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異世界をゴーレムと伴に歩む  作者: ぴっぴ
第2章 立身出世編
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22話 ココアと言う冒険者

 冒険者の街チャレンジャー、とにかくここは冒険者が多い。そして冒険者が多いと治安が悪いだろうと一般の人は思うだろうが、実際は違う。何故なら皆血の気が多いので、少しの無礼が流血沙汰へと発展するのだ、そしてCクラス以上の冒険者って奴は非常に危険な存在なので、何故か皆礼儀正しかったりするのだ。ここら辺は体育会系のノリと同じだな、無礼者には容赦なく鉄拳や短剣が飛んでくるのがこの街だ、だからこの街の冒険者は一様に礼儀正しく行動する。なるべく喧嘩をしない様に心がけているのだった。


「ゴン! ギルドに行くにゃ」

「へい!」


 周りは冒険者だらけ、皆武装しているのでこの街は凄く煩い。皆が歩くたびに金属の触れ合うガチャガチャ音がする、そして皆歩くのが早いのだ。その中をノンビリと歩く俺達、冒険者としては平均的な体格の俺と猫獣人のココア、そして後ろにミノタウロスゴーレム。魔物使いも中には居て、大きなトカゲとか大きな狼とかを連れて居る人もチラホラ居るので、俺達もそれ程目立っては居なかった。

 3階建ての大きなギルドの建物を見つけて中に入る、凄い活気が有る所だった。カウンターにギルドの綺麗なお姉さんが20人程並び、反対方向にはクエストの掲示板が有る。そして掲示板はちゃんとクラス別に貼られていて、内容と金額が書いてあった。


「ゴン! あれ! アレから良い匂いがするにゃ!」


「・・・・・・別に良い匂いはしないんだが・・・・・・」


「してるにゃ! これは絶対美味しいクエストだにゃ! 間違い無いにゃ!」


 ココアが言ってるクエストの紙を読んで見たが、唯の薬草採取。それも常時依頼の別段何の変化も無い極普通のクエストだった。念の為にクエストの紙の匂いを嗅いでみたが、普通の紙の匂いでココアが言う様な良い匂いはしなかった。でもまあ、知らない街の初のクエストだ、肩慣らしに簡単なクエストから始める方が良い、この街の仕組みやダンジョンの情報を集めながら攻略するのがセオリーって奴だからな。


「お姉さん、このクエストを受けたいのですが、良いですか?」


「はい、大丈夫ですよ。このクエストはダンジョンの地下21階層に有る薬草の採取です、Dクラスから受けられますから資格は十分です」


 受付でクエストの許可を貰ったので、許可証を持って指定のダンジョンに行く。ダンジョンの入口に行って係りの人に見せると中に入れるのだそうだ。薬草が取れるダンジョンは貴重なのでギルドが管理していて、乱獲を防ぐ為に許可が無い冒険者は入れない様になって居るのだそうだ。


「ココア、ここのダンジョンは許可制なんだってさ、勝手に入ると怒られるらしいぞ」


「にゃふふふふ、知ってるにゃ。勝手に入ると直ぐにバレるにゃ」


「何で?」


「ダンジョンによって取れる物が決まっているから、ギルドで金に替えるとバレるのにゃ。だから不法侵入の場合は違う街で買い取って貰うのにゃ」


「成程~、でもワザワザ違うところに売りに行くのも面倒だから、真面目にやった方が儲かりそうだな」


「その通りにゃ、ギルドに目を付けられたり。時間が掛かったりするよりコツコツ真面目にやる方が長い目で見たら儲かるのにゃ」


 薬草ダンジョンの管理人に許可証を見せると、直ぐに中に入れてくれた。ダンジョンの内部は森の様な感じで、1~9階層がスライムとコボルト、10階層の階層主がコボルトリーダー5匹。そして11階層からゴブリンが出てくる。そして20階の階層主はハイゴブリン5匹~10匹、そこを抜けると21階層になるそうだ。そして21階層からは前に出てきた魔物の他にオークが出てくる様に成るダンジョンなのだそうだ。


「楽勝なダンジョンだな、まあ、クエスト達成の金も2万ゴールドだからショボイしな」


「普通の森で薬草探すほうが危ないにゃ、何が出るか分からないからにゃ」


 俺達2人にとっては楽なダンジョンだった、コボルトやゴブリンそれにオークが出てきても俺とゴーレムだけでも簡単に勝てるのだ。ココアは強すぎるので俺とゴーレムが戦うのを見てるだけの散歩だった。


