[第3楽章:コントラディクション]
ようやくらしくなってきました。
因みに、ニセの次回予告って何か楽しいですね(マテ
――夕飯。
アリスが料理をご馳走したいと言うので真っ先に手伝いを拒否されてしまった。
「…おぉ、家庭的だ。」
肉じゃが、ほうれん草のバター炒め、鮭のムニエル。
こんな以外な組み合わせにも、各々の料理にはさりげない彩りが加えられて完成品と呼べる代物になっていた。
アリス「どうぞ、召し上がってください。」
にっこり。
きっとこんな素朴ながらに美味しそうに見える組み合わせの前には、誰もが腹をすかせるのではないだろうか。
「じゃあ早速頂きます!」
凄かった。
なんていうか、お袋の味?みたいな、それでいて味の加減が丁度良い。
「美味い!感動した!!」
アリス「ありがとうございます♪でも、食べながらは話さないで下さいね。」
原理は分からないが、アリスも普通に食べている。
「そういえば、さっき話してたときに検査って言ってたよな。この国に来たのはかなり前なのに、どうしてすぐに検査しなかったんだ?」
アリス「それでしたら、私の体が機械で出来ている、というのが的確だと思います。なので、私と同じ機械に使われる金属等を調べて、どうすれば安全に検査できるのかを検討、そしてその規格に合う特殊な…レントゲンみたいなものを作る必要があったみたいですよ。」
「なるほど。」
アリス「因みに、その全ての代表を引き受けてたのが此村教授…義父様ですね。なので施設でも一番良くお話するのは義父様なんですよ?」
「…段々と親父がどれだけ凄いか分かったような…」
アリス「そういえば、気になることがあるのですが…」
「ん?何?」
アリス「いえ、隆仁さんの気に触ることで無ければ良いのですが、…」
「いや、気にすること無いよ。それで?」
アリス「はい、隆仁さんもさっき、義母様が何で死んでしまったのかというようなことを言っていましたので、それが気になって…」
「あぁ、それなら、そう大した事ないよ。…母さんは、多分デフラグの所為で行方不明になってるんだ。」
アリス「それは…」
「いや、でもさ、急に蒸発したもんを信じろって言われても実感沸かなくてさ…そもそもが、死亡したか分からない事故でいなくなってるんだからな。」
アリス「確かに、その人自身は絶対に確認できなくなってしまうと聞きますから…」
「それで母さん、友達と旅行に行っててさ、それで…まぁ。」
アリス「そうだったんですか…見つかると、いいですね…。」
「いや、心配すること無いさ。…ただ、その頃から親父が研究熱心になったのかな…きっと今もアリスとデフラグの関係について一番追っているのは、誰でもない親父だけだよ…」
アリス「そんな、教授は、良い人、です……けど。」
「………こんな話するのは止めて、いい加減飯食おうぜ。これじゃあ食えるもんも食えなくなるぞ?」
アリス「……ええ、そうですね。ご飯が冷めないうちに………」
ガチャリ。
父「た、ただいま…」
「あれ、親父?今日は友達の所行くんじゃ…」
親父からはどことなく疲労の感が浮かんでみえた。
父「アリスちゃん、昨日の検査の…結果を先に話させてくれないか。」
アリス「は、はい…」
妙に親父の顔つきは神妙だった。
父「…君は、最早“ニンゲン”の域に達している……」
アリス「それって…」
父「あぁ、例の特殊加工スキャナで君の体を調べさせてもらった結果だ。だが、それは機械の構造なんてものじゃなくて、まるで普通の人間を見ているかのようだった。」
「それって一体どういう…」
父「あぁ、体の構造が全く“人体と同じ”なんだよ。」
アリス「そう、ですか…」
どことなくアリスも神妙な顔つきだった。そして俺は一瞬単語の意味が飲み込めず、何も言葉を発せないでいた。
父「しかも、比率的に見ればこそ大半は金属で臓器のようなものが作られているが、確実に君の食べたものは“君の体の一部を作り上げている”んだよ、動物と同じように。」
「…つまり、サイボーグみたいな感じって事…だよな?」
と、ここまで来てようやく自分の口が開いた。
父「あぁ、それで問題がある。…君は、“機械のまま”でいたいか…?」
アリス「…はい、お願いします。」
…ん?どういうことだ?
「それって…?」
アリス「民間人に私はサイボーグ、なんて知れ渡ったら私はもうここには戻れない気がします。だから、…せめてそれだけは何とかして欲しいです…。」
父「あぁ、分かったよ。じゃあ、君は他の機体と構造は変わらない。だけど、何故か意思を持っている。…これでいいかな?」
アリス「…ありがとうございます、此村教授。」
アリスは腰を折って、畏まった礼をした。
父「おっと、すまない。こんな話はここでするべきじゃなかったかもしれない。大丈夫、こっちには他の機体の写真もあるし、僕の発言は絶対的だからね。」
自身に満ちた父の顔に、アリスは少し安堵したようだったが、やはりその暗さは完全には消えなかった。
突きつけられた新事実。
その彼女の心の行き場とともに、世界は崩壊スピードを増してゆく…
静寂の業火とともに浮き出た真実は、あまりにも耐えがたい苦難となって隆仁の前に降り注ぐ。
一体、何が世界を突き動かしているんだろう…
次回、終末電脳アリス楽章「加速」
今、怒れる悪魔は復讐を遂げる…
(*半分嘘です)




