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【完結】異世界転生したら無能スキル「収納」で追放されたけど、覚醒したら最強だった件  作者: すくらった


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26. 収納、それは

魔王城最深部。

天を貫くような黒水晶の柱が立ち並び、床は鏡のように冷たく光っていた。

その中央に、玉座があった。

そして、玉座の前に立つ影、アモルシフ。

銀に輝く鎧をまとい、瞳は炎のように紫に燃えていた。


「よくぞここまで辿り着いた、人間ども」

その声は低く、どこか愉しげだった。

ユウトは剣を構える。

背後でアヴリルが詠唱を開始し、ミャウが爪を研ぎ、マオが闇のオーラを展開する。


「終わらせる。これで……全部」

ユウトの言葉に、三人が頷いた。


「ふふふ。やれるものなら、やってみろ!」

アモルシフが吠え、空間が震えた。


「いきます!」

アヴリルが心でイメージを完成させる。

「光の……柱っ!」

天井を突き抜けるほどの光柱が、アモルシフを包み込む。

 同時に、マオの闇が地面から這い上がり、黒鎖となって敵の両腕を拘束した。

ミャウが閃光のように跳躍し、爪を鎧の関節部へ叩き込む。

ユウトは宝玉を外し、ありったけの剣撃を叩き込む。


爆音、閃光、衝撃。

世界が一瞬で白に染まった。

床が震え、瓦礫が降り注ぐ。


だが。


煙が晴れた時、アモルシフは微動だにせず、そこに立っていた。


鎧には傷一つない。

むしろ、その表面は淡い光に包まれ、破壊された箇所が自動的に再生している。


ミャウの目が見開かれる。

「にゃ、にゃんで!? 確かに当たったのに!」

ユウトは息を呑んだ。

爆薬も、魔法も、刃も、何も通らない。


アモルシフがゆっくりと顔を上げた。

「この鎧は、傷を拒絶する。攻撃を受けるという事象をトリガーに、再構築するのだ」


光が鎧の縁を走り、まるで血管のように赤く脈打った。

「今度はこちらから行くぞ」

次の瞬間、銀の甲冑が動いた。

剣が、音速を超えて走る。

マオが咄嗟に闇壁を展開するが、光の刃がそれを一瞬で貫く。横薙ぎに爆風が走り、マオの身体が宙を舞った。


「マオッ!」

ユウトが叫ぶ間もなく、アヴリルに衝撃波が直撃し、魔法が中断される。石床が裂け、アヴリルが柱に叩きつけられた。


ミャウが素早く走り込む。

「こんのぉっ!」

彼女の爪が閃くが、剣の一閃で弾かれ、体ごと吹き飛ばされる。壁に激突し、ミャウは激しく咳き込んだ。


ユウトもまた、アモルシフが放つ衝撃波に吹き飛ばされ、背中から床に叩きつけられる。

肺の中の空気が抜け、意識が揺らいだ。


「くっ……」

視界が滲む中で、アモルシフが歩み寄ってくるのが見えた。

その姿は神のように荘厳で、絶望そのものだった。


「滑稽だな。人間は、何度でも抗う。だが結果は同じだ」

剣がユウトの脳天に向けて持ち上げられる。


その瞬間。火花が散った。


アモルシフの足元から、かすかな煙が上がる。彼の鎧表面が、一瞬だけ不規則に脈動した。

「……なんだこれは」


「かかったにゃ」

ミャウのか細い声が聞こえた。

彼女は、傷だらけの体で立ち上がりながら、小瓶を握っていた。


中には乾燥薬草。


気がつくと、床一面にまき散らされている。


「薬草の粉……?それがどうした」

 アモルシフが嘲けり、また一歩ユウトに近づく。だが次の瞬間、再度彼の足元で光がはじけ、鎧がびくりと震えた。


「これは……」

アヴリルの目が見開かれる。

マオが、にやりと笑う。

「推測通りだったな、アヴリル」

「ええ」

アヴリルもまた、笑い返す。

 

