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第9話 天朝の舞踏会


 夕陽が沈み夜の来るのを待つ。


 そして、夜が来れば開かれるのは次の朝明けまで、ギルドナ王国の全ての民が踊り楽しむお祭り。 


 その名も〖天朝の舞踏会〗


〖朝明けに踊ろう 著作 冒険家 ラインバッハ〗




「頼んカミ……オァ?! 俺、寝ていたのか? 確か夢の中で俺と同じ立場の奴等と……」


「何を寝ぼけてんのよ。ロロ。大丈夫?」


「ん? ああ、薬についてはちゃんと頼んできたぞ。アイナ」


「薬? バカに付ける薬の事? アンタ、何を言ってんの? バカの死ぬの?」


「……俺はバカだが死なねえよ」


「そうね……それよりもリク君を(なだ)めてあげてよ。あれ、そのうち何するか分からないからさあ」


「あん? リク? リクなんていつも冷静沈着だろう? なあ? リ……」


「何故、マリアさんの手をあれ程、近く……ああ、一国の王子という立場を利用して、マリアさんを崩落する気ですか。これはお父様に報告しなくては」


「リ……ク? どうしたお前?」


「ギルドナ王城に入ってからずっとこうなのよ。ほら、マリーの方を見てみなさい」


「マリーの方?」



「シュリル家のご令嬢がこれ程、お美しいとは、〖呪いの人形〗事件では、煩く言うものも入ると思いますが、どうでしょう。その呪いが解けたあかつきには、私の息子との婚姻を」


「はぁ……お父様に話してみない事には何とも」


「いやいや、シュリル嬢。我が国の魔機研究はこの〖魔機界(マキナ)〗でも最先端を行くものでして、そのアークスから受けた呪いの解除も何とかして見せましょう。てすので、どうか我がアメイジング国に一度お越し下さいますと……我が王子が大変に」


「そうなのですね。それは……」


「いやいや、我が国に」

「美しい貴女には絵の都へと……」


「ハハハ、大人気ですね。シュリル嬢。流石、アルフェウス師匠の娘さんだ! 皆さん。そう一斉にシュリル嬢に詰められては、彼女も困惑してしまいます。今夜は朝明けまで続く舞踏会、懇談の機会はいつでも来ますので一旦、解散しましょう」


「おお、これは失礼しました。ルイ王子」

「ルイ王子。国王様はいつ頃、公の場に来られるのですか?」

「ルイ王子。先日の天魔獣、討伐の件なのですが……」


「ええ、全て後でお聴きしましょう。ではまた後程……シュリル嬢、行きましょう」


「え? あっはい。分かりました。ルイ王子様……」


 私はルイ王子に手を引かれ、隣国の要人の方達の輪から抜け出しました。


「最初、手を強く握ってすみませんでした。俺のいつものクセでしてね。相手の手を強く握って、その人物の強さを図るんですよ」


「はぁ……大丈夫です。故障などはしなかったので」


「故障? ああ、今の貴女の身体ではそう表現して言うのですか……」


 ルイ王子は立ち止まり。私の握っている手を見つめました。


「ルイ王子? どうかされましたか?」


「……アルフェウス師匠から手紙を受け取っていて、貴女が魔機人形になった事は知っていたんですが……この様子では、ユグドラの万能薬はまだ手に入れられていない様ですね」


「ユグドラの万能薬をご存じなんですか?」


「ええ、知っていますよ。何せ、俺も欲してしますからね。病に侵される母を治す為に、ギルドナ王国中を探している程にね」


「……ルイ王子のお母様が病に?」


「ええ……知っていますか。シュリル嬢。貴女の場合は〖呪い〗が原因でその身体になってしまった。だから、今の貴女の身体の状態は〖聖女〗様がいれば解けるかもしれないんですよ」


「私の身体の呪いを……〖聖女〗様がですか」


「ええ、そして、俺の母の場合は医者も諦めるシストレ病と言う奇病……〖ユグドラの万能薬〗でしか治す事ができない病気なんです」


「……だから、ルイ王子はこう言いたいのですか? 聖女様に私の人形化の呪いを解かせるから、私がもし〖ユグドラの万能薬〗を手に入れたのなら、それを譲って欲しいと?」


「流石、マキナ公国が誇るシュリル家のご令嬢。一度の説明で理解して頂き、感謝します」


 これはどう答えたら良いのか分かりませんね。〖ユグドラの万能薬〗は現在、ハルピュイアさんが下の世界へ降りて、探して来てくれています。手に入る確率は大きい。


 そして、〖ユグドラの万能薬〗は私の呪いの人形化を必ず治してくれる存在です。それはクリス商会のオークション会場でアリアさんを治した時に、確認済み……そして、〖ユグドラの万能薬〗は有りとあらゆる病、呪い、心の病気すら治してくれる薬です。


 ハルピュイアさんが下の世界で手に入れてくれる数も検討もつかず、いつ帰って来られるかも分かりません。


 聖女様の力で私の呪いが解けるかもしれないだけでは、このお話を了承して良いのかも分かりません。


「ルイ王子様」


「はい……」


 ルイ王子はとても真剣な顔で私を見ています。無理もありませんね。自身の母が病に侵されているのですから、そして、それを一刻でも早く治してあげたいのでしょう。


「申し訳ありませんが、今、私の手元には〖ユグドラの万能薬〗はありませんし、探す為の情報もありません……ですが、ユグドラの万能薬を入手した場合には、聖女様をご紹介頂けますか?……人形化の呪いを解くお話をお聞きしたいので」


「おお! では、俺との交渉をする余地はあるということですか。それはありがたい! ありがとう。シュリル嬢!」


 ルイ王子は先程の険しい顔とはうって変わり、とても明るい表情になりました。そして、私の両手を握って上下に降っています。


「あ、あの? ルイ王子様……会場にいる皆様が見ていらっしゃいます」


「ハハハ、そんなの気にしなくて良いですよ……どうですか、シュリル嬢。もしも貴女の人形化呪いも聖女様に解いてもらう事が叶い。俺の母の病気め治ったあかつきには、貴女を私の妃として、我が国、ギルドナ王国へと招きたいのですが」


「は……い? 私を妃……てすか? それは……えっと」


 突然のルイ王子の発言に私はフリーズしてしまいました。


「俺は貴女の父君とも師弟として懇意の中だ。俺はあの人を尊敬している……まあ、この話しはまた別の機会にでもしましょう。もうすぐ、天朝の舞踏会も始まりますし……貴女の騎士をこれ以上怒らせるのは得策ではない様だ。では」


 ルイ王子はそう告げるとリク先生達が入る方へと指を指しました。


「私の騎士?」


 そして、私はルイ王子が指指す方に目を向けると……


「抗議してきます!」

「止めろ! リク! ここはマキナ公国じゃないんだぞ!」

「そうよ。いつもの冷静沈着なリク君に戻りなさいよ」


普段、絶対に怒らないリク先生が怒りの表情を浮かべ、アイナさんとロロギアさんに羽交い締めにられていたのでした。


「……良い騎士ですね。あのテリクス家の方が羨ましいですよ。貴女の様な淑女の隣にいられるのですから」


「え?」


「いえ、何でもありませんよ。では、俺はこれにて失礼します。どうか天朝の舞踏会を楽しんで下さい」



 ルイ王子は私にそう言うと大臣らしき方を連れて会場の奥へと行ってしまいました……



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