9 いつもより簡単ではない
いよいよこの時間がやってきた。なんか今まで以上にドキドキするな。違った緊張感がある。
「どうなっちゃうんでしょうかっ」
「こんな機会、滅多にないものね。」
当事者たちが揃って話し合うのか。今更なことだけど改めて実感した。
部室には今、恋愛相談室部員と大成さんがいる。
「夕羽が美香を連れてきてくれるって言ってたから、もうすぐじゃないかな?」
と部長がいう。
『ガラガラガラッ』
来た。丁寧に開けるタイプは初めてだな。…ていうことは今どうでも良くって、
「ようこそ、美香」
「し、失礼します」
「?、夕羽も一緒に来るのかと思ってたけど一人で来たのか?」
「うん、概要は聞いたから。夕羽の手を煩わせるようなことはしたくないの。」
思ってた人とは違った。すごい、柔らかい雰囲気の人だな。部長みたいなちょっとサバサバした感じの人だと思っていたよ。
「み、美香!」
大成さんが少し落ち着けてないみたいだ。そりゃそうか。
「一旦、話せる準備をしようか。」
始まる、決戦が。(大袈裟かな??)
___
「大成から、まず言いたいことを簡潔に言ってくれ。」
「俺…、何でフラれたか分からないんだ!美香はただ別れて、としか言わなかったし…。だから、理由だけでも教えてくれないか!!」
大成さんの必死さが良く伝わる。
「…だそうだ。美香、話せるか?」
「う、うん、そうだよね…。た。大成くんは納得できて、なかったんだ…。」
なんか意外な入りだしだな。もっと嫌ってる感じでくるかと…、
「き、嫌いになった訳じゃ、ない、の。仲良くしていたいと思っている、よ。」
じゃあ何でなんだ?他の部員も不思議そうな顔をしている。あと、くん付けなんだ。
「じゃあ、なんで…!?」
本人は一番そう思っているよな、
「だって…、だって、大成くんがもう私のこと嫌いなんでしょ??学年上がってからまたクラス一緒になったけど、一回も私と話そうとしてくれなかった…!他の女子とばっかり喋ってて…、」
「!!」
何だか前の愛梨さんのケースに似ているな。
「いや、そんなつもりじゃ…」
「でも、私はそう思ってたの!しかも、なんか相談したりするのも、私じゃなくて、夕羽にばっかりなんでしょ!?そんなの…、もう私のことはどうでもいいって言ったるのと同じじゃん!」
美香さんは涙目になりながらも、そう訴える。
「ちがっ、俺は、美香が大事だから、嫌な思いさせたくないから、夕羽に色々助けてもらってただけだ!」
「それって言い訳じゃないの」
未璃奈〜!!良くこのタイミングで喋れるなっ!!もうちょっとどうにかできただろー!
「やっぱり、夕羽の方がいいんだ…。私じゃダメだったのかなw。夕羽みたいな子じゃないから、私は。」
何か、あったのか?
「そんなわけないだろっ!」
「周りから聞いたもん。大成くんは、夕羽が好きだったんでしょ?何回も告るくらい。知ってたもん。」
「それは過去の話だ!今は何も関係ない!!」
「嘘だよそんなの、絶対。」
「さっき夕羽の話があったが、何か関係があるのか?」
部長が解決の糸口を探す。
「関係あるっちゃあるけど…、話すようなことじゃないし…。」
「もしかしたら、それがきっかけで大成も何か思うことができるかもしれない。よかったらでいいが話してもらえないだろうか。」
真剣な眼差しで美香さんに言う。
「…ここで話したことって外に出たりしないですよね?」
「ああ。君たちもそれは理解しているだろう?」
「「「もちろんです」」」
ここからが正念場な気がする。片時も気を抜かないようにしよう。
少しピリピリした空気になる。
「じゃあ…、少し過去の話になるんですが……。」
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