4
ひたすらに沈黙を続ける二人。どんどんと沈んでいく空気が重い。気弱女子二人のヤワな神経は限界だった。
それでも空腹の時に目の前に美味しそうな食べ物があれば、黙ってはいられないのが人情。
私とレイナは、沈む空気に耐えられずにキッチンへと逃げ込み、コーヒーの用意をする。
広くて使いやすそうなキッチンの中にある戸棚には、何種類かのコーヒーカップがあったが、中でも一番シンプルなデザインのものを選んだ。
どうにも、あの男性二人には、可愛らしい小花柄のカップが不似合いに思えたからである。
レイナと二人で、トレイを探し出してシュガーポットやミルクピッチャーとスプーンを揃えた。
コーヒーメーカーの方を見るとすっかり落ちて良い香りが漂っていたので、時間をかけてカップに注ぐ。
できるだけ、ゆっくりと作業をしたのにすぐに終わってしまう。
他にすることも見つけられずに、しかたなくまた、空気が澱んで……いや例の居心地の良さそうなリビングに戻った。
「コーヒーを……」とおずおずと声をかければ、二人はやっと顔を上げて答える。
全体を暖色系の色合いでセンス良くまとめられた室内は、普通だったらものすごく居心地が良い場所のはず。
美味しそうな食べ物もあるし。さっさと座って美味を堪能したかった。
しかし、その前にまずは、どこに座ったら良いものか検討したい。向かいあうように置かれたソファには、大の男がそれぞれに自分のテリトリーだと言わんばかりに広がって座っているのである。
できるだけはなれて座りたいのに、はなれようもない。何だろうこのジレンマ。
レイナと私は顔を見合わせるが特に良いアイデアが浮かぶはずもなく。とにかくはなれて座ろうと端っこに陣をとる。
何となく食べ始め、コーヒーも飲み始めるのだが思っていたよりも空腹だったようだ。
要するに、四人とも無言の内に食べ始め、食糧の全てが皿から消え失せるまで食べ尽くしたのだ。
私は、心の中だけでとめられずに口に出して中山さんの奥さんに対する礼を言った。
すると「はいはい、セリちゃん。色気より食い気だね」雅文さんには思い切り笑われるし、恭太郎には呆れられた顔をされるし、レイナまでがちょっとだけ笑いをこらえているようである。
まあ、食事タイムでは、少しだけ和やかな雰囲気にもなった。後片付けは四人全員でしたので、ちっとも安らぎはなかったし、早々に終了した。
どちらの家にも連絡済なので、女子高生がこんな時間になっても家に戻らなくても誰も騒いではくれない。
ましてや、男性の内の一人は兄であり、婚約者でもある。社会的にも信用があるので誰も彼らを咎めるものはない。
もはや、覚悟を決めて鬼畜二人に存分に叱られるのだなと悲壮感を漂わす。
部屋は、二つ用意してくれたらしい。普通に考えたら婚約しているとはいえ、ここは同性の友人同士で組み合わせを考えるべきではないか。なんて提案を受け入れてもらえるはずもなく、あっさりと一階と二階に用意された部屋に連行された。
しっかりとレイナの腕を掴んだ雅文さんが「じゃあ」とだけつげて一階の奥の部屋の方に向かっていくと、恭太郎も私の手を引きながら起き上がった。自然と私も起き上がることになり、そのまま強く抱きしめられてから唐突に解放された。かと思ったのもつかの間で背中と膝の裏に手を差し込まれる。
気づいた時には、さっき見た優雅な曲線を描いている階段を昇っていた。
ああ、私はこういった映画で出てきたようなシーンにも憧れがあったのです。
キレイなドレスを着たヒロインが恋人に横抱き……いわゆるお姫様抱っこされてどこかに運ばれていくというシチュエーションはロマンチックで美しい。
この私の陥っている状況は、そのシーンに近いようで、実は遠い。どちらかというとホラー映画。
これから私どうなってしまうんだろう的な、恐怖感に満ちたヒロイン。まさにピッタリ。
ホントにどうなるの?
二階の奥の突き当りの部屋が用意された部屋のようで、センスの良いガラスの花瓶がシンプルなテーブルの上に置かれていた。
花瓶には白と黄色の花が飾られていて、歓迎されている感じがする。
多分飾ってくれたのは、管理人さんの中山さんか奥さんだろう。
この別荘が広々としているのに、ちっとも寒々しい印象がないのは、あの二人の努力のおかげかもしれない。
きっと日々こうやって若様のために頑張っているのだろう。
そんなことを考えているうちにテーブルを挟むように置かれていた一人掛けソファーにそっと下ろされた。
正直言ってしまえば、もっと乱暴に扱われるかと考えていた。何だか色々と……。
恭太郎の心を傷つけてしまったようだし。全く悪気はなかったのだけど。
ごめんなさいと誤ったら許してくれるかな?さっきから黙り込んだままだし……怒っているのかな?
「あの、恭太郎?今日は色々とごめんなさい」
「……」
「反省しています。だから許してください?」最後は何故か疑問形になっちゃったわ。
頭を垂れるようにしたままで、全く無反応の恭太郎の態度に私は困っていた。
だから下の方から顔を覗き込んでやろうとしたら、どういうわけか恭太郎の膝の上に座り込んでいたのよ。
えっ私、いつの間にこんな芸当を?どうやったら、あの姿勢からこの態勢になってしまうの?