「なんだ、なんだというのだ」

アモルシフの声に焦りが混じる。

ユウトは不敵な笑みを浮かべた。


「『過回復』だよアモルシフ」

「過回復……だと」

「お前の鎧は常に回復し続ける。だがそこにさらに回復をぶち込んだらどうなると思う?」

「まさか……」

「そう、身体は限界を超えて!破壊が始まる!クロウにポーションを投げつけられた時みたいにね!」


彼は即座に袋を開き、収納空間から無数のポーションを発射する。

「これでもくらえ!」

瓶が風切る音とともに散弾銃の弾のように飛び出し、アモルシフに次々と直撃した。

ガラスが砕け、回復液が鎧の隙間に染み込む。


アヴリルは拳に光をまとい、治癒魔法を上乗せする。

「リジェネ・オーバードライブ!」

光の拳が鎧を殴りつけるたびに、鎧が膨らみ、変形していく。


「く、くぉ、貴様ら……!」


ミャウは爪に薬草を塗り込み、跳びかかる。

「にゃああっ!」

緑の軌跡が宙を裂き、薬草の粉が閃光のように散る。傷は塞がり、そして行き場を失った体組織がぶつかり盛り上がっていく。


「に、逃げ……」

「逃がすものか!」

マオは闇を集中させる。地より湧き出た闇の鎖が鎧を締め上げた。


アモルシフの身体が膨張し、内部が軋む音が響いた。

「バカな……私が……この私が!」

鎧の表面が波打ち、歪み、金属が軋んだ。光が漏れ、煙が上がる。


ユウトたちは渾身の力で押し込む。ポーションを投げ、魔法を叩き込み、拳を振るう。


「いけええええ!」


だが、しばしの後……

瓶の音が途切れた。

アヴリルの光が消える。

マオの闇が薄れる。

ミャウの爪が、粉を使い果たした。


「……もう、ないにゃ」

息を荒げ、ミャウが悔しそうに呟く。

ユウトの袋も、底を尽いていた。


「くくく、もう、あと、一歩だったな」

限界まで膨張した鎧。変形し、破損したその甲冑により、アモルシフ自身もほとんど動けなくなっていた。

アモルシフの鎧が、一瞬だけ静まり、再び鼓動を始めた。

「一度、引くとしよう、このまま、どこかで、この回復を吸収するまで待てば、私の、かちだ」


何か、何かないのか……

ユウトは、反射的に袋の中をまさぐった。


指先に、冷たいものが触れる。

それは、触り慣れた形。転生の瞬間、トラックに轢かれる前に口にしていたエナジードリンク。


まだ半分残っていた。


「まだだ」

ユウトは飲み残しのエナジードリンクを取り出し、一滴、床に垂らした。


バチン。それだけでアモルシフの鎧が火花を放つ。


「な、なんだそれは」

「エナジードリンクさ」

「エナジー……ドリンク……?」

「異世界のことを研究してた割に知らないのか。遅れてる、な!」

ユウトは缶を思い切り投げつけた。

 缶は、アモルシフの頭に当たり、カコーンと軽快な音を立てる。液体がアモルシフの鎧に飛び散った。


次の瞬間、鎧の内部から輝きが放たれる。

「な……この物質は……世界外の……」

アモルシフの声が途切れた。

鎧が震え、爆発的な光が放たれる。


「ギャァァァアアア!」


白光。轟音。


金属が崩壊、破裂していく音がした。


静寂。


ユウトが目を開けた時、そこにアモルシフの姿はなかった。

ただ、焼け焦げた床と、散った光の粒が舞っていた。


「……終わったの?」

ミャウの声が震える。

ユウトは頷き、膝をついた。

「ああ、俺たちの、勝ちだ」

袋を抱きしめながら、深く息を吐いた。

アヴリルがゆっくりと立ち上がり、治癒魔法で仲間たちの傷を癒す。

「やったんですね、私たち」

マオが空を見上げた。

「これで……」


ユウトは、壊れかけた袋を見つめた。中は空っぽだ。

けれど、何かが満ちていた。


仲間たちの声、笑顔、戦いの記憶。それがすべて、ユウトの「収納」の中にあった。


「帰ろう」

ユウトの言葉に、三人が微笑んだ。魔王城の玉座、もう誰も座るもののいないその椅子を後に残して、四人は魔王城から出ていった。


城の外で、マオは振り返る。紅き月に照らされた闇の中、魔王城はいつものように荘厳に、そして壮麗にそびえ立っていた。


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