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[0]とある引きこもり少女の証言2/2

 次の日、私がトイレから部屋へ戻ろうとした時です。

 私は母に呼び止められ次にこう言われたんです。


「アンノン、お友達が来てるわよ!」


 おかしな事に私の母がですね?そんな頭のおかしい事を言ってきたんです。

 本当に不可解でした。


 なので私は正直に言ってやったんです。


「オトモダチなんて名前の人、私は知らないです・・・・・・」

「そんな名前の人、母さんだって知らないわよ」


 安心しました。

 なんせ母と私の意見が一致したんですからね。

 ただ、母は少し困り顔でした。まるでこの子大丈夫かしらと思ってそうな顔でしたね。


 失礼しちゃいますね!


 ともあれ、私はこれで即お役御免といいますか、偉大なるフリーダムパラダイスタイムといいますか、頼んでもいない突発イベント回避のボーナスステージ突入といいますか・・・・・・(ちと早口)。


 これで新たなマッパなイケメンを描けるというものですよ!


「ですよね。それでは失礼しま――」


 ガシッ!


「待ちなさい。そんなおバカな事言って終わると思っているの?」


 失礼しちゃいますね!(パート2!)。実の娘に向かってお馬鹿コールですよ?

 私はしごく真面目に真摯的かつ知的にその場を乗り切る言葉を選んだというのに。


 これはちょっと強引だったかなぁと、今はは思わなくもないですけど・・・・・・。


「・・・・・・ですよねぇ」


 私は結局この突発イベントフラグをへし折る事が出来ませんでした。というか延々とループするあるようでない選択肢といいますか、これって回避不可イベントではないかという気がします。


「こんにちはー。昨日はまともに話すら出来なかったのでまた来ました」


 そんでもって母に連れられてリビングの方に行くとそこに居たのは、例のごとくあの少年となぜか兵士っぽい人がいました。


 これは何かのトラップ?


「いえいえ、昨日はうちの娘がとんだ失礼をしてしまってごめんなさいね。ほらアンノンも謝りなさい」


 あれー?

 おかしいですね・・・・・・。私からしたら悪いのはあっちなのに、なぜか私が謝罪しなければならない流れですよ・・・・・・?


 まぁ、悪いのは私の方なんですけど、あの時の私はほんとどうかしてたので仕方ないですね(開き直り)!


「・・・・・・なるほど」

「アンノン?」

「悪いのはそっちなのに、Gの件を逆手にとってアレしてこうして被害者気取りで、私をそこの兵士に拘束させるつもりですね!!」

「えええええ!どうしてそうなるの!?」

「その手には乗りませんからぁ!!」


 私は全力疾走といいますか、加速装置を起動させたといいますか、ク○ックアップしたといいますか・・・・・・(やや早口)。


 そんな感じで私の聖域目指してれっつらGO!!で向かったんです。

 もう、この時の気持ちだけなら私以外の世界の時間が止まってましたね!なんせ私がリビングを飛び出した時みんな固まってましたから!


 ・・・・・・分かっていますとも、みんな突然の事に言葉を失って固まってたんですよね。あくまであの時の私の視点ではそういう感じに見えたってだけですね。


 バタンッ!


 私は聖域に戻るとすぐに封印をして安堵しました。


「まったくあのガキめ。まさか昨日の今日で国家権力まで使ってこようとするなんて・・・・・・。こうなれば徹底抗戦じゃーーーい!!」


 私はその後、部屋の前に本棚や本を部屋の扉の前にずらしたり置いたりして、最終防衛ラインを形成したといいますか、多重結界を張ったといいますか、ATフィールドよろしくといいますか・・・・・・(ちと早口)。


 まぁ、ただのバリケードですけどね。あくまであの時の私の気分がそんな感じだったわけです。


 で、私はその後みょるにーるを両手に装備して警戒していたのです。

 でもあまりにも何も起きなかったので、そのまま寝ちゃっていたんです。


「くぁぁっ・・・・・・。あ、私警戒したまま寝ちゃったんだっけ・・・・・・」


 変に思う人もいるでしょうが、寝起きなのでフィールド効果なんかのバフは睡眠強制ディスペルによって一応全消去されている状態といいますか、素に戻ってるだけなので大丈夫です。


 すぐに頭のおかしい感じになりますから!!


