第16話
「えっとー、あの、まずは自己紹介した方が……ね?」
我関せずな不思議っ子と頭の弱い不良王子と機械では、この場を取り纏められない。カノン班の中で最もまともだと自負しているツバサは、話を切り出す。
リリアの視線がツバサに注がれる。
「カノン班の唯一の女性がカノン隊長。個性的な制服の着こなしをしてるけど、ちゃんとしたWGSの生徒です」
「ども!」
カノンが元気に手を挙げて、ニコッと笑う。その天真爛漫な笑顔をツバサは〝エンジェルスマイル〟と名付けている。ネーミングセンスは無い方だ。
エンジェルスマイルを披露するカノンに冷ややかな目を向け、それでもリリアは一応、よろしく、とだけ口にする。
「こっちの口が悪いのはラック先輩」
「お前、その紹介の仕方は一体何だ!?」
ラックがツバサに抗議するが無視。
「で、この浮遊してるのがダイスさん。優秀なエンジニアらしいです」
《ツバサ殿、らしいではなく、事実そうなのだ。よろしく頼むぞ、リリア殿》
ダイスがリリアに近づき、カメラの視点を忙しなく移動させる。だが、それもほんの数秒のことだった。
ツバサとラックの間を風が通り抜けた。剛速球が通り過ぎていったような、視界の端にそんなものが映ったような映らなかったような。
恐る恐るツバサが振り返ると、準備室の後方の壁にメキメキと罅が一点を中心に広がっており、原点には球体機器。ピシッと音を立てて、レンズに罅が入った。
「ダイスさん!? 大丈夫ですか!?」
ツバサが慌ててダイスに駆け寄る。戦闘時でも壊れないように、強度の高い特殊な金属で作られているらしいので、今回は外傷だけで済んだようだ。
《つ、ツバサ殿……、我はもう……満足である……》
ただでさえ普通の声より機械音であるのに、ややノイズが混じっている。そしてカメラの視点がウィーンと下がり、動かなくなった。完全にノックアウト。
一体何を見たんだ? と首を傾げつつも、動作停止のダイスに声をかける。
「ダイスさん!?」
応答なし。
リリアがダイスを投げたのは間違いない。投げられたのは……まあ自己責任ということで仕方がないとして、反射神経の鋭い彼女に目を剥く。余程嫌なことをされたのだろう。
息一つ乱れず凛と佇むリリアに苦笑を向けつつ、ツバサはダイスを放ってカノン班の紹介を続ける。残るは一人だけ。




