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ギレイの旅  作者: 千夜
6章
174/561

ドラゴンとの戦闘

 強大なドラゴンを前にして、アーデスのパーティ達は話しながら戦っていた。

「いやいや、あいつなら喜んで聞くだろ、ドラゴンの話。むしろ連れて来なかったことを怒りそうだな」

笑いながら、コルロは言う。その手には先程手に入れた儀礼製の銃。

性能を試すように、巨大なドラゴンの額の目を狙い撃ちしている。

そこはドラゴンの魔力が集中している場所であり、ダメージを与えにくい場所であるが、急所でもある。

引き金を引けば小さなとげのような物が発射され、着弾地で魔法が発動される。

威力が上がっているだけではなく、その発動した魔法もコルロの意思であやつることができた。

あくまでも今までと同じ、コルロの扱う魔法である。


「狙いが全然違うな。外れる気がしねぇ」

避けるドラゴンの黒い瞳を軌道修正して追うとげを見て、楽しそうにコルロは笑った。

銃による攻撃と同時に、腕輪を使ったコルロの特性、連撃魔法をも使うことができる。単純に手数が増えたことになる。

さらに銃で撃つ魔法は、巨大な魔力が小さなとげに込められているためか、ドラゴンの障壁をつき破る。そして、その内側で魔力を爆発させるのだ。

普通の魔法ではいくら強力でも、障壁とぶつかって威力を減らされるというのに、この銃はそれをほぼ無効化させている。

案外、ヤンの障壁でも突破できるかもしれない。本当に恐ろしいものを作る奴だ、とコルロは笑う。


「いや、もっと恐ろしい奴がいた」

小さな声でコルロは言った。

コルロの目の前で、ドラゴンの障壁を無視するかのごとく切り裂き、同時に巨大なドラゴンの右腕を切り落とした剣士。

ドラゴンが怒りに満ちた咆哮を上げる。

「こいつはもらっておこう。ギレイの後にでもあの装置に放り込んでみるか」

切れ落ちたドラゴンの灰色の腕を拾い、楽しそうにアーデスは口の端を上げる。


「お前は、本当にそれと、あいつの扱いが同じなのか」

呆れたようにバクラムが言った。

 そのバクラムの持つ大槌がアーデスの切り裂いた障壁から、此処ぞとばかりに振われる。

黒い金属の塊が、さらなる黒い霧をまとって当たれば、ドラゴンの硬い鱗も簡単にひしゃげ折る。

 グギャオー!

ドラゴンは苦痛に呻く声を出す。


「ふん、まだまだぁっ」

連続で、バクラムは巨大なハンマーを振り下ろす。

人の動かす物と思えない超重量の大槌を、木の棒でも振り回すが如く自在に操る重戦士。

ブン、グガン。ブン、ドガン。

岩と岩がぶつかり合うような破壊音がリズムよく響き渡る。

その度にドラゴンの全身の鱗が変形していき、ついには体勢を崩すようにして巨大なドラゴンはその場に倒れこんだ。


 それでも、その苦しそうな態勢からドラゴンは炎のブレスを吐き散らした。

ドラゴンのファイアブレスの攻撃範囲は周囲180度。すぐ側にいるバクラムはもろに食らう位置にいる。

「防ぎますっ」

ヤンの涼しげな声が響けば、透明な壁がバクラムを囲い、さらにドラゴンを囲むようにもう一重張り巡らされていた。

ドラゴンの吐き出す炎の全てが、その障壁に阻まれメンバーが炎に晒されることはなかった。

「助かった。すまんな、ヤン」

慌てた様子もなく言いながら、バクラムが皆と同じ位置まで下がる。

ドラゴンの障壁はその魔力を持って、すでに修復されていた。

障壁の上からでは、バクラムの大槌でも大してダメージを与えることができない。


「ヤン、もっと下がってていいぞ」

いつの間にか、皆と同じ位置に居たヤンにアーデスが言った。

ヤンの役目は防御や治療という、後衛。戦闘には基本加わらない。

「いえ、大丈夫です」

杖を掲げ、ドラゴンを見据え、真剣な顔でヤンは言う。

その頭に浮かぶのは、儀礼の言った言葉。

『ごめんね、僕は頼りなくて』。けれど、それと同時にヤンに流れ込んできた魔力が語った。

『頼りないままではいない』そう願う、強い意志を。


「私も、頼りないままでは嫌なんです!」

ヤンは前線に出ていた。ドラゴンの障壁にヤンの魔力が触れられる距離に。

そうして、ずっと読んでいた。介入する隙のないと言われるドラゴンの魔力の流れを。

「解析しました。ドラゴンの障壁、解除します!」

魔力と言うその特別な流れに割り込み、ヤンは己の魔力を流し込んだ。

パリンと、ガラスの割れるような音がして、ドラゴンを守る魔力の障壁は砕け散った。

驚異の瞬間を目撃し、他の四人は息を飲む。何かこの広間の中で大きな空気が変わった気がしていた。

そして、その途端にドラゴンの瞳の色が変わった。闇のような黒から鮮やかな紫色に。

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