40.契約、大森林横断
漆黒の大地にそれは今も存在している。
王のいない城であるが、誰も立ち入ることはない魔族は死んでもなお魔王に恐怖し、その力を本能的に感じているのだ。
この城の中に二千年も眠り続ける財宝があると知っても……。
魔王という存在は闇を司る神に力を授かり、魔王になると言われている。
だから魔王の家系というものは存在せず、その魔王になるものは時には人間もいるということだ。
「だけど魔王が複数人、現れれば争いが起きるらしくて……その戦いに勝った者が魔族を束ねる。まぁ支配するものなんて世界中にあると言うのに、そこの城だけが毎回争われているんだって……」
「へぇ~、何かあるんでしょうか?」
「さぁね、なんせそれが起こったのは私は生まれていないから……」
「でも二千年も現れないということはあるんでしょうか?」
「分からない。魔王の力は神から授けられるが、存在する証拠もない神がまた誰かに魔王となる地阿kらを与えるまで、と思うが……歴史を見ても長くても三千年は停滞があったらしいからな!」
「そうなんですか……それで師匠、魔王城までどれくらいですか?」
「ん? え~と、私が話し始めて数分だし、この森を抜ければ、《大陸移動》で短縮できる。でもまだまだだよ! 大丈夫休憩は取るから!」
アリュラ魔法国から北方へ……。
北の地に魔族の領域がある。
ただ北へ進むだけだから迷うことはないが、それより遺体だな。
なくなっていたら、ラズウィールと同じく戦わなければいけない。
ナイラも目的は世界征服。
魔王軍に仕えていた私が言えるセリフじゃないが、できるわけがない。
今まで魔王が世界を征服できたことなんて一度もない!
それが分かってても、今度こそはとアビルス様は葛藤していたが……。
勇者の力は光の神から授かったのだろう。
神の使者同士が戦い、それを見て、神は楽しんでいるのだろう。
ナイラが魔王なら勇者は今回どこから現れるのだろう。
「そういえば、契約はしたの?」
「あぁ~そうでした!! も、もう一回――」と再召喚をしようとした瞬間、背後から影が近づく。
「――主よ、私はまだいます」
「うわぁ、ビックリした! ちょっと、エ、ヴィ? エ、ヴェ?」
「ヴェルバーディア!」
「そう、ヴェルバーディア!」
「名前を忘れるなんて……で、その様子だと契約はまだみたいね」
「契約は何をするの?」
「契約内容は主の名前を私に教え、そして私に名前をつけてください……」
意外と召喚獣との契約は単純だ。
召喚獣が顕現し、その維持を魔法使いの魔力で補っているからだ。
「名前か……私はリーネ」
「リーネ、いい名だ。それでは私に名前をつけてくれ……」
「え~と……ん~……そういえば貴方の性別って?」
「私は女、です」
「ん~じゃあルナはどう?」
「ルナ、ですか……はい、主がつけた名前なら大いに結構です!」
「結構!?」リーネは違う意味で解釈して震えた。
「おい、違う意味で解釈しているぞ! ヴェルバーディアは喜んでるんだ!」
「そ、そうなんですか~よかった」
「ふぅ~、契約が済んだなら進むよ。休むって言ったけど、日が暮れてからだからね」
「そのことですが、偉大な魔法使いよ。私の足なら徒歩でこの大森林の半分は越えてみせますが……」
偉大な魔法使い。
魔力で存在しているヴェルバーディアはミーシャを目視しただけで内に秘める魔力量と力を理解できるから下の地位で話している。
「へぇ~、じゃあお言葉に甘えて……全員騎乗できるの?」
「勿論です!」
そして三人が乗った瞬間、景色が後ろへ吹っ飛んでいく。
物凄い速さだ。
この世界では一番の速さだ。
木々がまるで避けているように、一切の揺れがなく進んでいる。
「これがルナ・ヴェルバーディアか……」召喚獣とはあまり関わりのないものだったが、今この速さに関心した。
【面白いと思ったら下の星「☆☆☆☆☆」の評価よろしくお願いします。_(._.)_作者のモチベーションに繋がります。】