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第二話 始まったエンキリの生活

せかさん、こんなに早く感想、ありがとうございます。嬉しかったです!今回はエンキリのお仕事のお話しです!

二、

 さて、一つここでおさらいをしてみよう。

俺の名前は縁切霧耶だ。

エンキリ一族の末裔にして自分の許婚との縁を切り、さらには女の子との縁まで切ったという物凄い堅物主義者だ…………まぁ、女の子との縁が切れたことを俺自身が知るためには少々実力不足(補足だがエンキリは自分と他者との縁を見るには相当の実力がないといけない)で無理だったのでじいちゃんに聞いたところ見事に

「縁なしじゃ」といわれてしまった。つまるところ、これではいけない!早く孫の顔が見たい!と両親が思ったおかげで俺はとりあえず女の子と親しくならないといけなくなったわけである。

―――

「そこのお姉さん、俺と一緒に俺の子を探す素敵な冒険してみない?」

「冒険?」

「そ………」


ぶすり!!


 相手はチョキで……お、俺の鼻の穴に指をつっこみやがった!?なんつ〜女性だ!?

「…ふがぁ!」

「冒険ならちょうど終わったわ。あんたの汚い鼻の穴に手をつっこんでやったからね………お宝はあんたの汚い鼻水よ!」


ばしん!!


 さらにほっぺを叩くと綺麗なお姉さんは去っていった。ううむ、どこがいけなかったのだろうか?こりゃ、女の子の友達を捜すのは無理ではなかろうか………

「なりふり構っていられねぇな………」

 昨日ここにやってきてまだ高校にはいっていない。学力云々………というより、この一週間の間はエンキリとしての顧客を探さないといけないのである。さらに、今日の朝に届けられた手紙(両親から)を読んでぎょっとした。俺に残された期間は後一週間!手紙に書かれていたことは

「後一週間後にあなたの第二の許婚を宗家に呼ぶので誰もいなかったら帰ってきなさい」ということである。誰よりも自由を愛する俺だ。そんな俺がこのまま自由になるには………女友達を作り、両親に知らせることである。そうすれば許婚の件は取り消しになるだろう。

 道行く姉ちゃんたちに声を掛けてきたのだが………誰も引っかからない。そりゃそうだろうなぁ、平日の昼下がり、こんな暇そうな人間に付き合おうとするなんて人のいい人間がほいほいと歩いているわけない。いたとしてもわがまま娘だけだ。

「けどなぁ……それじゃ………次で百戦連敗だし………よし、最終手段だ!」

―――

 俺の目の前にいるのは一人の男性だ。やっきになったわけではない。

「エンキリのあなたが縁結びですか?」

「ええ、そうです」

 そう、俺の目の前にいるのは縁結びの神様を奉っている神社だ。わらにもすがる思いでここにやってきた。元来、縁結びの神様とエンキリは敵対するような感じなのだが………さっきも言ったとおり後がないのだ。敵に頭を下げるのも構わないということなのだよ。

「もっとも、ここの神主さんが結婚の告白百五十連敗だからなぁ………ご利益ないかも」

「失礼な!今度は大丈夫です!」

 そういって神主さんは俺に必勝祈願をしてくれた。まぁ、ここの神主さんとは結構長い付き合いだ………ちなみに以前俺がいた高校の先輩だった。

「さ、霧耶君………これで大丈夫ですよ。どんな相手でもあなたにめろめろのはずです」

「本当かなぁ?そんなことが出来るのなら先輩、すぐに結婚できてますよね?」

 先輩の縁は見事に女性と縁がない………というわけでもなく、逆に縁が多すぎる。先輩は優柔不断な男だから浮気をしていたりしてそれが原因でふられているのだろう。逆に運がありすぎるのも問題だからな………

「大丈夫!僕を信じなさい」

「まぁ、実力は信じますよ。ありがとうございます。無料でしてくれたお礼として誰かとの縁を切ってあげましょうか?ああ、親とは駄目ですよ?それやると俺、やばいですから」

