新たなるライバル
「夢叶ー。」
小さな影が勢いよく私に飛びつく。
「なっおま。おい小僧。深田に抱きつくな。」
真っ先に反応したのは長山君だった。
私にしがみつく男の子の肩を掴む。
「いーやーだー。」
「透。離れろ。」
みっちゃんの言葉で男の子がようやく離れる。
ん?透?それにこの顔・・・
「透くん?大きくなったね!分からなかった。」
「深田さん知ってる子?」
「うん。みっちゃんの弟の透君だよ。」
「「弟?」」
「あぁ。お袋たちが忙しいからなついでに飯食わせろって言われて連れてきた。透、自分で挨拶しろ。」
「金森透、小6年だ。夢叶はおれのもんだから譲らねぇーぞ!!」
そう言って透君はまた私に抱きついた。
今度は小林君達の方に顔を向けている。
「ふふ。透君は本当に昔から甘えたさんだね。」
「いや。多分この子が言ってる事と深田さんが思ってることは違うと思うよ。」
小さい頃から優ちゃんはみっちゃんにべったりだったし、同じ様に歳の離れた姉のいる私は末っ子同士で透君と遊ぶ事も多かった。
そのせいなのか透君はとても懐いてくれて今も姉のように慕ってくれている。
呼びすてにしてはくるけど・・・。
とはいえ受験などもあり去年は会っていないから2年ぶりになる。
たった2年会わなかっただけなのに男の子の成長は早いもんだ。
「なぁーなぁー夢叶。俺、夢叶の隣がいい。」
「はぁ?深田は俺と小林の間に座ってるだろ。小僧は兄貴の横にいけよ。」
「うるせー金髪。お前がどけばいいだろ。」
「俺は金髪じゃねぇ。」
うーんなんと言うか長山君と透君は似てる?のかな。
「透。いい加減にしろ。」
「えーでも兄ちゃん。」
「透。」
「ちぇ。」
みっちゃんの言う事だけは昔からよく聞くもんなぁ。
素直に座った席は長山君の隣で何やら言い合っている。
気が合う男友達ってのはこういう感じかな。
「なー夢叶。夢叶も夏休みに入ったんだろ?夏祭り行こーぜ。」
「昔行ってた神社の?」
「あぁ。俺のクラスの奴らも来るんだ。夢叶の事、彼女って紹介してやるよ。いって。」
「お前嘘言ってんな。」
「将来的なんだから嘘じゃねぇし。」
2人の言い合いを見ている肩をトントンと叩かれた。
「お祭りって地元の?」
「うん。神社のだから多少は大きいけどね。」
「そうなんだ。そのお祭り俺も行っていい?」
「いいよ。」
「って小林!抜け駆けしてんな。深田、俺も行っていいか?」
「は?ふざけんな。夢叶は俺とデートすんの。」
「長山君もいいよ。透くん、みんなで行ったほうが楽しいよ?」
何故か私の言葉に項垂れる透君の隣でみっちゃんと優ちゃんはちゃっかり夏祭りデートの約束をしていた。