「あー、日記を書くの忘れてた・・・・・・」


 カキカキ・・・・・・。



 ○月×日。

 今日は国家権力の魔の手から全力で逃げ回ってやったぜ!!いぇい!!

 もう、天下無敵の大怪盗も真っ青になる大活躍だった!

 私じゃなきゃまず逃げる選択すら出来ねーだろってくらいだ!!


 私を捕まえるなんて事誰にも出来はしないぃ!!!!!!

 私はムテキだぁぁぁ!!!


 以上です・・・・・・。



「これで、よし・・・・・・と。う・・・・・・、お腹も空いたかも・・・・・・」


 私は片手でお腹をさすりつつ、自分で築いた絶対領域の超えられない壁というか、もうぶっちゃけ本棚と本の山に目を向けてうんざりした気持ちになりました。

 これこそが孔明の罠か、はたまた破滅の罠か、まさかの天使と悪魔の合同ドッキリか・・・・・・。


 ってただの自爆ですよね!ぴぎゃぁぁぁぁああああ!!!!


 私は空腹な状態でよたよたしながら本棚や本をちょっと乱暴にどかして、なんとか通れる隙間を作り聖域から外に出たんです。

 向かう先は勿論、我が家の生き物処刑場。

 豚は勿論だけど鳥や魚を幾度もズタズタに切り裂き、ハラワタを抜き取る狂気の場所・・・・・・。

 それだけでは飽き足らず、時には聖なる炎でこんがり焼き、時には清めの塩を溶かし込んだ聖水に浸し熱々になるまで熱を加えたり・・・・・・。


 そういった徹底した拷問兼処刑を行う恐怖の・・・・・・。はい、ただの台所です。


「ええと・・・・・・、何か食べれるものは・・・・・・」


 いつもは母が私の分の夕ごはんを用意してあったりなんですが、この日ばかりは用意されてないみたいでした。


 ガサゴソッガサゴソッ。


 私は仕方なく獲物を求め索敵を開始したわけですが、もうこの時の気分は血肉を求めるゾンビといいますか、黄色い走る鳥を追いかけるなんとかイーターの気持ちを理解したといいますか、食い物はいねぇがー!!って探し回る空腹ナマハゲ状態と言いますか・・・・・・。


 まぁ、そんな感じで空腹だったわけですよ。


 ガサガサッ、ガサゴソッ。


「よかった。・・・・・・みかんゲット」

「――じゃないっ!」


 その時でした。私は何か聞こえた気がして、ふとリビングの方にコソコソと足を向けたのです。

 そのリビングでは私の両親が何やら言い争っていて、私は気になってコッソリ聞き耳を立てました。


「いやしかしな・・・・・・」

「いいえ!絶対そうよ!そうに違いないわ!!」


 んー、何の話だろ・・・・・・?


「アンノンは何か悪い物に取り憑かれてるのよ!!!!」


 な、なんですとっっ!!!!


 もうビックリしました。なんせ私の話で両親が言い争いをしてたんですからね・・・・・・。しかも何かに取り憑かれている設定らしい・・・・・・。


「まだそうと決まったわけでは・・・・・・」


 うんうん!違うから絶対ないから!!

 母さんに負けないで!がんばって父さん!!


「きっとこのままでは、私達にも悪影響が出るに違いないわ!!なんとかすべきよ!!」

「ちょっと落ち着いて、こっちの話も聞いてほしいんだが」

「・・・・・・ごめんなさい。少し熱くなりすぎたわね」


 よかったこれで一安心。グッジョブ父さん!

