第六話 噂の真相
修二から先に学校に行くというメールが届く。今日は朝練がない日なのに……?
アレか。彼女と一緒に登校しているのか。
修二のクセに、リアルが充実し過ぎている。
単独で自転車をこぎ、切ない風を感じながらの登校となった。
教室に入ると、誰かが俺の席に座っていることに気づく。
「誰だって、飯田、お前か」
「おう、トム、グットモーニング」
「なんで英語なんだよ」
「トムだから」
このやり取りを、今年に入ってから何回したか。
近くに白川さんのグループがいて、クスクス笑われてしまった。
「おい、トム、珠玉のネタが受けているぞ」
「飯田、お前が笑われているんだよ。いいから退け」
「待て待て。話があるんだ」
「なんだよ」
「ここじゃちょっと」
白川さん達のグループの視線をチラチラ感じる。
ホームルームまで十分あるので、廊下に出て話をすることにした。
窓を開けて、窓枠に頬杖を突きながら飯田は話し始める。
「なあ、お前んところの神社、今、ヤバイんだって」
「お前、どこでそれを聞いたんだ!?」
「バイト先にいる一年の女子から聞いたんだ」
やはり、小狐達が言っていた通り、うちの学校の一年の間で噂になっているようだ。
「ヤバイって、具体的にはどういうことなんだ?」
「なんでも、トムん家の神社で願い事をすると、願いを叶えた報酬として、祟られてしまうって」
「はあ!? んなわけないじゃん!!」
自分でも思っていた以上に、大きな声がでてしまった。飯田も驚いた顔をしている。
「いや、噂だって」
「うん、ごめん」
「いや、いいけれど」
なぜ、うちの神社で願いを叶えると、対価として魂を奪われるといったオカルトめいた噂が流れているのか。
また、稲荷神の呪いとか、デタラメな話が大きくなって広まってしまったのか。
わからない。
「なんで、こんなことに……」
「ほら、アレだ。前から問題になっている行方不明事件があるだろう?」
「ああ、なんか、あったな」
神隠しのように、姿が消えてしまったらしい。
現在も見つかっておらず、不気味な事件として今も強く印象に残っている。
「その行方不明者二名が、事件に巻き込まれる数日前に稲荷神社にお参りしていたって噂が広まったんだろう」
「ええ~~、関係ないし」
「まあ、そうだよな」
そういえば先月、父に話を聞きに警官がやってきたという話を聞いた。
行方不明者は若い男性が二名。父や他の巫女に覚えはなかったらしい。
「でもなんで、それの情報が漏れたんだろう?」
「普段は事件なんて起きない、平和な町だからな。神社に警察車両が数台停まっていただけでも大事件なんだろう。ちょっとした噂が、大きく広まるなんてよくある話だし」
警察車両が押しかけているところを一年の女子が見て、近々に起きた事件と関連付ける。
それが、行方不明者が出たのは、稲荷神の呪いだ、なんて話になったのか。
「だとしたら、しょうもなさすぎる」
「だな。まあ、なんだ。朝から悪かった」
飯田はそう言いながら、俺の背中をバンバンと叩く。
「いや、参拝客が減った原因を探っていたから、なんだかスッキリした。もう少し詳しい話を聞きたいんだけれど、飯田の知り合いの一年の女子に話を聞ける?」
「え!?」
「バイト仲間なんだろう?」
「そうだけど」
「連絡先知らないの?」
「いや、知っているけど」
「だったら頼む。一生のお願い!」
「いや~、でも、一回も連絡したことないし」
「今度、肉まんとあんまん、ピザまんを奢るから」
「じゃあ、肉まんは二個」
「はあ!? 対価高すぎだろ」
「女子に連絡する勇気と引き換えだったら、安いもんだろ」
「わかったよ。肉まん二個と、あんまん、ピザまんな」
「よし、乗った。今すぐ連絡する」
「仕事早いな。じゃあ、頼む」
「おい、ちょっと待て、水主村氏。そこにいてくれ」
「え、メール送るだけだろ?」
「緊張するから」
飯田はスマートフォンを取り出し、両手でポチポチとメールを打った。
「え~っと、同じクラスのトムが、稲荷神社の噂について知りたいから、昼休みか放課後に教えてくれないか……送信っと」
「飯田、サンキュ!」
「どういたしまして」
「いや、そこはユアウェルカムで返せよ」
「ネタをしている余裕なんてないんだよ」
そんなやり取りをしていると、チャイムが鳴った。
「おい、水主村、飯田、そこで何をしているんだ! 教室入れ!」
「ゲッ、西川!」
「早く席につかないと!」
慌てて教室に入り、席に着いた。
西川の俺達の名前を呼ぶ叫び声が聞こえていたのか、またしても白川さん達のグループにクスクス笑われてしまった。




