立場と答え Ⅰ
気づいたら、100話超えてました。
これからもよろしくお願いします。
「……取り敢えず自己紹介からで良いですか?」
いつかの再現のように、凪沙が切り出す。
現在、守美子、凪沙、明、鳴音の4名にて、近くのファミレスに来ていた。
4人席にそれぞれのグループで別れて座っている。
詳しくは、守美子の正面に鳴音、凪沙の正面に明が座っている。
4人の間で静かなカオスが生じた後、必要な衣服を両グループとも購入して、誰が提案するでもなく、現在に至る。
なお、守美子と明は一切買っていない。必要なものが無いからである。鳴音は必要なものがあったから買った。純粋におしゃれを楽しみに来たのは、凪沙のみという結果に終わった。
あれだ、人選ミスというやつである。
「私は、清水 凪沙。守美子と友だちになって、そろそろ10年になります。……えっと、よろしく!」
「ゴリ押したわね。……次、明お願いします」
今回のメンバーの関係上、守美子の自己紹介はいらない。
全員彼女の関係者だ。寧ろ自己紹介をしたら滑稽なまである。
「眺野 明です。隣りにいる鳴音の幼馴染になります。こちらこそ、よろしくお願いします、清水さん」
普段全くと行っていいほど見ない姿ではあるが、明も流石に年上には敬語を使う。
守美子にも、昔は使っていた。およそ最初の一年だけだが。
明は、自己紹介の最中、守美子と鳴音に『念話』を繋いだ。
『この人、もしかして清水監督の娘さん? 確か前に守美子と同年代の娘がいるって言っていたはずだわ』
『…………え、ええ? 本当……?』
『本当ですね。彼女こそ清水 創美監督の一人娘ですね。ただ本人がその事を知らないはずなので、気をつけてください』
現場の状況と、自身の魔力制御を並列して行う魔法少女だからこそ、得意とする並列思考。それが遺憾なく発揮される。そして、3人揃って一切それを表に出さない。
ちなみに、まだ現状では結は肉声での会話と念話を同時に処理するようなことは出来ない。
また、今回の会話で出た監督とは、魔法局支部に必ず一人は勤務することが義務とされている魔法少女の直属の上司である。
監督は、魔法少女に対する実質的な命令権や解雇権を保有する存在である。
各支部のトップである局長以上になることが困難だとさえ言われている。
結は、ただの偉い人という認識だが。
「…………わ、わ私は、神崎 鳴音、です。………………え、と、お願い、しますっ」
かかった時間に対する情報量は少ないが、これでも鳴音にとってはかなり頑張った方だ。
中二の外殻を纏えば、多少は話せるようになるが、それでも中身は一緒なので、結果は対して変わらない。
寧ろ伝わりづらくなるので、コミュニケーションが行い難いという弊害もある。
両極端も良いところだ。
そんなこんなで、全員(守美子を除く)が自己紹介を終えた後に、当然のごとく雑談が始まった。
「――それにしても、幼馴染って羨ましいかも。私一人っ子だし、近所に同年代の子もいないんだよね」
「あら? 守美子とは小学校で初めて会ったということですか?」
「そうそう、当時の守美子、凄い身体弱かったんだ」
主だって会話をしているのは、凪沙と明の二人。
さらっと、守美子の昔話が出てきて、本人としては気が気じゃない。
何を言われるか、分かったものじゃないから。
鳴音は、純粋に会話に入り込むタイミングを逃したため、守美子と揃って隣の者の会話を聞くだけになっているのであった。
女三人寄れば姦しい、とは良く言われることだが、話しているのが実質的に二人だとしても、それは変わらないらしい。人数の問題では無いのだろう。
「あーあ、別に身体が弱いままでいて欲しい訳じゃなかったけど、当時妹みたいに思ってたからちょっと残念に思っちゃった。昔から妹欲しかったんだよねぇ」
「――ぁ、分かる、かも……」
妹として認識されていたことに、守美子が物申そうとした時に、思わずと言った様子で、鳴音が声を漏らす。
すかさず、鳴音に話を振る凪沙。
出会った人とは例外なく仲良くなりたい派の凪沙は、躊躇せずに突っ込んでいく。
割と強引な面が目立つため、反感を買いかねないが、その強引さに救われた守美子がいるのも確かなのだ。
それを少なからず、(最低でも本能的に)理解しているからこそ、凪沙は強引なのだが。
「鳴音ちゃん、分かってくれる? そこの二人が分かってくれなくてさ……」
「そりゃ、私が姉なのは凪沙も知っているでしょうに」
「私も鳴音は妹同然ですから」
「あ、……えっと、私も、おお姉ちゃんしか、いなくてっ。どんな、感じなの、かな……って」
気圧されながらも、鳴音的にも同意されることが手伝ったのか、会話に混ざっていく。
凪沙の人当たりの良さもあるだろう。
まさか、鳴音も目の前の少女が友人を不審者コーデで尾行していたとは思うまい。
「どんなって言われても……ねぇ?」
「ですね。形容し難い」
姉二人は答えに窮した。そもそも、本人たちは姉らしさなど意識していないのだから、答えられないのも当然だが。
「いや、ほらさ、面倒見が良いとかあるんじゃない?」
凪沙は、いくつかの例を挙げていく。
曰く、子どもの対処が上手い、寛容さ、相談しやすさ、など。
けれど、姉たちには不評のようだった。
「それって恐らく年上としてのらしさなのでは?」
「そうね、これらは積み上げられた経験に基づく要素ね」
姉としてでは無く、年上全般に言える要素であり、それを姉らしさと定義するのはどうなのか。
姉とは、同じ親から自身より早く生まれた女性を指す言葉であるために、年上としての要素が姉の要素とされても、然程問題では無いようだが、本人たちからすれば違うらしい。
揃って、首を捻る。
影はかなり薄かったが、実は最初からテーブルにあったドリンクを口に含んだ後に、鳴音がぼそりと呟いた。
「……姉も、妹もいる人がいればなぁ」
一拍止まる。
他3人の思考が。
彼女らの動作が。
そして、弾けた。
「「「それだ!」」」
異口同音に発せられた言葉に、鳴音が一人、ビクリと肩を震わせた。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。
ちなみに、守美子さんが、凪沙の母親が自身の上司であると知っていた理由は割と簡単で、ただ小学生の頃、休日に清水家に遊びにいったら上司がいただけです。




