[第2楽章:平和のシシャ]
この章は中途半端にゆるゆるです。
ですがちゃんと物語は徐々に全貌を明らかにしていきます。
これはほんのささやかな談笑みたいな感じですね(笑)
思ったよりもその時間はあっさりと来てしまった。
…って言うかあっさり過ぎる。急にそこの戸(リビングの入り口)がガチャリと開いたのだから。
父「やぁただいま、隆仁。今日は新しい家族を紹介しようじゃないか!」
「って言うか、TVで紹介されとったわ!!」
と、父は激しいツッコみをものともせずにリビングに例の者と思しき少女を招きいれた。
少女「はい、はじめまして、私はアリスといいます。仲良くしてくださいね♪」
と、アリスと名乗るその少女(?)はいかにも看板娘と言わんばかりの笑顔で挨拶をはじめた。
「は、はぁ。あぁ、俺は隆仁です。…親父から聞いているかもしれませんが。」
と言うと、外見にして15歳無いかくらいの少女はクスクスと笑った。
アリス「はい、義父様からはよくお話を耳にしますよ。それも、何かある度に、うちの隆仁が…って話し掛けていただきますから。」
「あはははは」
親父とアリス…ちゃん(?)の前では乾いた笑いが精一杯だった。
父「そうそう、家事全般は、アリスちゃんに任せていいぞ。僕は、また仕事に戻らなきゃいけないからねぇ。また落ち着いたら連絡するよ。その時は3人で鍋でも食べようじゃないか。」
「あれ?アリス…さんって機械じゃないのか?」
アリス「ええ、確かに機械です。でも、私は意志も持っているし食べ物も食べれます。普通に考えれば私のような機械に食生活があるだなんて不思議ですよね。」
と、またアリスはクスっと笑った。
「そうだ親父、次は何時に出かけるの?」
父「そうだねぇ…今が10時ごろだから、後2時間はここでゆっくりしていられるねぇ。」
アリス「教授も、研究ご苦労様です。」
父「おやおや、お父さんと言ってくれないと寂しいじゃないか。」
相変わらず親父はおどけて見せた。
アリス「そうですね、では改めまして義父様、お疲れ様です。」
父「あぁ、ありがとう。」
何かこうしてみると、まるで俺だけそっちのけられてるみたいだな…
まぁ、親父も久々に顔合わせた上にこんな娘引き連れてるんだから話すのも気恥ずかしいだけなのかもしれないけど。
父「じゃあ、僕はそろそろ施設に戻らなきゃ。」
アリス「はい。いってらっしゃい、義父様。」
「いってらっしゃーい。」
父「あぁ、隆仁も風邪ひくなよ?」
とだけ言うと、玄関はガチャリと閉まった。
「そういえば、やっぱり親父はデフラグとか言うのの研究なのか?」
アリス「はい、確かにそうです。今だ現段階の技術力では解明が難しいと。」
「ふ〜ん…そういえば、…」
と質問をしようとしたところで、渋った。
アリス「どうしました?」
「いや、なんて呼べばいいかな?」
アリス「それでしたら、お好きにどうぞ。私は、普通に呼んで頂けるのでしたら構いません。」
「う〜ん…〜〜。」
アリス「ええと、別に『アリス』とだけ読んでいただければ結構ですよ?」
「あぁ、分かった。それじゃあ早速だけどさ。」
アリス「はい。」
「今日見たニュースで、どうしてアリスって“アリーセ”って呼ばれてたの?」
アリス「つまり、何で“アリス”と呼ばれなかったか、ということですか?」
「そうそう。」
アリス「それでしたら、私はもともとドイツで作られていた人型のロボットだったからです。」
「ん?どういうこと?」
アリス「私は、元々は失敗作だったはずなんです。ですが、この通り意思を持って動くことができるようになりました。それで、不可思議な出来事を意味するアリス・イン・ワンダーランド…つまり、不思議の国のアリスですね、その名前を付けさせていただきました。
それで、“ドイツ”で生まれたわけですから、ドイツ語読みで“アリーセ”と言ったんです。それでも、こっちの人たちは皆私のことを“アリスちゃん”って呼びますけどね。」
「ふ〜ん。何か凄い誕生の仕方をしてるんだな…」
アリス「確かに、元がただの“人型をした機械”ですもんね。」
その言葉が妙に気になったのは気の所為か。
「何か引っかかる言い方するな。」
アリス「そうですか?私はそんなことは無いと思いますけど…」
「まぁ、いいや。そういえば、母さんがどうして死んだとかって親父に聞かされたのか?」
アリス「いえ、ただ居ないとだけ。」
「そう。まぁ気にするでもないんだけどな。」
実際に在り来たりな死に方をしたんだろうから。
アリス「きっと大変だったんでしょうね。」
「ヘ?」
急に話が飛んで素っ頓狂な声を上げてしまった。
アリス「いえ、義母様のことです。きっと隆仁さんはご両親が居ない間にここで一人だったって聞きますから、大変だったのかなぁ、と。」
「いや、まぁ、家事に慣れればそうでもないかもしれないな。」
アリス「凄いですね、家事もできるんですか。」
……………………。
………。
アリス「すっかり話し込んでいましたね。」
「あぁ、そうだな。ところで、アリスの会話スキルって一体どこで…?しかも、日本語上手いし。」
アリス「いえ、これでも日本語と英語くらいしか喋れませんよ?それでも、いつも施設の方とお喋りさせていただいたり、あと前には時々介護施設に呼ばれたりもしました。」
「へ、平和の使者とマスコミとかに呼ばれるのはこのことか…」
人ながらに驚嘆。
「て言うか、アリスってもう施設に戻らなくてもいいのか?」
アリス「はい。というより、私の検査は終了しましたから、迂闊に戻れません。私とデフラグとの関連性が無いかどうかを調べたがる人を寄せつかないためにと、施設内の最重要協議で決まりましたから。きっと協力していただいた思想家の方々には大変ご迷惑をお掛けしたんだと…」
そういえば、ニュースではそんな話はされずに“思想家達”によって推薦されたって話されていたな。
流石は国家レベルの団体。
「でもこんな民間で大丈夫なのか?」
アリス「いえ、ここら一体は施設が仕切っているんですよ?これでも。」
「でも、やっぱり民間の家だし…」
アリス「きっとSPの方もこの近くに住んでいらっしゃるのではないかと…」
…怖!!
「確かに、そりゃ安全だろうな…。」
アリス「ですから、御心配は要りません。ちゃんと隆仁さんの御面倒まで任されていますから、お好きになさって結構ですよ。」
それはまただらけてしまいそうだな…
「まぁ、気が向いたら家事くらいは手伝わせてくれ。」
アリス「はい、勿論です♪」
突如引き裂かれた、たった一時の新たな家族との休息。
その波は、あらゆるものをも飲み込む大きな恐怖だった。
哀しき機械に宿る一つの意思。
その意思は、大きな絶望とともにゆっくりと廻っていく…
次回、終末電脳アリス楽章「コントラディクション」
今、怒れる悪魔は復讐を遂げる…
(*半分嘘です。)




