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ギレイの旅  作者: 千夜
4章
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白いマント

穴兎:”白いマントの暗殺者に狙われたぁ!?”


儀礼のモニターに表示された言葉。絶叫しそうな勢いのアナザーだ。


儀礼:”そんなにびっくり?”


むしろ儀礼の方が驚いて返す。


穴兎:”白ってのは返り血が目立つだろ。それがつかないくらい手際のいいアサシンってことだ。”

儀礼:”そうなんだ。すごいんだね。クリーム。”

穴兎:”暗殺者を褒めるな”

儀礼:”でも可愛いんだよ”

穴兎:”はいはい。お前の可愛いは信用しないことにしてんだよ。”

儀礼:”むぅ”


適当な返事の穴兎に儀礼は口を尖らせる。人の話を信用しないとはひどい奴だ、と。


穴兎:”でもそれ言ったら、お前の護衛もやばいけどな。”

儀礼:”獅子?”


護衛と言われて一番に思いつくのはいつも一緒にいる獅子だ。


穴兎:”いや、『双璧』の方。あいつも白マントだろう。”


言われて儀礼はアーデスの姿を思い浮かべる。確かに、鎧と一緒にいつも白いマントをしていた。


儀礼:”あれって、鎧とセットだからじゃないの?”

穴兎:”そりゃ、古代遺産の効果はあるだろうけどな。”


暗に別の意味もあると漂わせるアナザーの発言。


儀礼:”やばいんだ。”

穴兎:”やばいな”


即答の穴兎の返事に儀礼は口の端を上げる。


儀礼:”……実は僕の白衣も”


楽しそうに口元を歪め儀礼は手袋のキーを打つ。


穴兎:”お前のは漂白だろ。”


言い終える前に言葉を切られた。


儀礼:”うう。言ってみる位いいじゃないか。”


ちょっと強すぎるヒーローみたいのを気取ってみたかっただけなのに、と。儀礼だってそういうものに憧れる年頃だ。


穴兎:”本気に取られて収容されてもいいならな、『Sランク』”

儀礼:”ごめんなさい。漂白です。血がついてもすぐに色が消えます。”


素早く返した儀礼の返事にさらに早い返答があった。


穴兎:”よし、俺が(収容施設に)送ってやる”



 待ち時間が暇だったので、穴兎と遊んでいたらクリームと獅子が戻ってきた。場所は管理局の待合室。

壁よりのソファーでくつろいでいた儀礼は歩いてくる二人を見る。

ただでさえ武人の出入りが少ない管理局で、白と黒のマントを羽織った只者ではないオーラを放つ二人組は目立つ。

きっと冒険者ギルドでも目立ったことだろう。にやり、と儀礼は口元を隠して笑う。


 儀礼は昨日入った収容遺跡の全貌を管理局に登録し、手続きも全て終わらせた後だった。クリームと獅子はギルドへ、ガーディアンと石のライオンを倒したことを報告に行っていたのだ。

ついでに、クリームには冒険者用に新しいライセンスを取らせた。それの試験が待ち時間の長くなった原因だろう。

ゼラードとしての暗殺者の隠れ蓑用ライセンスはこの先使われないことを願う。

「ギレイ。取れたぞ、ランクBだ」

ライセンスを見せながら言うクリームに、儀礼はにっこりと笑い返す。

「すごい。やっぱり実力があるからだね。きっとすぐにAランクになっちゃうよ」

ほめて言う儀礼の目の前まで来て立つと、クリームは照れたように視線を逸らす。


「何がAランクだ。お前、何か細工しただろう! 何なんだよ『砂神の勇者』って」

怒ったような口調なのに、クリームの頬は赤く染まり、儀礼に送られる怒気はない。

 クリームが冒険者登録を行い、最初に取ったランクはCだった。それでも破格と言えることなのだが、直後にそのライセンスでガーディアン討伐報告をすれば、たちまちギルド内が騒がしくなり、偉い人物が出てきて、わけもわからず、Bランクと『砂神の勇者』なる称号を与えられたのだ。


 称号は二つ名と同じで、二つ名には、『蜃気楼』や『黒獅子』のように大衆から広まりその名が先に有名になる場合と、『~の狩人』や今回のように、ギルドや管理局から特定の条件を満たしたことにより与えられるものがある。


 しかし、暗殺者のクリームに『勇者』とは。似合わないにも程がある、とクリーム自身は思っていた。

嬉しいような気恥ずかしいような、貰ってはいけないような、複雑な心境がクリームの表情に表れている。

「細工って、そんなのできるわけないでしょ。僕、冒険者ランクDだよ? 管理局とギルドは片方が圧力かけるような関係じゃないし」

言っていることは正しいのだが、にっこりと笑ったままな儀礼は怪しさ満点だ。


「そんなことよりさ、服買いに行こうよ」

視界の中に入り込む白いマントにできるだけ目を向けないようにして、儀礼は言った。


「は?」

クリームには、このSランクと言う少年の思考がまったくもって理解できなかった。

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