表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
追憶の母

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/266

立場と答え Ⅱ

「――で、知り合いにいる?」


 思わず大声をあげてしまったことで、周囲から視線を受けて、羞恥に悶えて、何やかんや約5分後、漸く全員が落ち着きを取り戻した後に、凪沙が切り出した。


「それなら、私と鳴音のもう一人の幼馴染が当てはまりますね。私と鳴音が二歳差で、その子がちょうど真ん中にいるので」

「……みゆ(ねえ)、今どうしてるかな…………」

「あれ? 最近会ってないの?」


 凪沙の最も(でありながらある意味不注意)な疑問に対して、明は懐かしさに目を細めながら、答える。


「小学校低学年の頃に引っ越してしまって、当時携帯端末などは持っていなかったので、あまり連絡が取れていないんです。まあ、あの子は基本的に誰とでもすぐに仲良く慣れる子なので、然程心配せずとも大丈夫でしょうけど」

「おお、何か気が合いそうな子だね」

「もし合うことがあったら、仲良くしてあげてください」

「いや、母か」


 二人の話は変わらず弾んでいく。

 その犠牲者が出ていることにも気が付かずに。


「心配、かけて、ごめんなさいぃ……」

「鳴音、姉とは妹を心配するものです。気にしなくて良いですよ」


 (弱点)にダメージが入る。それは正しく意識外から放たれた貫通攻撃のように、鳴音の心に突き刺さる。それにあまりフォローになっていないフォローをする守美子。

 ついさっき、明は妹のことを「然程心配せずとも大丈夫」と言ったので、寧ろダメージが増した。


「――というか、今思ったけど、守美子もそうじゃん!」

「守美子、大家族でしたね。そう言えば」

「それあまり良いことじゃないんですよ」


 守美子の家族とは、即ち孤児たちだ。

 親を失う子どもは少なければ、少ないほど良いのは道理だ。


「……うん、それはそうだね。――でっ、どうなの? 実際姉らしさって」

「…………私は、姉としてでは無く、母親代わりとして、接しようとしてるからねぇ」

「「分かる」」


 守美子の発言に、幼馴染組二人がこれまた異口同音に肯定を示す。

 守美子の今までに、何か思うところがあったのだろう。


「二人は、守美子のどこにママ味(・・・)を感じたの?」

「凪沙、ママ味とか意味の分かりそうで分からない言葉はやめなさい」

「守美子、その口調とかそれっぽいわよ?」


 ツッコミに更にツッコミが加わる。

 鳴音は少し考えてから、口を開く。恐らく先程は無意識的に言っていたのだろう。


「……結、に対する態度? とか、かな…………?」

「そうですか? 普通に接しているつもりなのですが……」


 鳴音からすれば、結の訓練風景を見る守美子の視線は、母親のそれだ。

 制限はしたくないけど、怪我の心配でハラハラと落ち着かないような、そんな目。


「その子って、加集 結ちゃんのこと?」

「ご存知なんですか、凪沙さん?」


 明だけでなく、鳴音もどこで知り合ったのか分からずに視線を向ける。

 守美子はおおよそ察しているが。


「ええっと、どう言おうかな……」

「凪沙が私をストーキングしている時に、偶々会ったのでしょう?」


 事情(自身の不審行動)は話し難く、言葉に迷っている間に、守美子が彼女にとっての本日の本題を切り込む。当然の如く、目を剥く凪沙。


「どうして、知ってるのぉ?!」

「あれだけ視線を向けてきて気が付かないとでも? ついでに結の気配とあなたの気配がほぼ同じ位置になってから、二人共離れていったので……」


 寧ろ近接戦闘を生業としていて、五感を鍛え上げている守美子にバレないと思っていたのか。

 ちなみに、凪沙の不審者コーデは写真データが守美子のマギホンには入っている。

 やられたらやり返すの精神で、盗撮した。


「今度からは、ストーキングは止めて頂ければ幸いです、清水さん(・・・・)

「ちょ、嘗て無いほど、距離を感じるよっ」

「ご理解頂けますか?」

「――あ、はい。ごめんなさいっ!」


 二人のコントのようなやり取りの間、明と鳴音が声を発さなかったのは、純粋に凪沙に(と少しだが結にも)ドン引いていただけだ。


「いや、あの、言い訳させて貰うと、守美子あの頃、というか最近まで何かずっと悩んでたみたいだし、ちょっと気になってさ……」

「結も言ってましたね。守美子、結すごく心配してたわよ」


 守美子は、二人の言葉に苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。

 実際は凪沙のときには、そうなっていたが。

 また、鳴音は明の発言に対して、自身が聞いてないことが飛び出てきて目を見開いた。

 ついでに、疎外感が追加された。


「――でも」

「ええ」


 凪沙に同意するのは明。

 次に続く言葉は決まっている。


「もう大丈夫なんでしょ?」

「結から数日前に、守美子と話をしたと聞いているから、恐らくその時ね」


 悩みの解消どころか、その要因さえ、もろにバレている。

 というより、要因自体がバラしていた。


「まあ、一応私の中で決着は着いたわ。結との会話でそうなったのも事実ですね」


 前半は凪沙、後半は明、それぞれに向けられた言葉だからこそ、口調にブレがある。

 そろそろ敬語いらないんだけど、という視線が二人分。

 そして、生温かい視線が更に一つ。


 守美子は当初から明らかに居心地の悪くなった席で、僅かに残った飲み物を飲み干した。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