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第8話 拭えない恐怖

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 ―ザッ ザッ


 俺が天使を拝んでいると、建物から一人のじいさんが出てきた。



「村の者が取り乱して申し訳ない。私は村長のヘルムと言います」


 いや、まあ、確かにすごい取り乱しようだったけど…。


 でも、それに関しては俺がごめんなさいだからっ!



「俺はユミト。えーと、ただの旅人だ。よろしく」


「旅人、ですか。見ず知らずの私たちを危険を顧みず救ってくださるとは…。なんと、お礼を申し上げれば…」


「いやいやっ。お礼とかいらないから!俺が好きでやったことだからっ」


「ああっ。なんたる度量の深さ。あなたこそ、この村の救世主だ!」


「救世主とか、やめてくれっ。俺は何もしていないから!」


 いや、まじで。


 実際に俺の力じゃないからね、これ。



「はは、私ども村人全員の力だとおっしゃってくれるのですね…。なんとお優しい方。今回犠牲になった者も報われます…」


 違ぇよ!?


 いい話ではあるんだけどねっ?



「ささっ、こちらへ。村の後片付けがあるので、今すぐに、とはいきませんが歓迎しますぞ」


「いや、本当に歓迎とか要らないんで」


「まあまあ、そう遠慮しなさんな。今宵は盛大に宴をしましょうぞ」


 このじいさん、めちゃ強引だな!?



「ああ、もう分かったよ!そしたら、こうしよう。まず、俺は今雨風が防げる場所を探してる。だから、この村に少しの間、居させてもらえないか?」


 さすがに初日から野宿は勘弁してほしい。


 というか、これ断られたら結構マズくね?


 俺、この森から抜け出せる気がせんよ?



「…え?も、もちろん、構いませんが。…この村は貧しいので、何もありませんよ?他をあたった方が…」


 …ああ、そういうことか。



「村長、安心してくれ。俺は今回の件で本当にお礼を求めるつもりはない」


「……」


 彼らは恐れていたんだ。俺がこの村に無茶な見返りを求めることを。


 …まあ、普通そうだよな。


 こんな物騒な世界で自分の身を危険に晒してまで他人を救う。


 そんなのは、見返り目当てか、そうじゃなきゃ単なる馬鹿って話なんだろう。


 だから村長は俺が何か企んでいることを警戒して、適当に歓迎して追い払おうとしたわけだ。



 特に、俺はみんなの前であの強大な力を見せてしまった。


 大多数の人たちはまだ、俺への恐怖心が拭い切れてないはずだ。



「…まあ、そうやすやすとは信じられないか。そこで、だ。この村に居る間、俺にも村の立て直しを手伝わせてはもらえないだろうか」


「なっ…!」


「もちろん、見張りをつけて俺が何か怪しい素振りを見せたら、相応の対処をしてもらっていい」


「相応な、対処ですか…」


「ああ。あんな力を使っていたが、俺も人間だ。いくらでも殺す手段はある。……こんな感じにな?」


 そう言って、俺は《《折れたこん棒の破片で自分の腕を切り裂いた》》。


 予想よりも血が出たが、まあ、この方がいいだろう。



「な、何をしてるのですか!?」


「何をって…。俺がそんなに脅威じゃない、って分かってくれたら少しは警戒も解けるかなって」


 ふふん。俺だってちゃんとこんな風に血が流れるんだぞ!


 …あれ?おかしいな。止まらない…。



「…貴方、お馬鹿さんなの?ちょっと、腕貸して」


「うぅ、痛い…」


 いつの間にか、包帯やらを持っていたティアナが応急処置をしてくれた。



「はい、これで一応は大丈夫。ちゃんと考えて行動してよねっ」


「うん…。ありがと…」


 ふぃー。焦ったー。


 思っていたよりも深くやっちゃたみたい。てへっ


 …はぁ。カッコ悪っ。



「……………」


あらら、黙っちゃた。


今夜は野宿かー。………腹減ったなぁ。



「…はは、はっはっはっはっは!」


「うおっ」


 急に大きな声で笑いだすんじゃないよ!


 ビックリするでしょうがっ。



「村長、どうした?気でも触れたかっ?」


「いやいや、ユミト殿。貴方を疑っていた私がなんだか阿呆に思えてきましたわっ」


 なにおぅ。喧嘩売っとんのか!?



「貴方の漢気、この目でしかと見させてもらいました」


「え?」


 漢気って…。なんか、村長キャラ変わってない?



「これより誠心誠意をもって貴方をこのパーヴァ村の客人として迎え入れましょう!」


「ちょっ、それは俺としては嬉しいけども!さすがに不用心じゃないか!?」


 いや、自分を殺しかけた俺が言えることではないんだけどね!?



「ははっ。確かにそうかもしれませんな。しかし、私はこれでも一人の男。ここまでされて追い返したとなれば我が人生の最大の汚点となりましょうぞ」


「そこまで言われると、血を流した甲斐があるってもんだけど…。本当に良いのか?」


「もちろんですとも!皆もそれでいいなっ?」



「あったりめーよ!」


「そもそも私たちは大歓迎よ?こんなイケメンを逃す手はないわっ」


「ああ!命の恩人を追っ払ったとなったら、村の恥だしな!!」



「みんな…ありがとう」


 多分、彼らは強がっているのだろう。


 だがそれでも、あからさまに怪しい俺なんかを受け入れてくれて…。



 あんな化け物がいて、この世界は俺が元居た世界とは、なにもかもが異なると思ってた。


 だけど、違った。


 人の温かさはこの世界でも変わらないんだな。



「じゃあ俺はこの村に泊めってもらって、その間―」


「ということで、さっそく宴の準備じゃあ!!」


 おい、村長!?そこは変わらんのかいっ!



「ちょっと待て。まだ俺の話は終わってな―」


「ささ、ユミト殿こちらへ」


 人の話を聞けっ!!



「おいっ、あんたらからも何か言ってやって―」



「うっひょーい、宴だぁっ!」


「酒を持ってこーい」



 お前らもかいっ!



 …誰かこの人たちを止めてぇぇぇぇぇ!!!






この作品はカクヨムでも投稿しております。


正直、同じ話を載せるか、違うルートを載せるか迷いました。


なので、読者の皆様の反応次第でこの作品は新たな話に転生してしまうかもしれません。


その点ご了承ください。



追記


この作品がなろうで初投稿なので、何度が修正入るかもです。

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