 今度、久しぶりに口を聞いてあげよう。うん。


「いいかい?まず、アンノンは何にも取り憑かれてなんてない」


 そのとーり!!


「だからアンノンは、かつて世界を滅ぼそうとした魔王の生まれ変わりではないかと思うんだよ」


 は?????????????????????????????????????????????

(思考停止)。


「そんなわけないでしょ!アンノンは悪霊か悪魔とか、なんだったらそこらの変なおじさんの霊に取り付かれてるだけよ!!」


 はい????????????????????????????????????????????ピーガガガッ!(脳内:強制再起動中)。


「君こそ何を言ってるんだ!アンノンは闇堕ちした元勇者とか魔王とか堕天使とか、なんだったら魔王の部下の部下の部下の部下の部下が最初に殺した人間の生まれ変わりなだけだ!!」


 ・・・・・・(再起動終)・・・・・・。

 オイィー!!それもうただのザ・モブじゃん!

 お話の中ですら登場すらしないで名前だけお墓に書かれてるモブでしょ!!

 っていうかそういう話でもなくて・・・・・・。


 ダメだこの夫婦・・・・・・。早くなんとかしないと(自分の事は棚上げ中)。


「なんで分かってくれないのよ!わからずや!!!!」

「それはこっちのセリフだ!なんで生まれ変わりの王道転生ロマンを理解しないんだ!!」

「こうなったら離婚よ!離婚!!」


 え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「上等だ!やってやろうじゃないか!離婚!!」


 えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!


 ほ、ホントになんとかしないとっ!この夫婦!!!!

 あーーー、でもどうすれば・・・・・・。そもそもの原因が私っぽいしー・・・・・・。

 あ、ダメだこういう時どういう顔をすればいいかすら分からない・・・・・・。


「うん。一旦寝てから考えよう・・・・・・」


 寝て起きた次の日の朝の事でした。

 私が何か行動を起こす間もなく、私の両親がアホな書き置きをして姿を消したんです・・・・・・。


 それが↓コチラ↓。


『悪霊憑きのアンノンへ


 ちょっとした方向性の違いから父さんとは離婚する事にしました。


 新しい新居が見つかったら荷物を取りに戻るので、それまで私の私物はそのままにしておいてください。


 あと、父さんの荷物は好きにしていいわよ?なんならお金に換えちゃってもいいから!!むしろ推奨!!!!


 母より』


 この自分の娘を悪霊憑き呼ばわりのふざけた事を書いたのが私の母さんで、次が父さんのやつ。


『男のロマンの塊、転生者アンノンへ


 ロマンを一向に理解しようとしない母さんとは離婚する事になった。


 新しいアジトが見つかったら父さんの痕跡を消しに戻るので、父さんの荷物はそのままにしておいて欲しい。


 あとは・・・・・・、そうだな。お金に困ったら母さんの私物を売ると良い。むしろ頼む。


 父さんより』


 父さんは父さんで、勝手に私を転生者扱いしてるしアジトだの痕跡だのとふざけた事言ってるし・・・・・・(自分の事は棚上げ中)。

 まぁ、アレです。


 要は寝て起きたら手遅れでした・・・・・・。


 そういう事です。


「ほんとに何でこんな事に・・・・・・。あと、こんな紙切れじゃなくて・・・・・・、ごはん用意してほしかった・・・・・・」


 私は呆然としつつも、空腹を訴えるお腹を擦っていたんです。


「手持ちのお金もあんまりない・・・・・・」


 いつ両親が戻ってくるのか不明な中、私がしなければならないと思ったのは食べ物の確保でした。

 しかし、両親ともお金については相手の私物を売れといいつつ、自分のはそのままにしろと言う・・・・・・。


 つまり何も売るなって事ですよね・・・・・・?