 本当はただで縁を切るのはいけないことだ。なぜなら、無料でエンキリをしていると後々厄介なこと(人は不幸要素だけの断ち切り願望多し。以前説明した通り)になるからだ。

「そうですか、それならちょうどあなたにお頼みしたい人がいるのですよ………今、ちょっとでてますからいないので………宗家に行くよう伝えておきますよ」

「ああ、それならここにくるようにいっておいてください」

 俺は自分の住んでいる家の住所を渡した。

「おや、こちらに引越ししてきたのですか?」

「まぁ、ちょっと色々とありまして………」

「ははぁ、どうせお客さんの切ってはいけない縁を切ったんでしょう?」

 鋭いが………はずれである。

「違いますよ」

「そうですか………今、顧客をさがしているようですが………女性は物で釣るとよく引っかかると思いますよ………ま、がんばってください。他にお客が来たのでこれで……」

 そういって先輩は新たにやってきた参拝客のほうに向かっていった。

「………なるほど………確かにやってみる価値はありそうだ………」

―――

 俺は今、机に座っている。そんな俺の目の前を一人の女性が通りかかる。

「ああ、そこのお嬢様……(ちょっとやりすぎたかな?)」

「何?私のこと?」

「……そう、そうです(嘘!?引っかかった!)あなた、ストーキングされてませんか?」

「え?あ、あなた占い師か何か?」

 女性の顔色が変わった。

「今ならその不幸な縁、私が断ち切ってあげましょうか?」

 付け髭をつけ、サングラスをしている。はたから見るとめちゃくちゃ怪しいのでもしかしたら誰かが警察に俺のことを連絡するかもしれないが………一人でも顧客を作っておけば問題はないだろう。そのまま親しくなって………ニヒヒという展開も考えられる!

 頭の中でそんな計画を立てていると

「ほ、本当に切ってくれるの?」

「ええ、そうです………」

「いんちきじゃないでしょうね?」

 やはり、警戒深いか………落ちない城を落としたときは嬉しいからがんばるか……

「そう思いになるなら今回は無料です。私の力をパンチラのように見せましょう!」

 無料と書いてタダと呼ぶ………どっかの小説のタイトルみたいな言い草だが……女性はタダという言葉を聞き逃さなかった。さすが先輩のお言葉だ!

「わかったわ………手を出せばいいの?」

「いいえ結構です。しかしまぁ、あなたはストーカーさんに大事にされているのですね?」

 集中して見えるストーカーと思われる相手との縁の糸は結構太い。もうちょっと太かったら俺では手に負えなかったかもしれないな………人の思いというものはそれほどすごいものなのだ。まぁ、今回の場合は太いおかげで探しやすかったけど。

「……あなたはただ、目をつぶっているだけでいいのです」

 相手が目をつぶった隙に俺は日本刀の柄を取り出して横に一閃する。糸は見事に断ち切れた………まぁ、今回はあっさりとしてくれていたおかげで助かったな………この土地での初仕事としては上々といったところか?地味すぎて面白くもないな……

「これで………終わりです」

「え?もう?」

「ええ…………まぁ、はじめは嘘だと感じるでしょうが………これは事実です。そうですねぇ……事実だったらあなたの知り合いの女性に私、エンキリのお話をしておいてくださいね……ではまた……」

 俺の視界にちらりと警察の姿二人確認できた。そして、怪しい男がちょうど出てきて助成が一人の警察を捕まえてあの男にストーキングされたといってその場で取り押さえられる………とまぁ、こういうのが縁を切った効果だ。二人とも警察と縁が出来たというわけである。しかしまぁ、それにしても初めてにしてはかなり地味な仕事だったなぁ………

 俺は遂に始まったエンキリ生活に嘆息しながらも帰路についた。


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