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ギレイの旅  作者: 千夜
4章
109/561

計略の遺跡3

 儀礼達が遺跡に入り、獅子の目の前で扉がしまった。

「おい! こら! 俺はまだ入ってないぞ!」

獅子は怒鳴る。扉の向こうからひっかかるとかなんとかと言う声が聞こえた。

「出てきたら覚えてろよ!」

獅子は扉を蹴り飛ばすが、重い扉はびくともしない。

「完全に閉まったみたいだ。ごめん、前に来たときはこんなことなかったのに」

獅子の怒りの声に軽い調子の返答があった。ゼラードの声だ。反省した様子はない。

「どこかに扉をあけるシステムがあるはずだよ。どっちにしろ扉が開かなきゃ出られないし。探してみよう」

遺跡の中を早く見たいのだろうはしゃいだような儀礼の声がする。

「気をつけろよ、儀礼。何があるかわからないからな」

儀礼なら、「扉を開ける方法はわかったんだけど、他の方も気になっちゃって、忘れてたよ、ごめん」などと言って二日位出てこないかもしれない。

殴り倒したい気持ちが沸き起こり、獅子は扉に拳をぶつける。しかし、扉は開かない。

「獅子もね。多分何か仕掛けが動いてるはずだから」

儀礼の声音が真剣なものになる。本当に動く気でいるらしい。集中して遺跡を調べ二、三日出てこない……って同じじゃねぇか、と獅子は鞘入りの剣を扉に叩きつける。

闘気を乗せたそれでも扉は壊れる気配を見せない。


その時、獅子の視界の端に儀礼の言う仕掛けとやららしい異常が映った。

「俺の心配はいらねぇよ」

扉の向こうにいる儀礼に、獅子が言う側から、柱の上にいた石のライオン達が降り立ってくる。

翼の生えた、本物のライオンよりは一回り小さい、人間ほどの大きさの石ライオン。数は、遺跡の回りに立つ柱の数だけ。つまり、50体程か。


獅子対石ライオン。

儀礼が遺跡から出てくるには長い時間がかかるだろう。

「いい退屈しのぎになりそうだ」

獅子は口を大きく歪めて、楽しそうに笑った。


 次々と襲い掛かってくる石像に、剣を振るい、飛ぶように駆け、獅子は腕試しのように戦う。

その力の使い方はわかっていた。しかし、攻撃のタイミングや助走の速さが今までとまるで違うことに獅子は違和感を覚えていた。

経験が足りない。もっと強い奴と戦いたい。この力の使い方を知る奴と思い切り戦ってみたい。

獅子の切望に応える様に光の剣が輝きを増す。その一振りは一刀の元に二体の石像を打ち砕いた。

獅子は地面を蹴って高く跳び上がる。飛んでいる石ライオンの背を足場に獅子はさらに上へと舞い上がった。

常人ならば落ちて死ぬその高さに、獅子は恐怖を感じなかった。翼有る石ライオンたちとの空中での戦いもその石ライオン自身を足場としか思えない。

空の上で、獅子は飛び移るたびにそのライオンを打ち砕いていった。


 獅子が半数以上の石ライオンを砕いた時だった。

突然、儀礼たちのいる遺跡の中から不穏な気配を感じ取った。ただごとではない、殺気。

石ライオンの背に乗り空中にいる獅子は、唇を噛み締めるようにして固く閉じた扉を睨んだ。

遊ぶのをやめ、本気を出して瞬く間に全ての石ライオンを倒す。

地上に足を着けると同時に扉へ駆け寄ろうとする。


 しかし、砕けたライオン達が光り、元の柱へと戻る。

「ちっ、回復するのか。もう一度やり直しか?」

扉を背に気合いを入れて剣を構えるが、いつまでたっても、ライオン達は動き出さない。自分達より強い相手に逆らわないことにしたようだ。


「……」獅子は待っている。

「……」待っている。

「……くそっ、終わりかよ、思わせぶりな光り方しやがって」

獅子は怒鳴るようにして構えを解いた。

「つまんねぇ……」

儀礼達の入って行った扉を見る。

すでにあの不穏な殺気は弱まっている。かわりに、儀礼の撃つ銃の音が明り取りの窓からかすかに響いてきている。何かと戦闘中のようだ。

獅子はゼラードがやったように門番のような大きなライオンを扉へ向けて回してみる。それでも扉は開かない。

ちっ、と舌打ちすると今度は扉から数歩距離を取り、獅子は気合をため、集中して撃てる限りの衝撃波を剣から放つ。それを、扉のみではなく、遺跡の壁全体に、可能な限りに切り付ける。

それでも、扉も遺跡の壁にもひび一つ入っていない。

(あいつ、騙しやがって)

剣を地面に突き刺し、獅子は白いマントと薄茶色の髪をした少年を思い浮かべる。確かにただ者ではない強さを感じた。

先ほどの殺気が、昨日町で感じた嫌な気配に酷似していた事に、獅子の心は苛立ちを募らせる。


「本当に動かないのか?」

できることもなくなり、仕方なく剣を引き抜いた獅子は、くるりと向きを変えると手近な柱に歩み寄る。

その上にいる石のライオンを剣で突いてみる。

ライオンの頭を冷や汗が伝う。


選択


1.戦う(剣で破壊)

2.逃げる(削除)

3.スペシャル(この苛立ちを八つ当たりにしてぶつける)


獅子はニヤリと笑った。

「三番で」

一人呟き、獅子が剣を持ちかえ走り出した時だった。


テロップ

 ---------------------

 ライオン達は逃げ出した。

 ---------------------

ライオン達が次々に羽ばたき、空へと旅立って行く。


「経験値ハイラネェじゃねぇかぁ!」

獅子の叫びがどこか懐かしげに響いた。

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