「もう!どうしろっていうのよぉーーーー!!」


 八方塞の中、私は空腹には勝てず食べ物を求め残り少ないお金を手に買い物に出かけたんです。

 ですが・・・・・・。


「マジですか・・・・・・」


 いつもであれば家で朝食を食べていた時間だったのですが、いざ食べ物を買いにお店まで行くとどこも開いてません。

 私は考えた事がなかったんです。いつも食べていた朝食は、母さんが前の日に前もってみんなの分を考えて買い、それを両手に持ち帰っていた事を・・・・・・。


 私は仕方なく手ぶらで帰る他ありませんでした。

 そして、聖域に・・・・・・。もうただの部屋でいいですね。自分の部屋に戻った私は、空腹を我慢しつつ自分の散らかった部屋を眺め思ったのです。


「もし、あの本の山がお金か食べ物だったらいいのに・・・・・・」


 この時になって私は初めてなんでコレにお金を使ってたんだろうと、そう思ったのです。

 お金を使わずに残せていればなぁとも思い、そのお金を私に分けてくれていた両親の事を今更ながら考えたのです・・・・・・。


「もし、私なんかの為にお金を分けてなければ、軽い旅行くらいできたよね・・・・・・。もっと仲良ければ離婚だって・・・・・・」


 私は部屋の隅で膝を抱えて泣いてしまってたんです。

 そして、いつのまにか寝てしまっていて気が付くとお昼になっていました。


「さすがに今ならお店やってるかな・・・・・・」


 私はふらつきながらも立ち上がり、食料を求めて再度買い物に出かけたのですが・・・・・・、その帰りの事でした。

 またしてもあの少年に出くわしたのです。


「また会ったね」


 私は精神的に参っていた事も原因だとは思うのですが、少年を見ただけで悪寒がして鳥肌が立ってしまったのです。

 まるで、私をつけ狙っているような気持ち悪さを感じて・・・・・・。


「・・・・・・」


 私は無視を決め込みました。

 まるでこの少年を中心に良くない事が起こっているんじゃないかと、考えてしまってたので・・・・・・。


「ご両親は元気かな?」


 私は少年の問いかけには応じずに、無視して歩きました・・・・・・。


「・・・・・・」

「何か困った事になってるんじゃない?」

「・・・・・・」


 私は無視を続けながら歩きました。

 少年はそんな私の後を追うように歩き、さらに質問をしてきたんです。


 もう私に構わないで!


 既に精神的に一杯一杯な私は心の中でそう叫んだのです・・・・・・。


「そうだなぁ。例えば、・・・・・・両親が離婚したとか?」


 ドキッ。


 私は今の悩みを言い当てられ思わず立ち止まりました。

 そして、立ちっぱなしの鳥肌に加え冷や汗がたらりと頬を流れました。


「な、なんで、それ、を・・・・・・?」


 両親が離婚の話をしていたのは昨日の夜で、朝には姿を消してました。

 つまり、他の人が知っている筈はないんです・・・・・・。

 私は少年に目を合わせることが出来ませんでした。

 それどころか声すら震える始末です。

 直接見てませんが、少年が不気味に笑っている気がしてました。


「なんとなく言ってみただけだよ」


 嘘だ!!!!!!


 私の勘がそう叫んでいました。


「もしかして当たってた?とすると、もう両親は家を出て行ってたりするのかな?」


 ゾクリッ!