 ノンビリ戦いながら21階層に着いたのはダンジョンに入って8時間後、ダンジョンの外は夕方位の時間だった。


「どうした? ココア」


「ムムムムム」


 21階層に着いた途端にココアが耳をピクピクさせて、目をつぶって仕切りと何かを探っている。尻尾も左右に振って警戒体制をとっていた。


「あっちにゃ!」


「おいおい! チョット待てココア!」


 いきなりココアが走り出す、物凄いスピードなのでアットいう間に姿が見えなくなる。俺とゴーレムはココアが消えた方向へと全力で走るが全く着いて行けなかった。そして少し走っていると、ココアがニヤニヤ笑いながらダンジョンの壁の前に立っていた。う~む、良く分からない相棒だったが、今回は何時もよりも更に分からない行動だ、ココアの行動って理論がまるで無いので俺には良く分からないのだな、野生の勘って言われても常識人の俺には理解不能なのだ。


「匂うにゃ! 怪しいにゃ!」


「頭は大丈夫かココア! 目の前には壁しかないぞ」


「にゃっふっふ~、ウチの目は誤魔化せないにゃ! 壁は偽装だにゃ! うりゃ!」


 ココアが笑いながら壁に歩いて行くとそのまま消えてしまった、もしかして転移の罠? それか落とし穴って奴か!? と思ってココアが消えた所を必死で見てみたが何も無かった。


「ニャハハハ! お宝ゲットだにゃ!」


「何だ一体!?」


 少ししたら又ココアが壁から現れた、まるでそこに壁など無いような感じで普通に歩いて出てきたのだ。ダンジョンって奴は不思議な空間だから何でも有りなのだが、不思議過ぎてついていけないのだった。


「ココア、今何処に行ってたんだ? 姿が消えたぞ」


「壁を通り抜けて小部屋に行ってたにゃ、宝箱が置いてある部屋にゃ。普通の人間には分からない様に魔法が掛かってるにゃ」


 不思議に思った俺は壁に手を当てて見たが、ちゃんと壁が有る。その後壁を棍棒で叩いてみたり、ゴーレムに突撃させてみたがやっぱり壁だった。訳が分からないのでココアに聞いてみたら、意外な返事が帰ってきた。


「もう、部屋は無く成ったにゃ、お宝が無くなると部屋は用無しに成って消滅するにゃ」


「ふ~ん、ダンジョンって不思議な世界なんだな」


 ココアの手にはお宝らしき宝石が握られているので、本当の事を言っているのだと思う。それにココアは人を騙すような奴じゃ無いので、これは多分事実なのだ。それについての感想は、やっぱり異世界って訳が分からないって事だけだな。よく考えてみると俺のゴーレムも大概謎だし、異世界は謎の力が働いてるって事だけは良く分かった事件だった。


「そんじゃ、薬草獲って帰ろうか」

「それが良いにゃ! この石売ったら金になるにゃ! 美味い物食わせてやるにゃ!」


 それから俺達は21階層で薬草を10本探し出し、ゴーレムに乗って地上へと帰った。そしてギルドでクエスト達成の報酬2万ゴールドを受け取った訳だが、その場でココアが謎部屋で見つけた宝石を取り出したら、それが結構な価値の有る宝石だった様で、ギルドの受付嬢が興奮していた。


「ココアさん、これは何処で見つけたのですか?」


「21階の宝部屋で見つけたにゃ! 壁の奥に有ったのにゃ」


「壁の奥ですね、位置は分かりますか?」


「ここだにゃ! でも宝を取ったから消滅してるにゃ」


 ギルドの受付さんが持って来た21階層の地図を指差して教えるココア。この宝が眠っていた部屋の位置って奴には価値が有るのだそうだ、この位置を色々調べて未知の宝箱のある場所を予測するのだそうだ。結局ココアの宝石とダンジョンの宝箱の有った場所の情報は1千万ゴールドで売れた、何げに凄い収入だった。


「にゃっふっふ、野生の勘が冴え渡るにゃ。当分働かないで済みそうだにゃ」


「何だよ、宝箱さがして金持ちに成るんじゃ無いのか?」


「欲張るとロクな事がないから、当分美味い物食べて遊ぶにゃ! 金は使うために有るのにゃ」


「欲が有るんだか、無いんだか良く分からない奴だな」


「適当が一番だにゃ」


 ココアの野生の勘で大儲けしたのだが、ココアにはあまり欲が無いようだった。人間だったら勘で宝箱を探し出し、大金持ちを狙うのだろうが、ココアは適当に生きるみたいだな、まあ、そう言う生き方だから勘が冴えるのかも知れないな。

 今回俺が学んだのは、人生って奴は努力や理論なんかツキの有る奴の前では全く意味が無いって事だな。幾ら努力しても不可視の部屋を見つける様な芸は選ばれた極一部の者にしか出来る訳がないからな。でもまあ、そんなツイテル仲間が居る俺も又ツイテ居るのかも知れないな。


 



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