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ギレイの旅  作者: 千夜
6章
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コルロの『連撃』って何?

 知らない女の人が呼びに来て、ワルツが部屋を出て行った。

入れ替わりのようにコルロが儀礼のいる研究室へと入ってくる。

これは、もしや護衛なのか。と儀礼はようやく気付く。

知らない人間が近寄れるような場所にあるのだ、この研究室は。


 アーデスの研究室内なら安全なのに、と儀礼は思う。

アーデスの研究室前の廊下は、儀礼の仕掛けたトラップだらけだ。

今の所、突破できた研究者も冒険者もいないらしい。

突破しても、アーデスの障壁とトラップがあるのだが。

大掛かりな装置のため、移動するのは不可能。考えても仕方ないことだ。


「ちょうど良いところへ。これ、例の物です」

周囲を警戒し、声を潜めて、儀礼は両手に余るサイズの木箱をコルロに差し出す。

「お前、それどこから出した……」

せっかく儀礼が、やばい物を渡すと言う雰囲気を作ったのに、コルロは呆れたように言葉を返してきた。

 どこから。皆、儀礼の体がどうなっていると言いたいのか。まったく普通だと言うのに。


「サイズは僕のと同じです。型が同じなので。中身はだいぶ変えてみました。僕のは実弾向きだったから。使ったらデータ下さい。改良の余地がありますので」

コルロは早速箱を開く。

中には儀礼のと同じ形の銃。儀礼のは銀色、コルロのはもう少し黒に近い。


「使い方は?」

「説明書が中に。1が魔法、2が実弾です」

簡単にだけ儀礼は説明する。コルロの腕輪よりずっと親切だ。

「実弾も出るのか。アーデス転がしたやつは?」

コルロが言うのはおそらく、最初の対戦の時に使った痺れ針のことだろう、と儀礼は当たりをつける。

転がしたわけではないが。


「扱いが難しいので入れませんでした。手入れや調整ができて、僕に撃たないというなら着けても構いません」

なぜかコルロが笑った。儀礼には面白いことを言った覚えはない。コルロはきっと笑い上戸なのだろう。


 アーデスはまだ戻って来ない。手続きに時間がかかっているようだった。

生きた人間を遺体解析装置に入れるのだ、それはきっといろいろあるだろう。

面倒なことはすべてアーデスに頑張ってもらう。


「そういえば、コルロさん。『連撃の魔法使い』ってどういう意味なんですか?」

暇があるので、儀礼は聞いてみたかった二つ名の意味をコルロ自身に聞く。

穴兎に聞こうと思って忘れていた。穴兎は聞けばすぐ教えてくれるだろうが、今、コルロの前で手袋のキーを操作するのは危険だった。

 儀礼の銃を分解し始めたコルロは、やはり機械に詳しい人間だろう。魔法使いなのに……。


「魔法の発動速度が速いんだよ、俺は。結構自慢だぞ今まで速さだけは負けなしだ」

分解した銃を組み立て終えると、笑いながらコルロは言った。

「魔法の発動速度が速いと連撃なの? 連続魔法とは違うんだ?」

意味が分からず、儀礼は首を傾げる。


「連続魔法は単発魔法なんだ。見てろよ」

そう言って、コルロは手のひらを上に向ける。

パン、と音をたてて5cmほどの小さな花火がその手のひらの上に上がった。

「これがいわゆる単発魔法だろ。そんで、次は連続魔法」

パパパパパン、と連続で次々と小さな花火が上がった。

一箇所に重なるのではなく離れた場所で花火が開くので、ちょっとした花火大会だ。


「すごい、きれいだね!」

魔法の説明だということも忘れて、儀礼はその花火に見入っていた。

「ははは。今のが連続魔法一回分。だから今ので連続魔法は一撃。じゃ、次が俺の連撃な」


 パーーーンッ

音は、ほとんど一つだった。広い部屋中に所狭しと小さな花火が咲き乱れる。

儀礼は言葉を失った。

動く場もないほどの花火に囲まれているのに、儀礼に触れる火種はない。

その操る技術が精度と呼ばれるものか。


「凄い。これが『連撃』」

これは小さな見せるだけの花火だ。

しかし、これが巨大な火球なら、岩撃なら、逃げる間もない速さの雷撃だったなら。

今、コルロが発動した魔法のどれにも詠唱がなかった。予備動作も、魔力を溜めるための時間も。

儀礼の知る、わずかな魔法の知識とすら見合わない。


 説明するように、またコルロが口を開く。

「連続魔法も呪文一回唱えて出るのが、一撃。単発でも連続でも魔法一つが一撃なんだ。それぞれ一撃出すのに、手順や詠唱が必要だったりするんだが……」

そこでコルロは一度止める。その詠唱がなかったのがコルロの魔法だ。何を話そうと言うのか。

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