 本当に怖かったです。もし、本当にいないと知られたらどうなるのか・・・・・・、そう思うと怖くてたまらなかった・・・・・・。


「・・・・・・父さんも母さんも、まだうちにいます!!」


 私は思わず嘘を言ってしまってました。

 当然ですが、父さんも母さんも家にはいません・・・・・・。

 私は思い知りました。

 いかに今まで両親に守られていたかを、私自身がそれを知らずに頼っていたんだなって事に・・・・・・。


「本当かなぁ?」


 私が嘘をついた事に気が付いている感じがしました。


 も、もしかして、すべてこの少年が何かを・・・・・・。


「そ、それより!何のようなんですか!!」

「まぁ、いいか。実はとてもご利益のあるすごーい指輪があってね。これを付ければどんな悩みも即解決!」


 えーと、なんかいきなり詐欺商法まがいみたいな事言いだしてるし・・・・・・。

 ま、まぁただの詐欺商法の人かと思うと、逆に少し落ち着けるけど・・・・・・。


「すごいんだよ?・・・・・・だって取り憑いた悪霊も転生前の呪いも一発解決――」

「きゃぁぁぁああああああああ!!」


 ドンッ!


「うわっ!」


 この少年絶対分かってて言ってる!!詐欺商法の人なんかじゃない!!

 怖い!!!!


 私は少年に体当たりをかまし、それからダッシュで家に戻り鍵を掛けました。


「ただいま・・・・・・。やっぱり父さんも母さんもいないよね・・・・・・」


 いつの頃からかコソコソ出かけてコソコソ帰るようになってて『ただいま』すら言わなくなっていたんです。

 でも、それより前の記憶を思い出すと『ただいま』と言えば母さんが『お帰り』と言って貰える日々でした。


「今は『お帰り』って言って欲しいよぉ・・・・・・」


 コンコンっ。


 玄関で誰かがノックをしているようでした。

 私の頭にまず浮かんだのが両親でした。


 でも、何か変・・・・・・。


 思わず鍵を開けそうになった手を止めて、冷静に考えたんです。

 もし、両親であれば鍵を持っている筈なので、ノックなんてしない筈だと・・・・・・。


「だ、だれですか・・・・・・?」


 私は力いっぱい願ったんです。

 どうか父さんや母さんでありますようにと・・・・・・。鍵を失くして家に入れないだけなのだと・・・・・・。


「ああ、僕だよ。さっき君に体当たりされた人」


 そんな予感がしていたのは確かなんですけど、父さんや母さんであって欲しかったという淡い希望が消え去って、悲しさと寂しさと孤独感が胸の中に広がったんです。


「まだ話が終わってなかったから――」

「帰って!!」


 私は玄関越しに声を張り上げました。

 もうこの少年に関わりたくないという気持ちで一杯で・・・・・・。


「でも、この指輪を付けて貰わないと――」

「ほんとに帰って!!」

「・・・・・・分かったよ。でも、一つだけいいかな?」

「?」

「後悔しても知らないからね?」


 こ、後悔っていったい・・・・・・。


「・・・・・・その、後悔って何ですか?」


 少し遅れて玄関に向かって問いかけたけど、すでにあの少年は立ち去ってしまった後だったようで、返事は返ってきませんでした。


 ほんとに、後悔ってなんだろ・・・・・・。怖い。


 今から後悔するような何かが起きるのだろうか?それを考えると余計に不安に駆られ、家の中どころか自分の部屋にいても、私は落ち着く事が出来なくなってしまった。

 より具体的に言えば、誰もいないはずなのに男の子のような笑い声が聞こえてきたり。誰かの視線を感じて振り向くと人影のようなもやが見えた気がしたり、まるで今まで住んでいた家がまったく知らないゴーストハウスと化したようでした・・・・・・。


 私は自分の部屋で膝を抱えるようにして、また寝てしまっていたんです。

 しかも気が付くと既に夜中・・・・・・。

 知らない夜のゴーストハウスの恐怖が分かるかは分かりませんが、夜中になるととてもじゃないですが怖くて寝れる気がしないんです。はっきり言って、外のそこらの地面の上の方が案外寝れるのでは?と考えてしまうほどでした。


