第三話 エンキリと学校
さて、これからは登場人物も増えていく予定です。前書きではメッセージや評価をしてくださった人たちにお礼をしていきたいと思っています。
三、
よいこのみんなぁ、霧耶お兄さんだよ〜?前回、霧耶お兄さんが初仕事を成功させたことを覚えてるかなぁ?前回の仕事の結果だけど…………どうやら彼女は他の土地の人だったようで……都会に戻ってしまいあまり意味がなかったみたいだ〜……ああ、名前ぐらい聞いておけばよかったなぁ………今のところ閑古鳥という新種の鳥が霧耶お兄さんの家に来ているようでひっきりなしに鳴きっぱなしさ……いつまでこんな生活、続くんだろ?
―――
家にいても暇だ………というわけで、学校に行ってみよ〜!……学校の生徒たちを顧客にしちまえばいいだろう。この転校はもとから決まっていたことだし、少々予定が早くなっても大丈夫だったようだ。しかしまぁ、まだ四月だ。転校生はおかしい存在である。
「え〜この季節には珍しいが転校生を紹介しよう。率尚加高校からやってきた縁切霧耶君だ。みんな、仲良くするように」
「縁切霧耶といいます。これからよろしくお願いします」
できるだけ他人を見ないようにして後ろにある小さな黒板を見ながら話しをすることにした。別に花も恥らうお年頃というわけではない。この教室の中にちょっとばかり心してみないと
「うわっ!?」と叫んでしまうような縁の糸を持つ相手がいるかもしれないからだ。転校初日からぎょっとしていたらおかしい人物だと思われる可能性がある。
先生はどうやら堅苦しい先生のようで、俺の簡素な挨拶に
「好きな食べ物とかは?」などとつっこんでこなかった。
「縁切君の席は………ああ、すまんね………今日、風邪をひいている人の席に座って欲しい………明日までには君の分の席をその隣に配置しておくからね」
指差された席は窓から一個離れた席だった。まぁ、無難な場所だろう。奇異の目で……そりゃそうだ、背中に唐草模様の竹刀袋をしょったままだからな……見られていることにもめげず、俺はその席に座った。隣にはちょっと暗めの印象を受ける女の子が俺をチラッとだけみてきたので俺は
「ニカッ」というさわやかな顔をしてあげたのだが…………相手はおびえたような目をして俺からあっという間に目をそらした………どうやら、この人とはお友達になれないようだ。
「ん?」
ちらりと隣の女の子を見たのだが………なにやら不穏な縁の糸を見たような気がした。今はまったく見えていないし、気のせいだったかもしれないな………ま、いいか。
―――
お昼休み、俺の周りには当然のように人だかりが出来た。主に男子なのがしょうがないとは思うが………女子が集まってくれないのは縁がないからだろうか?
「へぇ、そうなんだなぁ〜」
「ところでさ、霧耶、お前自分の股間を見てみろよ?」
「うわっ!別世界につながる扉が全開!?これが奇異の目の正体か!?」
「俺さ、お前見てこいつは大物が転校してきたって思っちまったぜ?」
「なるほど、これじゃ縁があろうがなかろうが女子が近寄ってくるわけないな」
「霧耶、お前がお馬鹿さんなのはよぉく理解できたぜ♪」
まぁ、こんな感じで一応は打ち解けることが出来た。これに関しては問題ないので省略させてもらおう。問題が起こったのはこの後だった。扉が開いてたことも問題だけどな。
―――
家に帰ろうとすると何か書き物をしている一人の男子生徒の姿が映った。
「ん?」
名前は覚えていないが俺に話しかけてきてくれた一人だったと思うのだが………その人物からは物凄い運命の赤い糸が見えた。
普段は小指から伸びている程度なのだが………それは彼の体をがんじがらめにしており、三本ほどの糸が混ざって一本になっているのだ。さらに一メートルほどの太さの一本の赤い糸が………いや、もう柱といったほうがいいかもしれないな………彼の背中から伸びている。なに?これ?生まれてはじめてみたよ………運命の赤い糸っていうより…………運命の紅い意図?
