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プランDでいきましょう!! -聖女の涙-  作者: 海
第三章 孤独な人魚
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第46話

 何で服着てないの!? おれ女の子の体触ったの!? え、何この状況!?


 完全に混乱状態である。


 ツバサの上からリリアが退いて暫くしてから、ツバサは上体を起こし、彼女がいる方に背中を向けた。そして自分のパーカーを脱ぎ、後ろへ放る。


「と、取り敢えずそれ貸すから」


 テンパってそれしか言えない。背後ではパーカーのファスナーを留める音が聞こえる。


「……もうそっち見ても平気?」


 すると、うん……、というか細い声が返ってきたので、ツバサはゆっくりと振り向いた。


「――――!?」


 視界に映った景色に息を呑むことしかできなかった。


 頬を赤らめ、胸元に片手を当てるリリア。彼女の下半身に目がいく。淡い水色に艶めく鱗。下半身は美しく細い曲線を描き、尾ひれに繋がる。


「セレティス……さん……?」


 これ以上言葉が出て来ない。頭の中では様々な疑問が渦巻いているのに、極度の戸惑いや焦りが邪魔をして、声を出すことを阻むのだ。


「驚いた……でしょ」


 ツバサと視線を合わせることもなく、苦笑するリリア。


「わたしね、普通の人間じゃないの。月の光を浴びると、こんな姿になっちゃうんだ……」


 彼女の瞳はじわりじわりと湿っていき、それはやがて一粒の雫となる。地面に敷き詰められた苔の淡い光のせいか、涙に色がついているように映る。


「気持ち悪いでしょ? こんな体……」


 悲痛に歪めるリリアの表情に、ツバサは無言で立ち上がり、ゆっくりと彼女の方へ歩く。


「人間になったり人魚になったり……。どっちでもない、中途半端な存在なの……!」


 リリアの瞳からは彼女の意に反して次から次へと涙が溢れる。


「……わたしに関わっていたいとか言ってたけど、本当は嘘なんでしょ? わたしがこんなだって知って幻滅したんでしょ? 気持ち悪いって思ったんでしょ?」


 ツバサは何も言わない。


「ねえ……、気持ち悪いって言ってよ。見たくもないし、話したくもないって言ってよ。関わりたくないって言ってよ!!」


 叫び、苦しそうに顔を歪めるリリアをツバサは優しくも強く抱き締めた。リリアの瞳が大きく見開かれる。


「おれはセレティスさんと関わっていたい」

「……そんなの嘘よ」


 声が掠れ、弱々しい。


「本当だよ。気持ち悪くもないし、ずっと見ていたいし、沢山話したい」

「……嘘、嘘よ! だって何で……」

「放っておけないんだ」


 過去の自分に重なったのかもしれない。ツバサにもあった。人と関わることを恐れていた時期が。


 リリアの辛さや心細さ、不安はツバサには解らない。だが、少なくとも歩み寄れるはずだし、彼女が人魚だろうが人間だろうが、そんなことは関係ないのだ。一人の女の子が自分の目の前で苦しんで泣いているという事実。それだけでツバサには本気で彼女のことを想うには充分なのだ。


「セレティスさんが何であっても、おれは君を嫌いになったりしない」


 それを聞いたリリアは、嗚咽を漏らしながら暫くツバサに縋るように泣いていた。

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