 でも、外に出たらあの少年に出会いそうで、それはそれで嫌ですけど・・・・・・。


「う・・・・・・。部屋から出たくないんだけど・・・・・・」


 仕方なかったんです。

 こんな時でもトイレには行きたくなるもので、私は怖いと思いつつも仕方なく立ち上がりました。


 キィー・・・・・・。


 私は部屋のドアを警戒するようにゆっくり開けたんです。

 ドアの外の廊下は誰もいないので当然ですが、明かりもなく暗くて静かでした。

 いつもは暗くても気にせず進んで行けるのに、その時ばかりは私の足取りは遅く重かったんです・・・・・・。


「父さんか母さんがいれば違ったのかな・・・・・・」


 心細さを感じながらも、私はトイレを済ませ自分の部屋へ向かったんです。

 ですが、さっきも通った筈なのに『何かが違う』そんな違和感のようなものを感じていました。


 ぺちゃり・・・・・・。


 その時でした。右足が何かを踏んだんです。

 右足から感じる感触は、何かの液体で少しの粘り気とぬめり気があった気がしました・・・・・・。

 私は見たくないと思いつつも足元に目を向けると、黒い液体のようなものが床に広がりつつあったんです。

 その液体の発生源を探し、床から壁へそして上の方に目を向けると・・・・・・。


「う、うそ・・・・・・。こ、こんなの、さっきはなかったのに・・・・・・」


 私は確かに見たんです。壁の上の方から液体を垂らしていた物体を・・・・・・。

 鼻が特徴的な動物で、鼻と口から透明な粘液を垂らし、目は白目で、まるで何かに引き千切られたかのような傷口の皮膚とそこから垂れていく黒い液体。


 それはまぎれもなくブタの頭で、それが壁にぶら下げられていました・・・・・・。


 ガチャ、ガチャ・・・・・・。


 金属がぶつかり合う様な音がして反射的にそっちを見ると、今度は首から上のない鎧がたっていました。

 もうここまでくると、どうすればいいかなんて考えません。体が勝手に逃げる事を選択していたんです。


「おまえのぉーぐびをぉよこせーーーーーーー!!!!」


 悲鳴すら出せません。

 呼吸が乱れすぎてて呼吸が苦しくなってたので・・・・・・。


 バタン!!ガチャ!


 私は無事に部屋に戻り鍵を掛ける事に成功し、膝から崩れるように座り込みました。


「も、もうわけわかんないよ・・・・・・」

「ぐびをぉよこせぇぇぇ!!!!」


 ガンガンガン!!ガンガンガン!!


 部屋のドアをガンガンと乱暴に叩く音が響き、私は体を小さくし目を閉じて耳を両手で塞いだんです。

 無事に済みますように。この時間が早く終わりますように。

 そしてなにより、父さんと母さんが戻ってきてくれますようにと・・・・・・。


 ガンガンガン!!ガンガンガン!!


「こっちごいよぉ!そのぐびよこせぇよぉ!!」


 ガンガンガン!!ガンガンガン!!


 やがてドアを叩く音も止んで、私は耳を塞ぐのを止めて目を開けました。

 しかし、何も終わってなどない事を目の前にいた人物、その存在が私に叩き込んできていたんです。


「どう?後悔するような事態になってない?」

「・・・・・・くせに・・・・・・」

「ん?」

「どうせあんたが全部仕組んだくせに!!」

「いきなり怒鳴らないでくれない?何の事だかわかんないしさ」

「しらばっくれないでよ!父さんと母さんの離婚も!男の子の笑い声も黒いもやも!さっきの部屋のドアを叩いてた奴も!!全部あんたが仕組んだんでしょ!!」

「僕は何もしらないよ?」

「嘘だ!!!!」

「嘘じゃないよ」

「なら、アレは何だっていうのよ!!」


 私は危険を承知で、論より証拠とばかりに部屋のドアを開けました。

 あの動く鎧がそこにいなくても、ブタの頭やそこから落ちていた黒い血痕が残っているはず。


「・・・・・・な、何も無い」


 でも、そこには何もありませんでした。それはもう綺麗さっぱり。


「よく分からないけど、君って何かに取り憑かれてるんじゃない?」

「そんな筈ない・・・・・・。確かにあそこにブタの頭があって、その下には黒い血が・・・・・・。それに頭のない動く鎧だっていたはず・・・・・・」

「そこでこの指輪!これを指に装着すればあら不思議って・・・・・・あれ?」


 私は部屋を飛び出してました。

 おかしいのはあの少年と怪現象であって、私はおかしくなってないんだって証明したかったから。


 私は変じゃない!私は何にも取り憑かれてもない!!

