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言の葉

 川沿いに地の果てまでやってきたものの、結局話ができるような存在と出会うことができなかった。


「いっそ、川から離れて歩いてみようかしら。もしかしたら、下の方に向かう道があるかもしれないわよね」


 彼女はそのことに落胆しつつも、今度は地の果て沿いを歩くことに決めたらしい。

てくてくと、ここまでくる間に芽吹かせてきた花々の間を進み始める。


「どうせなら、新しい種を作るのもいいかしら?」


思い立ったが吉日とばかりに、早速、彼女は袋の中から種を取り出す。


「赤・青・黄色に――いつの間にか白い種が増えてるのね」


 このところ、同じ種類の種しか作っていなかったせいで気づくのが遅れたらしい。

種の袋をひっくり返すと、最初から存在していた三種の種の他に、新しく白い種が転がり込んできた。

彼女は、今までとはまた違う種が作れることにウキウキしながら首をひねる。


「ねえ、みんな? 新しい種は、どんなのにしましょうか?」

「~♪ ~~♪♪」


 彼女の言葉に、小さなお友達はそれぞれの考えをピーチクパーチクと囀り返す。

彼等の間ではそれはきちんとしたやり取りになっている様子だけれども、彼女にはその内容が理解できない。

しょんぼりと肩を落とすと、そんな彼女の様子に気が付いたお友達が何かを思いついた様子で笑顔を浮かべると同じ身振りを繰り返し始めた。


「……?」

「~~♪」


 最初の動作では、首を傾げて両耳の後ろで手を開く。

 次の動作では、口の脇に手をあてがて口をパクパク。


 はじめのうちは一人だけが始めたその動作を、気が付いたらほとんどのお友達が行っている。

そんなことは初めてだったものだから、彼女はきょとんと戸惑った表情を浮かべた。

首を傾げつつも同じ動作を真似した彼女の頭に、ピンと閃いたのは彼女自身が何度も思ってきたこと。


「あ……!」


 彼女は自分だけでなく、彼等もまた同じように考えていたらしいことに気が付き頬を緩む。


「そうね。うん。やってみるわ!」


 嬉しさに弾む声でそう告げると、早速、三つの種を手に取る。

色は赤と青、そして新しく表れていた白。

彼女の中には、今までと違って、三つ使って新しい種を生み出すこともできるだろうという確信があった。


「種よ種。言の葉つなぐ架け橋となれ」


 彼女の紡ぐ力ある言葉に応えて、三つの種はシュルシュルと一つになっていく。

色が混ざり合い、溶け込んでいくとそこには藤色の小さな種が残っていた。

小さなお友達の期待に満ちた、キラキラと輝く目に見守られつつ、緊張した面持ちで彼女はその種を地面に埋める。

彼女が種を作って、こんなに緊張したのは初めてのことだ。

それほどまでに、彼等の期待感が大きいということだろう。

彼女が再び力ある言葉を唱えると、種はスルスルと育っていき、優美な樹木になった。

真っ白な幹に透き通った藤色の小さな葉が生い茂るその木は、淡い光を纏っていて幻想的ですらある。

そよ風に吹かれると、シャラシャラと涼し気な葉音と共に、なんとも魅惑的な香りが周囲に広がった。


 ぼんやりと見とれている中、はっと正気に戻ったお友達が一人、その幹に果敢に取りつく。


「あ……」


 彼女が思わず上げたその声と同時に、次から次へとお友達がその幹に飛びつき、先頭を切って上っていく彼の後を追いかける。

彼女が、てっぺんの見えない高さの木に登っていく彼らをハラハラしながら見守るうちに、最初のお友達が一番下の枝に辿り着き、彼等にとっては太い枝の上を歩きだす。

チィチィ、ピィピィと囀りながら後に続く友達と一緒になって探検する彼らが枝から落ちてしまうのではないかと、彼女は気が気でない。

なにせ一番下の枝ですら、彼女の手の届かない場所にあるのだ。

落ちたら大惨事、待ったなしだろう。


 先頭のお友達は葉の生い茂る場所に辿り着くと、鼻をひくひくさせると舌先でペロリ!

彼は驚いた表情を浮かべると、すぐに笑顔になり葉っぱを一枚ちぎり取ると、大きな口でパクリと頬張った。


「ん~♪ 甘くて、美味しい~♪♪」

「……葉っぱが甘いの?」


 幸せそうに頬を抑える彼に、彼女はうるさいほどにドキドキする胸を押さえながら問いかける。


「うん。さわやかでしつこすぎない甘みが絶妙……?」


 笑顔で答える彼の表情が戸惑ったものに変わっていき、彼女と目が合う。


「僕の言葉、わかる?」


 こくこくと頷く彼女に向けた表情が、喜びに彩られる。

その様子から、彼女との会話が成立していることに気づいた後続のお友達は、ワッと声を上げると我先にと葉っぱを毟って口に詰め込む。

一番手の彼はその勢いに負けて枝から滑って、危ういところで彼女の手に転がり落ちた。


「あのね、あのね!」


 大惨事を避けることができて、ほっと息を吐く彼女の手の中から身を乗り出すようにして、彼は身を乗り出す。


「僕達、みーんな! レフィーのことが、大好きだよ!」


 満面に笑みを浮かべて彼がそう言うと、「ぼくも」「わたしも」と、木の上からたくさんのお友達の声が降ってきた。

とーっても久しぶりの更新ですが、

また、しばらく更新の予定はありませんorz

申し訳ない。。。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やったー!やっとやったー!意思の疎通の会話ができた! [気になる点] ちびちゃん達が一斉に話し出して大変かもww [一言] 作者様~! 続投有り難う御座います! 気が向いたら また更新して…
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