エピローグ
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エピローグ
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目の前に置かれた逆三角形のグラスには、赤い液体で満たされ、更にその中にはチェリーがプカプカと浮かんでいる。
「マンハッタンでございます」
マスターに、「ありがとう」と感謝の意を伝え、グラスに口をつける。
「ねえ、私の話きいてた?」
白と黒のチェック柄のワンピースに、赤いマフラーをまとった、金髪の美少女が不満げに話しかけてくる。
「ごめん、聞いてなかった。なんだって?」
「もう!」
彼女は、プリプリと頬を膨らませて見せる。
「まぁまぁ、ほらこっちもできたよ」
マスターが、彼女の前に俺の物と委細同じカクテルを届ける。彼女は、打って変わって嬉しそうな表情をうかべ、それを一気に飲み干した。
「だからさ、教会と魔王軍が手を組んで酒造業界一丸となって禁酒法と戦う道筋はできたんだし。私たちも時間が空いたわけじゃん」
「ん」
「だからさ、また旅に出ようよって話をしてるの」
「旅だって?なんだって今更」
「だってパパは私たちのことを認めてくれたけど、勇者はまだママに会ってないじゃん」
「ママ?」
「そ、いつだったか仕事命のパパに愛想つかして出て行っちゃって、今は行方不明なの。今度は、そのママに挨拶に行こうってこと」
「行方不明のママねえ。俺は構わないが……」
どこからかカチカチカチカチと音が鳴っている。
ふと、音の先を伺うとマスターの手元がそれであった。白いナフキンを持ち、いつものようにグラスを磨くマスターの手は明らかに震え、その爪の先がグラスへと叩きつけられていたのだ。マスターを見上げると、その表情こそ変わらないが血の気が引き真っ青となっている。
あのマスターが……まさか怯えているのか!?
俺は、あわてて彼女を振り返る。
「ママは、パパより強いし頑固だから覚悟しててね勇者」
「ふん、望むところさ」
どうにか精いっぱいの強がりを見せてみるが、どうにも酒は俺の心を丸裸にするらしい。
マスターの手元と同様に、俺の強がった台詞は恐怖に駆られ酷く震えたものだった。
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遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
おわり
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