透明人間になったら 獅子にも聞いたら+α
「ねぇ、獅子。透明人間になれたら、獅子なら何する?」
儀礼が聞けば、獅子は儀礼の顔を覗き込むように凝視する。
「いや、僕が透明になる薬作ったとかじゃないから。実験台にしたりしないし」
なんだか、あらぬ疑いを掛けられているような気がして、儀礼は断ってみる。
「ああ。なんだ。脅かすな」
安心したように獅子が言う。儀礼はまったく本気で脅したりなどしていない。
「単純に、透明になれたら何したい? って聞いたの」
「……ついてってやろうか? 仕事」
なぜか仕事の心配をされた。
透明になってついてこようと思うほど儀礼の仕事ぶりは信用がないらしい。
いや、まぁ、振り返ってみると仕方ないのだが。
儀礼は自分の管理局での態度を思い返し、苦笑した。
この場合、儀礼を心配したのではなく、儀礼の見張りだろう。飯を食べるか、ちゃんと寝てるか、人に迷惑かけていないか、不審者に気を抜いてないか。
「あれ?」
いつもと大差ない。
「獅子、縁の下の力持ち?」
いつの間にか面倒を見られるのが当たり前になっていて、儀礼は驚いたように獅子を見る。
「俺は隠れてなにかできるような奴じゃないぞ」
苦笑するように獅子は言う。
隠れてではなく、自然に儀礼を手助けしてくれている友人。
命を助けられたこともある恩人で、親友、と言い表してくれる相手。
「じゃ、僕が透明になって獅子の仕事についてってあげようか」
獅子のように、儀礼も陰ながら何か手伝えたら――
「恐ろしいこと言うなっ」
最後まで言い切る前に、思いっきり拒否られた。本当に、儀礼は獅子の信用がないらしい。
少し生活を改めるか、と儀礼はようやく考え始めた。
考えるだけできっと実行には至らないだろう。
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「利香ちゃんの様子見にとか行かなくていいの?」
「透明になったら瞬間移動でもできるのか?」
先に、距離の問題があった。
「じゃ、いる時なら?」
「いるのにわざわざ姿消すのか?」
根本的に……。
やはり、この質問をする意味が儀礼にはわからなかった。
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「クリーム、透明になれたら……」
「暗殺は楽だな」
「……だめ、ぜったい。」
やっぱり、何か間違ってると思う儀礼だった。
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「穴兎は透明になったら何したいの?」
「俺は、ネット上じゃほぼ透明状態だからな」
「……」
(やっぱりこれ、犯罪示唆を誘導する質問だよ。僕に答えさせて何しようって言うんだ、アナザー。)




