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1 可愛い妹のためなら、着ぐるみ着用でプールに飛び込む(自業自得)

 夕食前にふとテレビをつけると、ちょうどニュースをやっていた。


『着ぐるみを着た不審者が多数目撃されました。本日の昼ごろから夕方にかけて、宮代木町、大冬町、明楼町などで、ゆるキャラを装った不審な人物が少なくとも20カ所で目撃されました』

 ニュースキャスターがそう読み上げると共に、画面には何とも言えない着ぐるみたちが映し出される。


「あ、可愛い」

 と、そこで、リビングに妹の秋穂がやって来て、テレビを見るなりそう声を上げる。


「見た目はな。でも、どうやらゆるキャラを装った不審者らしいぞ」

 ニュースの内容を全く理解していない妹に、兄の夏陽は軽く説明する。

 もっとも、夏陽もいまいち詳しいことは把握していないので、今もニュースに耳を傾けている。


『目撃者の話によると、この不審者たちは、路上でブレイクダンスを踊り通行を妨げたり、小さな女の子の頭を撫でては逃走したり、電車で席を譲ると見せかけて技を掛けたり、水族館の水槽の中を無断で泳いだり、通行人に緑色の液体を浴びせるなどの迷惑行為および暴力行為をしていたとのことです』


「……お、お兄ちゃん」

「えっと、こいつらはゆるキャラじゃなくて、ゆるキャラのフリをしてる悪い人たちだから、そんな――」

 そんな顔するな、と夏陽は言おうとした。

 しかし秋穂の顔をよく見ると、どうもショックを受けているようではなく、むしろ――


「ゆるキャラって、泳げるの!?」

「え、そこ?」

 確かに夏陽もそこは気になった。だが、真っ先に言うべきところではないと思う。


「ねぇ、お兄ちゃん。ゆるキャラって泳ぐの?」

「え、それは……」

 夏陽の服の袖をギュッとしながら、上目遣いで見てくる秋穂。

 期待に胸を膨らませつつも、もしかしたらダメかもしれないと揺れる妹の美しい瞳。


「もちろん、泳げるさ!」

 夏陽はグッと親指を立て、言い切る。


「ほんとう!」

 パッと花が咲いたような笑顔。眩しすぎ。そして可愛すぎる。

 ああ罪悪感が……夏陽は笑顔の裏で涙する。

 しかし言い切った以上、今更撤回できるはずはない。


「ああ。ほら、魚っぽいゆるキャラとかいるだろ。彼らは、普段は陸で過ごしてるけど、本気出したらガンガン泳ぐから」

「そっか。すごいなー。見てみたい」 


 妹の嬉しそうな顔を見ながら、兄は思う。

 着ぐるみ着て泳ぐ練習しよう、と。



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