした。
「海水浴にお祭り…。彼女がいたら楽しいんだろうな~」
幼馴染が、オレの知らない女性と二人きりで過ごしているのを想像すると、また胸が締め付けられるような感覚がする。
海水浴も、お祭りも、オレが隣にいたい…。他の人に邪魔なんてされたくない…。
「そ、そうかな…。オレは二人で行くのも、いいと思うんだけど」
「そうかぁ~?男同士で行っても、暑苦しいだけじゃね」
「…」
そしてオレは気づいた。幼馴染は、オレとは違う。
彼は「女性」を好きなのであって、「男性」のオレには何も感じない。
オレはただの幼馴染で、そんな奴に恋愛感情を持つことなんてない。むしろそっちの方が異常だ。
オレは異常な存在。男性が好きな男性。
それに気づいてしまったオレは、思わずその場で立ち止まった。
「んえ、どうしたー?」
そして振り向いた幼馴染に、咄嗟にこう言い放った。
「好きです。付き合ってください。」
オレは幼馴染に告白した。
特になんの前振りもなく、オレはそう言って頭を下げていた。
「えっ、ど、どゆこと?」
幼馴染は戸惑っている様子だった。
オレは顔を上げて、改めてそいつの顔を見て、
「好き、オレ、好きなんだよ…。お前のこと…。」
何度も口に出していくうちに、オレは唐突に自分がしたことの重大さに気づいた。
顔がだんだんと赤くなっていくのがわかった。
嫉妬か、はたまた焦りがそうさせたのか。
なんで告白なんかしてしまったんだろう…。
どうしよう…。ちゃんと説明しないと、、、変なやつに思われて、余計一緒にいられなくなる。
自分で自分を責めているうちに、オレはその場にいるのがだんだん辛くなってきた。
一回逃げ出して、全部をリセットしたかった。
「告白の練習?ここで?ってかオレにしても意味な…」
「本気だから!返事は後でもいいから!」
幼馴染の言葉を遮るように、オレは吐き捨てるようにそれだけ言うと、家とは反対方向に走り出した。
「はあ!?おい、ちょっと、どこいくんだよ!」
後ろから声がする中、オレは人生で一番かってぐらいの速さでその場を離れ、いつもより遠回りの道で数百メートル離れた自宅に逃げ込んだ。
空が茜色に染まっていたのが階段の窓から一瞬見えた。オレは急いで自分の部屋に入ると、鞄を床に投げ捨ててベッドに制服のまま飛び乗った。
「言っちゃった…」
オレは先ほどの行動を後悔しつつ、走ってきたから、という理由だけではないはずのバクバク跳ねる心臓を抑えて、深呼吸をした。
「なんでこんな中途半端な時に…」っていう気持ちと、「やっと言えた」っていう気持ちが、胸の中でぐちゃぐちゃになっていた。
ずっと言えなかった思いが、やっと伝えられた。
すっごくすっきりした気持ちになれたけど、いずれ返事が来るって思ったら、その返事がとてつもなく怖くなった。
一度口に出した言葉は戻らず、時間も逆行しない。
オレはひたすら前に進み続ける世界で、期待しながら、でも怯えていた。
だけど、やっぱり心のどこかで、そいつがわかってくれるって、「いいよ」って言ってくれるって、信じてた。
続く