 私は嘘なんてついてない!!


 自分にそう言い聞かせてたんです。


「廊下・・・・・・。物置部屋・・・・・・。トイレ・・・・・・。お風呂場・・・・・・。リビング・・・・・・。両親の寝室・・・・・・。台所・・・・・・な、何もない」


 私は家の中を駆け回り見て回ったんです。

 ですが、私の予想を裏切るように何もなく。そこにあるのは私が知るいつも通りの家でした。


「お、おかしいのは私・・・・・・?今まで見たのは全部幻覚・・・・・・?」


 嫌な汗が私の頬を流れ落ち、信じたくなかった可能性が頭の中を埋め尽くしました。


 違う違う!!


「悪いのはあの少年のはずだ・・・・・・。私は悪くない!」


 もう頭の中はずっとパニック状態でした。

 私は、自分を落ち着かせる為だけに理屈を全部すっとばし、少年がすべて悪いそう考える事にしたのです。


『ソウダ。悪イヤツハ殺セ・・・・・・。殺シテシマエ!!』


 私の後ろから男の子のような声でそんなセリフが聞こえました。

 そのセリフがしたとたん私は急に冷静になったんです。おかしいくらいに突然で、いまなら何でも出来てしまいそうな気さえした程。


「あいつ・・・・・・、を殺さないと・・・・・・」


 私は台所の流しに出しっぱなしになっていた包丁を手に立ち上がりました。

 でも、ちょっと変だったんです。

 だって、私は今まで包丁なんて触った事もなかったのに、不思議な事に初めてな感じがしなかったから。


「あ、いたいた。もういい加減この指輪を付けさせてもらえないかなー?もうこの町でやってないの君だけなんだし」

「みぃーつけた・・・・・・」


 私は躊躇することなく包丁を振り回してました。

 今手にしているのはいつものみょるにーるじゃなく、刃物だと理解しているはずなのにです・・・・・・。


「ちょっ!そんなの当たったらただじゃすまないんだけどっ!!」

「ころす・・・・・・。ころすころすころすころす!!!!」

「怖っ!!」


 ただ、何度包丁を振り回してもすべてかわされてしまってました。

 まぁ、それも仕方ない事だとは思います。なんせまともに当たると死ぬかもしれない訳ですし全力で避けますよね?それに元々私の運動神経は良くないので・・・・・・。

 その運動神経の悪さと包丁を初めて手に振り回していた、その無理が原因だったんでしょう。


「ぐべしっ!」


 私はバランスを崩し前のめりに倒れてしまったんです。


「よいしょっと。女の子相手に手荒な事したくなかったから、まわりくどいやり方したのになぁ。結局こうなるなんて」


 私の背中に少年がのっかり、後ろから腕を掴まれてしまってました。

 もうこうなると、どう暴れようが焼け石に水でどうしようもありませんでした。

 抵抗の甲斐もなく私はあの指輪を付けられてしまったんです。


「あばばばばっばばっばっばばばばっばばっばーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

「え・・・・・・?なんかすごいダメージが出たような・・・・・・」


 もの凄く痛かった。

 私の記憶はそこで途切れました。


 次に目が覚めた時にはもう次の日の昼で、私はリビングのソファに寝ていたんです。

 そして、私は涙を浮かべ泣きそうになってました・・・・・・。

 なんせ同じリビングには、何度もいて欲しいと願った父さんと母さんがいたんですから!


