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ギレイの旅  作者: 千夜
6章
176/561

フロアキュールの異変

「これだけの陣だ。作るには相当な人手と時間が必要だっただろう」

紙に、その形状を正確に描き写しながらアーデスが言う。

「その割りに、消す作業は雑。相当慌てたようだな、これは」

別の場所にも残った陣の断片を見つけ、コルロは靴の裏でその周囲を擦る。よりはっきりとその陣が姿を現した。

大勢の人の足で踏まれて判別しづらいが、竹箒か何かで擦った跡がある。

これをやった者は、魔力での完全消滅を諦め、見た目だけでも目立たないようにしたのだろう。

思い浮かぶ疑問は皆、同じ。一体誰が、何のために儀式魔法を使い、この場所にドラゴンを呼び出したのか。


「復元しますか?」

消え残ったその陣を見つめてヤンが聞く。

一部分のその陣が薄っすらと輝きだす。走るようにその欠片から光が伸び、魔法陣の形が縁取られる。

「やってみるか?」

楽しいものを見つけたように、笑いながらアーデスは言う。

「おい、今のと再戦する気か!」

コルロは実弾、と言う物をアーデスの側頭部こめかみに向けて撃ってみた。

見事に透明な障壁に跳ね返された。アーデスがコルロを振り向きゆっくりと剣を構える。


「んん? 俺が悪いって?」

頬を引きつらせてコルロは言う。

あれだけの強敵と戦っておきながら、余裕のあるメンバーに、よもや味方内での臨戦態勢かと思われた、その時。


 ビーッという機械音が広間に響いた。

『ねぇ、なんかフロアキュールおかしいんだけど――』

儀礼の声が、ワルツの持つスピーカーから流れる。


『ばかな、人が……』『おい、見ろ……』

と複数人の男の小さな声がスピーカーから流れた。

『げっ、まだいるのか』

儀礼の面倒そうな声。


『おいあれ、通信装置じゃないか、まずいぞ』『壊せ!』

少し大きくなった男たちの声。儀礼へと近付いたようだ。

『うわっ、……』

ブチッ ザザザザザ……

マイクを壊されたらしく、ノイズだけがスピーカーから聞こえてくる。


「おいっ、ギレイ! お前何やってんだよ」

ワルツは思わずスピーカーに向かって叫んだ。

「落ち着け、ワルツ。こっちの声は向こうに聞こえない。それよりすぐにフロアキュールに戻るぞ!」

アーデスが言い、5人を白い光が包んだ。


********************


 フロアキュールに戻ったアーデス達。

転移先の、儀礼がいるはずの古人解析装置の研究室はもぬけの殻だった。

研究室を囲むように、二重に張ってあった結界と障壁は破られているが、室内は軽い戦闘があったことを窺わせる程度に荒れているだけ。

寝台の様な解析装置自体に張ってある障壁は破られていない。

全員が部屋の中に散り手がかりを探す。


「これは……内側から開けたのか?」

眉をしかめてアーデスが解析装置のロック部分を確かめる。

「おいっ、儀礼の靴が落ちてる!」

解析装置の横に落ちていた靴を拾いワルツが叫ぶ。

「解析データ、そのまま残ってるな。ブッ、あいつ寝てたのか? あん中で。しかし、これだと40分位しかあの中にいなかったことになるぞ」

操作パネルを確かめ、コルロが言う。

「丁度、俺達が戦っていた時間、か」

解析装置の脇で、壊れたマイクの破片を拾いアーデスが言った。

「外の障壁に攻撃された途端に、解析装置の内部温度が上昇してる。何だこれは?」

データを確かめながらコルロは驚く。


「扉をぶち破ったのは魔剣の類だ。この壊れ方、魔法やハンマーではない」

研究室の扉を調べ、バクラムが言う。

「フロアキュール内に、ギレイさんの反応がありません。探索魔法にもかからないなんて、厳重な結界の中にいるとしか思えません。何者かに、攫われたんでしょうかっ!?」

焦ったように、ヤンは目元に涙を浮かべる。

「私、すぐに助け出せるように待ってるって、儀礼さんに言ったのに……っ」

全員が動いたその間は1分ほど。


「アーデス様、ギルド内が!……っアーデス様! 研究室が!!」

涙を堪えながらも遠視魔法で手がかりを探していたヤンが、驚いたように叫んだ。

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