私があまりのことに呆然としていたら、恭太郎がクスクス笑いだした。
「恭太郎?」恭太郎がクスクス笑いをしたまま、私を見下ろしてくる。
恭太郎の膝の上でほとんど横たわらされているといってよいであろう、この姿勢は実はさりげなく疲れる。何故なら体のほとんどを空中に浮かせているような状態なために、体中の筋力を使わないと維持できない。 かといって力を抜いてしまえば、頭が下に落ちてしまうし、それでは苦しい。
苦しいけど、恭太郎のこのクスクス笑いの方が嫌な感じがする。
何だかよからぬことが起きそう。主に私にとってだけど。
「あれ?セリ怯えちゃっているの。僕が怖いのかな」静かに話す恭太郎の声はいっそのこと、大声で怒鳴られた方がマシだったというくらいに恐いよ。
お願いだから怒鳴って。なじって。
すでにそんな気分だったんだけど。顔に手を置かれてゆっくりとなぞられている今はそんなことは考えられなかった。
姿勢が辛いことに気づいた恭太郎がベッドに場所を移したことも原因の一つだろう。
清潔そうな白いシーツはおひさまの匂いがして一層切なさがつのる。あまりに健全な環境の下での不健全な行為におよぼうというのだろうか。
恭太郎の指が唇のあたりを何度も往復しているけど、それだけである。
指はゆっくりと、唇から頬、耳へと移動しながら首筋に到達した。
私は、どういうわけか首筋を触られると子供の頃から弱いので触られたくないんだけど。
幼馴染みの恭太郎のことだから絶対知っているはずなのに何故か、しつこく首筋からはなれてはくれない。
「いっ……あうっ恭太郎っそこ、くすぐったいってば」ついに弱音を吐いた私に「ふ~~ん」とだけ言うとようやく指ははなれてくれた。
それで、楽になったかというとそうでもない。だって恭太郎の指が私の足の方にのばされたきたのだ。
「スベスベだね。脱毛とかしているんだ?」
「マ、ママが女の子の身だしなみよっていってエステで……」最初は、普通に触っていたのが徐々に普通ではなくなってきたのはお仕置き?お仕置きなの?
段々と上の方に手の平を滑らせてくるのは、見えてないけど感触だけで分かってしまう。
気のせいか、体が熱い。恥ずかしさのせいかなとも思っていたんだけど。
「恭太郎!何だか熱い……私、病気かな?」ちょっと怖くなって泣きそうになったら、恭太郎の目が少しだけ柔らかくなって嬉しかったのは内緒にしとこう。
「大丈夫!セリ。それは病気じゃないよ。僕が君のコーヒーに少しだけ薬を入れといただけだから」とニッコリとすごく嬉しそうに笑う。
「藥?って何の?」まさか、毒薬?私は毒殺されちゃうのかしら??
「うん。僕が作った特製の媚薬だよ」大丈夫、変な副作用が出ない弱いやつにしておいたしって付け加えてくれたけど。
何で一応婚約者にそんな怪しげな藥を盛っちゃってくれているのよおおおおお
私はドップラー効果が出るほど叫んでしまったけど、ここは文字通りに山の中の一軒家である。誰にも迷惑はかからない。
「雅文さんとレイナには聞かれちゃっているよ。恥ずかしい」
「ああ、一階と二階だよ。聞こえるもんか」第一、あっちはあっちで忙しいさ。と言われてから気づいた。
レイナもお仕置きされているのだろうか。もしかしたら……。
「レイナのコーヒーにも盛った?」何をとは言わないが充分に通じるはず。
「さあ、雅文には一応渡したけど。使うかどうかは自由だからね」
そんなことよりも、僕の方に集中してね。これ以上他の人や他の事考えているようなら……。
と暗に脅されて素直に従ったのは言うまでもなかった。
まあ、そんなわけで、私は恭太郎に前回よりもじっくりと触られまくり、舐められて恥ずかしい喘ぎ声なんてものをあげたのです。
そんな恥ずかしいことを散々されましたが、結局最後までされなかったのは、運が良かったのでしょうか。
朝方まで寝かせてもらえず、性感をどこまで高めるの?と考えてしまうほど高められても結局最後まではされませんでした。
もしかしたら、これこそがお仕置きなのかもしれない。
だって体力を根こそぎ持っていかれたように疲労困憊で次の日も起き上がれなかったのですから。
恥ずかしいことにお風呂どころか自分でトイレにも行けずに恭太郎に世話されっぱなしになった。
年頃の女子としてはかなり恥ずかしくもあり屈辱的でもあった。恭太郎は嬉しそうだったけど。
変態っと力いっぱい罵ったのに喜々としていたので諦めた。
何だか自分のなかで何かが崩れた気がする。これが大人への階段をのぼったってことなのかな?
ちょっと嫌だなあ。
どうにか終了しました。また何か投稿したら読んでやってください。
読んでくださってありがとうございました。