「おお!良かった目が覚めたみたいだな」

「まったくよ。あまり心配させないで頂戴」

「父さん母さん!!」

「うおっ!どうしたんだアンノン?」

「もう離婚なんてしないでよっ!私、ちゃんとするから!引き篭もり卒業するから!だからどこにも行かないで一緒にいてよっ!!」


 私はもう泣きながら言ったんです。真面目に本気で。

 ですが・・・・・・。


「あはははっ!しないしない。離婚なんてするわけないじゃないか」

「え・・・・・・?」


 私はなぜか笑われてしまい、その反応が予想外すぎて涙が引っ込んでしまっていた。


「いいかい?あの離婚の話は全部演技だったんだよ。しかし、あのアンノンが引き篭もりをやめてちゃんとするって言ってくれるなんてなー」

「まったくね。どうなる事かと思ったけど、あのレオルとか言う少年の話に乗って正解だったわね」


 な、なんですとっ!!!!

 くそーーー!!やっぱり全部仕組まれてたんじゃない!!あのガキめーーー!!!!


「実はな。父さんが頭のない鎧役だったんだぞ?迫真の演技だったろう!」

「私はブタの演出と回収をやったのよね。首の切断面が引き千切られたように見えるように、頑張って包丁で加工したり、卵の白身を使って鼻や口から液体が垂れてる様にみせかけたのよね。でも思った以上に血の方が垂れててね、血溜りになった時は痕が残らないかって焦っちゃったわ」

「だな。父さんが部屋のドアをガンガン叩いてた後ろで、母さんがブタの首の回収に手間取ってたのを見てこっちまで焦ったもんだ。で、その後は家の外で待機してたんだよ」


 こ、この両親は・・・・・・。あれむちゃくちゃ怖かったんだからね!!


「そういえば、あの黒いもやのような人型なのはどうやったの?」

「そんなのやった覚えがないわね」

「はい?」

「もしかしてアレじゃないか?家を買うときに聞いた話の」

「んー、でもアレってただの噂でしょう?」


 なんか嫌な予感がしつつも一応聞いてみたんです・・・・・・。


「・・・・・・どゆこと?」

「アンノンには言ってなかったが実はあの家、事故物件でな。黒い人型の悪霊が出るって噂で格安だった家なんだよ」

「えっ・・・・・・」

「ただの噂とは思ったけど、一応霊能者に見てもらったのよね。そしたら私達は幽霊とか寄せ付けない体質らしくて大丈夫でしょうとか言われたんだっけ」


 それ、私が生まれる前だよね・・・・・・?


「ま、元々父さんも母さんも幽霊とか悪霊とか信じてなかったんだけどな。懐かしいな」


 もしかして、一時的ではあったけど両親が家を離れたから悪霊が動き出した?

 んで、幽霊を寄せ付けない体質を私は受け継いでない?

 じゃぁ、あの時の私はほんとに取り憑かれていた・・・・・・?


 つまり、あの少年にはむしろ助けられた事になる?


 だとすると、悪霊から助けてもらった事の感謝が3割くらいにはなるといいますか、やっぱり恨みが7割ほどあるといいますか、結局ぷらまいデストロイーー!!といいますか・・・・・・。


 次ぎ会ったらあの少年を今度は料理してやろうと思いましたっ!


「今度包丁の使い方教えてくれない?」

「料理を覚えたいのね。いいわよ教えてあげる」


 私は笑顔で答えます。


「うん。ちょっと人間をね」

「・・・・・・え?」


 あと、ついでですが悪霊とか怖いので早めに一人立ちして、引っ越そうと今は考えてたりします。

 これが私と指輪を持って迫ってくるアレな少年との引き篭もり戦争なのでした。

 戦争は言いすぎかなと思いますが、私的にはそんな気分だったんです。

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