第17話
「えーと……、最後はおれだけど、ツバサって言います。宜しく」
会釈をして視線を上げると、リリアがツバサを凝視していた。それだけで彼の心臓は速く爆音を奏でる。
「ねえ、あなた年いくつ?」
「おれ? 十五だけど」
彼女から質問をしてきてくれたことが嬉しく、ツバサは緊張の走る笑顔で答える。どんな内容でも会話ができるだけで高揚する。
「ふーん、わたしと同い年なのね。それにしては背はあまり高くないし、色は白いし……、まるでエノキみたいね」
「エノキ!?」
思わず口がリピートしてしまった。
彼女にそう言われた瞬間、ツバサは落雷が直撃したかのようにピッシャーと脳天が割られた気がした。一瞬にして、彼女にいいところを見せてやるぜ、という試みが粉砕。第一印象は大事だと言うが、それがエノキではもうどうしようもない。エノキのレベルから抜け出すのは至難の業だ。
魂が抜かれたかのように呆然としているツバサを見て、カノンが可笑しそうにキャハキャハ笑っている。ツバサの目尻には薄らと涙。
「その頭に乗ってるのは?」
リリアがモカをじっと見つめる。モカは円らな瞳を二、三度瞬きして、可愛さをアピールする。本当に外面だけはいい。
「こいつはモリンスリスのモカ。おれのパートナー」
「へぇ」
リリアはツバサの正面で立ち止まって腕を伸ばし、スッとした人差し指でモカの頬を撫でる。モカは嬉しそうに鼻を鳴らし、大人しくしている。処世術は完璧だ。
自分よりリリアとお近づきになれているモカに若干のジェラシーを感じるツバサだが、それよりも息遣いが聞こえそうなほど至近距離に彼女がいることの方が、脳の大半を占めていた。彼女からは石鹸の匂いが漂ってくる。
そんないい匂いに酔いそうになりながら、恐らくダイスが投げられた理由はこれだ、と思う。リリアと近いが故に、ワイシャツから少しだけ覗く胸元の谷間が見えてしまうのだ。どうしても視線が吸い寄せられてしまう。彼女と同じ背丈では見えないだろうが、上からだとオイシイことに覗けてしまう。
「で? お前は何でここにいんだよ。ウチの生徒でもないのに制服着てるし、セルバーンの人間なのにキャンパス・シップにいるし」
ラックの言葉にリリアが動きを止め、彼に体を向ける。ツバサは背を向けた彼女にバレないように静かに呼吸を整えた。リリアが接近している間、自分でも気付かないうちに息を止めていたらしい。
「制服着てるのは目立たないようにっていうボルドーさんからの配慮。ここへはヘリで来たわ」
キャンパス・シップにはヘリポートがある。彼女はそこからWGSに入ったということだ。
わざわざヘリで来なくても、別にセルバーンに着いてから現地で紹介されても良かったのだが、それだと時間が勿体ないと判断されたのだろうか。
「さっき話があった通り、この特別任務の存在は極秘扱い。だからセルバーンでは私服で行動して下さいね」
リリアは、ボルドーさんがそう言ってましたから、と微笑むこともなく付け加えた。




