10話 前進
「――その依頼の内容なんですが、ガウロ砂漠で発生した砂嵐の調査なんです」
場が落ち着き、全員が丸テーブルに座り直したところで、アマリエは話を切り出した。
「ああ…通行止めになってるって話だよな」
「僕も聞いてるよ」
バッカスに続き、ミハエルも頷く。
「――私もだ。“オアシス”が封鎖され、首長国との物流が止まっているそうだな」
「はい」
リゼッタの言葉に、アマリエはテーブルへ依頼書の写しを広げた。
「現地にはすでに調査隊が派遣されていますが……全員が行方不明になっているそうです」
ガウロ砂漠のオアシスは首長国が管理している。
砂嵐発生後、すぐに調査隊が送られたものの、誰一人として戻っていなかった。
「――それで、今も原因が分かっていないのか」
顎に手を添えながら、バッカスが低く呟く。
「はい。それで、周辺ギルドにも調査依頼が回ってきたみたいで……」
「なるほどな。ここらでS級が出たのも頷ける」
「隣国にも救援を求めているそうですが……危険性が高いと判断されて、交渉は難航しているようです」
「情報がない状態での派遣は厳しい」
エイガーの言葉に、アマリエは静かに頷いた。
「――ですから、本来は悠長に模擬試合してる場合ではないんです」
「まぁ、そうだな。……で、何が言いたいんだ?」
バッカスが視線を向ける。
「客観的に見ても、この同盟の精鋭で向かうのが最善だと思うんです」
「なるほどな」
その言葉に、バッカスは頷いた。
「うちは俺とリゼッタがS級。ミハエルも長く組んでいるから連携に問題はない。そこに“マリエ”が加われば、編成の均衡も取れる」
黒曜連盟は実力主義ゆえ、戦力はあっても連携に欠ける。
そう考えれば、戦力だけでなく編成の完成度もこちらが上だ。
今回、一騎打ちという形式を選んだのも、その欠点を踏まえてのことだろう。
「最終判断はギルドだが、この好機を利用しない手はない」
エイガーの一言に、バッカスは口角を上げた。
「……つまり、この条件を飲むってことか?」
「はい」
バッカスの視線を受け止め、アマリエは迷いなく頷く。
「――だそうだ」
バッカスがリゼッタを見遣った。
「……当人が望むなら、異論はない」
小さくため息をつきながら、短く答える。
「よし、決まりだな!」
それを聞くや否や、バッカスは両腿に手をつき、勢いよく椅子から立ち上がった。
「それじゃ、今からギルドに行ってくるぜ!」
そのまま意気揚々と外へ出ていく。
「……お前は、よかったのか」
模擬試合に出るのは、他ならぬエイガーだ。
リゼッタは彼の真意を問う。
「ああ、問題ない」
迷いのない返答に、リゼッタは小さく頷いた。
「――私も行く。あいつ一人では不安だ」
そう言い、後を追うように扉へ向かう。
「はい、いってらっしゃい」
アマリエの声に、振り返ることなくリゼッタは軽く手を上げた。
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