「あ〜ごめん、そこの君………」
「え、ええと………縁切君何かな?」
放っておくのもなんだか恐かった(ぶっちゃけ、運命の赤い糸を持っていてうらやましかった)ので話しかけることにした。むぅ、一人に対して一本が基本の赤い糸を何故この人物はこんなに持っているのだ?全世界のもてない男がこの人物の赤い糸を見たら怒り狂うに違いない。俺?俺は勿論見えるから嫉妬に狩られてますね♪
「わりぃけど名前忘れちまったんで教えてくれないか?」
「ああ、名前まだいってないよ?」
「………」
気まずい沈黙の後………
「僕の名前は天道時時雨って言うんだよ。時雨って呼んでかまわないから………」
「なるほど、時雨というのか………なぁ、ちょっと時間あるか?」
俺はその時雨という男子生徒を呼んで廊下に出た。そこへ、一人の女の子がやってきた。
「時雨、早く帰るぞ?」
「え、うん………」
「………」
そして、俺はその人物を見てぎょっとした。
赤い糸が………いや、赤い柱がその女の子につながっているのだ。
ああ、なるほど………この人が運命の相手なのか?それにしてはちょっと太すぎやしないか?俺のあれより太いなんて…………まぁ、そんなことはどうでもいい。
「こいつは誰だ?」
「ああ、この人は今日この高校にやってきた縁切霧耶君」
「………どうも」
しっかしまぁ、数奇な人物だな、この天道時時雨とやらは………ぼさっとしているような雰囲気も受けるし、甲斐性無しのようにしか見えない。初対面の相手に少々失礼かもしれないが………まず真っ先に詐欺師に目をつけられそうだ。俺だったら狙うね♪
「時雨、変なことで呼び止めてすまなかった………どうやら俺の思い過ごしだったようだ」
「え?うん………僕は用事が出来たから………じゃあね………何か困ったことがあったら聞いてきて構わないよ」
そう言って時雨とその女の子は去っていった。
「ううむ、世の中には想像を絶するような人物がいるんだなぁ………つ〜か、うらやましいよなぁ、あんなに赤い糸があるなんて………黙って切っとこうかな〜」
「ええと、すいません………」
一人ぶつぶつ言っていた俺の耳に一人の女の子の声が入ってきた。振り返るとそこには俺が友達になれないと確信したあの暗めの女の子が立っていたのだ。声が鈴のようだ。
「えと、何かな?」
「あの、お兄さんから聞いたんですけど………あなたが人と人との縁を切る者って言っている霧耶さんだったんですね?」
「ああ、そうだけど?」
どうやらこの相手は俺の知り合いの妹さん………か何かだろうか?相手は興奮してきたのか胸の前でグーを作ると俺に詰め寄ってきた。
「ええと、いくら出せば縁を切ってくれるんですか?」
「え、え〜っと………」
ここで肝心なことに気がついた。初歩的なミス………つまり、値段を決めていなかったのだ。貴族相手には法外な値段をふっかけたりするのが常道なのだが………
「え、えっと………」
「いくらです?」
気がつけば廊下の隅に追い込まれており………相手は俺を下からねめつけている様な感じだ。なんだか新しい世界に目覚めちゃいそうだ。はたから見たら巷で今噂のかつあげという奴に違いないと思うだろうな。しかし、俺の中の灰色頭脳にまるで高化学兵器を次々と避けるような超能力パイロットがたまにおこす
「ぴぴーん」という青い光が一つ差した。
「え、えっと………俺の友達になってくれれば今回はタダ」
「わかりました!今日から友達ですね?」
「あ、ありがとう………」
ま、まぁ………見た目と中身って違う人が多いって聞くけどあれって本当だったんだな。




