3話 鑑定
「……失礼します」
アマリエは、重い木扉を押し開け、控えめに声をかけた。
「どうぞ、中へ」
眼鏡をかけた白衣の女性――鑑定士が穏やかに促す。
アマリエはおずおずと部屋に入り、受付でもらった書類を差し出した。
「新規の冒険者さんですね。お名前は…マリエさん」
「は、はい」
ぎこちなく頷くと、鑑定士はにっこりと微笑んだ。
「では早速ですが、『鑑定』に入りますね。
――まず、マリエさんは魔力をお持ちですね?」
「はい」
「では、“適応属性”を見ますので――あちらの魔法陣の上へどうぞ」
アマリエが立った石床には、六芒星の魔法陣が刻まれていた。
その周りには、六本の巨大な水晶柱が静かにそびえている。
さらに離れた机には、箱型の測定機器の前に、三人の鑑定士がずらりと並んでいた。
(なんか、圧が、…き、緊張する…)
「――始めますね、そのまま動かずに」
鑑定士の声とともに、足元の魔法陣が淡く光った。
次の瞬間、ボーン、と鍵盤を叩いたような重い音が室内に響き、一本の水晶柱が光を差す。
「属性は―光ですね」
鑑定士は、すぐさま記録を取る。
――どうやら六本の水晶柱は“魔法石”らしく、対象者の属性に応じて光る仕組みらしい。
「続いて魔力測定に入ります。こちらの石板に手をかざしてください」
示された石板は古く、角が取れ、表面には見たこともない文字が刻まれている。
(…神話文字とは違うし)
アマリエが覗き込むと、
「それ、古代魔法文字なんですよ」
鑑定士が、誇らしげに解説を始めた。
「古代魔法文明の遺物で、高位魔法の媒体だったと言われています。これは、ユーバト地方で発掘され――
まぁ、正確な文字の解読はできていませんが、『魔力の吸収・蓄積に特化した性質』が判明しまして。
――とある偉い魔法学者が測定器として改良したんです」
「すごいですね!」
感嘆するアマリエに、鑑定士は胸を張る。
「実はそれ、私も開発メンバーの一人だったんですよ」
「えっ、そうなんですか!?」
驚くアマリエ。
しかし同時に、疑問が湧く。
(そんなすごい人が…どうしてこんな地方に…?)
「どうして、そんな“私”がこんなところにいるかって、思いますよね?」
図星を突かれ、アマリエはぎこちなく頷いた。
「嫉妬した『先生』に飛ばされたんです。……“優秀すぎる”のも考えものですよね」
その言い回しは、軽い冗談のようなのに、言葉の奥には棘が混じっている。
「…でも――いつか絶対に、あいつを…」
その背後で、黒い影の火が燻るように揺れて見えて、アマリエは思わず顔を引きつらせた。
「さ、そろそろ本題に戻りましょう!」
鑑定士は、場を切り替えるように手を叩いた。
「ではマリエさん、手をかざしてください」
「は、はい!」
アマリエは恐る恐る石板に手を置いた瞬間、
――石板全体が、虹色に輝いた。
「「「こ、これは!!」」」
三人の鑑定士が同時に立ち上り、驚愕の声を上げた。
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