最終話:エンキリと縁
今回で終わりになりました!皆さん、応援ありがとうございました!
最終話
自由とは何か………俺はそれを考えたことがあるのだが、結果として出てきたものは『自分自身にとって都合がいいこと』だった。
それを他の友人………依然いた場所のだが………にどうだろうかと伝えたところ、それは違うといわれてしまった。あいつに言わせるならそれは『勝手気ままにわがままを押し通しているだけ』ということらしい。それなら自由とは何なのかと俺はそいつに尋ねたところ、そいつは『少しの束縛があってこそ、自由は存在する』と言っていた。
――――
午後二時、約束の時間帯にやってきた人物は一人の男子高校生だった。
「あれ?時雨じゃねぇか?」
「ああ、やっぱり霧耶君だったんだね」
覚えているだろうか、天道時時雨という少年を?俺?俺はきちんと覚えてますとも………
「姉さん、時雨が依頼者なのか?」
「そうよ、あんたなら学校でこの子の縁の糸を視たでしょう?」
「まぁ、みたけどさ………」
今も見えているのだが、近くにあの小さい女の子も一緒にいるだろう。姿を見せていないところを見ると只者ではないはずだ。
とりあえず時雨を仕事場である応接間に連れて行き、お茶を焔華に出してもらって俺は茶菓子を準備する。
「………霧耶さん、あの時雨って人只者じゃないですよ?幾重にも常任が持っていない縁を持っている気がします」
高級和菓子店の箱を取り出してやっぱり戻している優に俺は告げる。
「おいおい、きちんと出せよ?………やっぱり、あれはおかしい縁だよなぁ………けど、仕事上詮索禁止だから時雨が何者かは調べないほうが身のためだろうな」
「そうですね」
エンキリ一族はプライベートなことなどに口を挟んだりしないのが当然だ………もっとも、どこの会社もそんなもんだろうが、ことエンキリ一族は勝手に相手のことを調べようとするならばマジで首が飛ぶか行方不明になっちまう。
「きっと、節佳さんはあの縁の糸を切れなかったんでしょうね?」
「………どうだろうな、相当あれは骨が折れそうだ」
骨が折れるどころか、自信が折れちまいそうだと思ったのは内緒だ。
―――
「で………時雨の依頼をきちんと聞いてなかったな」
「ああ、そうだったね………縁を切る一族、エンキリ………そのエンキリである君に依頼したのは妹のことなんだ」
「妹?お前のことじゃねぇのか?」
「え?違うよ」
てっきりこのぶっとい縁の意図のことかと思っていたのだが、違ったようだ。けどまぁ、実は時雨の妹さんも時雨以上にぶっとい糸があるかもしれないからな。そっちをきってもらいたいのかもしれないな。
時雨の表情は真剣そのもので、張り詰めた空気はただそこにあるだけで世界を止めてしまうのではないかという錯覚を俺に与えてくれた。
そして、時雨の口が重く開かれる。
「………実は最近ね……うちの妹にやたらと男が話しかけてくるんだ!」
「ええぇえぇい!!これまでのちょっとしたシリアスな空気を返せ!!!」
「霧耶さん!!ちょっと何してるんですか!!」
「師匠!丸腰の相手に襲い掛かるのはどうかと思います!!」
俺は焔華と優に押さえられて動けなくなって、姉さんはずっと静かにお茶をすすっている。
「…………で、まとめると依頼内容は?」
「簡単さ、うちの妹の男の縁を妹に内緒でスライスしてほしい……ぎりぎりのところまでね」
「ふぅ〜んそうかい………ところで、今日妹さんはきているのか?」
「来てないけど………やっぱりつれてきたほうが良かったかな?」
つれてきたら内緒じゃなくてばれちまうだろうに………とぐだぐだ言っている場合ではない。俺に出来ないことはない!報酬さえもらえば俺の力で何とかして見せるぜ♪
「…………というわけで姉さん、力を貸して?」
「さっきの文と逆のことを言ってるわよ………と、いいたいところだが今回はアドバイスをあげるわ」
「アドバイス?」
あな珍し………あの姉さんが俺にアドバイスをくれるなんてこれは天変地異の前触れではないか?
姉さんは立ち上がって歩き、とあるところで立ち止まった。
「…………焔華か優を使えばいいじゃない」
「………それ、本気?」
「本気本気………」
顔がにやついているところを見ると怪しいものだが………これはしょうがないだろう。
「………あの、師匠………どういうことですか?」
「えっとだな、エンキリが縁を見ることができるのは知ってるだろ?それで、ある程度の実力者なら遠隔に相手の縁を切ることが出来るんだ。けどな、それをするにはその相手と知り合い……つまり、縁を少なからず持ってないと切るのはちょっと難しいんだよ」
「しかし、拙者も知りませんよ?」
もっともなことを言う……だが、俺の話は終わっていたわけではない。
「ああ、それは知ってる。だからだな、縁切りってのは縁を強く結ぶ相手がいれば力を増すことが出来るんだよ。エンキリが切ることの出来る縁の糸の太さは実は決まっててな、それは自分が結んでいる一番太い縁の糸と同じ太さが限界なんだよ」
「………?」
理解して無いだろう………この顔は………まぁ、簡単に言うなら
「俺のことを信用していると思われる人物がいてくれれば俺はエンキリとしての力を高められるってことだ」
「ああ、なるほど………それなら、拙者に任せてください!」
すっくと立ち上がって胸を叩く。う〜ん、実に頼もしい味方なんだが………姉さんがにやけているのが非常に気になる。
「そんじゃ、はじめますかね………焔華、悪いが俺の左手を握っててくれないか?これから、ずっと、ずっと俺のことだけを考えていてくれ」
言っていてかなり恥ずかしい台詞なのだが、こうでもしないと俺は力を増すことが出来ない。
「承知しました!」
既に差し出していた俺の左手を焔華は掴み、目を瞑る。きっと、精神を集中しているのだろう。
「霧耶君、顔が赤いよ」
「うっせぇ!………じゃ、はじめるぞ………」
俺も目を瞑り、時雨の縁の糸をたどってゆく…………こんなことをめったにしないのだが今回はいたって簡単に時雨の妹と思われる人物の縁の糸を発見できた。
「さて………と、まだ見ぬ時雨の妹さん、悪いがこれもお仕事なんでね」
俺は右手を振りかぶってその縁を断ち切った………
――――
エピローグ
「ふぅ、終わった終わった………」
「見事なものだったわよ、霧耶」
「…………疲れたけど………時雨、家に帰って妹さんをよく観察してろよ?じゃ、ちょっと眠るから………」
「師匠!?」
少年は膝をつき、隣にいる少女に支えられる。
「疲れただけよ…………さ、時雨君、言われたとおりに観察しておいてあげてね」
「わかりました……じゃ、失礼します」
依頼主は姿を消し、残った人たちはため息をついて立ち上がる。
「………節佳さん、ちょっと私は外の空気を吸ってきます」
少年の親戚の少女も姿を消し、その空間に残ったのは三人となった。
「…………焔華、私の弟子にならない?そっちのほうがさっさと強くなれるわよ?」
少年の姉は近くにいる少女にそう告げる。
「……いえ、まだ拙者は師匠の下で励みます」
「振られちゃったか………じゃ、頼りない師匠を助けてやってね」
少年の姉はそういって去っていった。
眠っている少年に少女は話しかける。
「師匠、いずれ拙者は師匠の隣に立って見せますよ」
少女の静かな決意は眠っている少年の耳に届いただけだった。
〜Fin〜




