39.底知れぬ決断
「では、状況整理から……」騒動が治まった後、魔法師塔所属の魔法使いたちが襲撃された国内の復興に取り掛かった。
国民には魔族の暴走と認識された。
まぁ、事実に近いからよかったが……その内容は多く違うだろう。
ミーシャはベルゼンダークと早速密会を行い、情報整理を始めた。
「現在の情報は、黒幕となるのは二千年前、魔王と争い、名を馳せていた『破滅の魔女』と呼ばれる女ナイラ・ディルリオン。今も生きている最初に姿を見たのはヴァ―リシュ王国……確か第一王女と対談するみたいだったが……そしてここでシルドゥーリから第四偽原魔法について聞いた。そして蘇生魔法の実現かどうか分からないが、死んだ魔王幹部を使役していた……」
「ふぬ、君と面識があった。蘇生魔法の信じられないが……」
「理性というものは恐らくない。命じられただけに行動していたから確実な蘇生ではないのだろうが、私もそんな技術は知らないし、二千年前にもなかった。だけどあいつは死なず、私のようにここまで…………」ミーシャは口に出しながら、今ある情報を整理していく。
するとその考えがある所に行きつく。
「二千年から奴は生きている。まぁ、本人かどうかも分からないけど、私が不老となったことに関わりがあるのなら……」
「な、なら……?」ベルゼンダークが恐る恐る聞くとミーシャは悶え、肘をつき頭を抱える。
「なら、魔王軍に裏切り者がいた……ということになる」
「……そ、そうか」
「君にはピンとこないだろうが、二千年前にはそんなものはなかった幹部達の仲は悪かったが、最終的に裏切り者なんて出なかったし、全員……いや蘇生という力の可能性があるのなら、死んだとは言い切れない。確かめる方法はある……その結果で私の動きも変わってくる……」
「……魔王軍幹部を使役して、か。戦力としては十分だからな」
現時点では何処に隠れ潜んでいるかも分からない。
しかし幾度となくちょっかいをかけられたら、いくら何でも守り切れない。
あいつが出す駒の質と量で決まるが……。
「……それとラミーが言っていた聖王国の部隊の行動からして、聖王国はナイラの手の内と思っていいな」
「それで根本的な問題だが、破滅の魔女が生きていて、何が目的か分からないがミーシャ、君は全く無関係ではないということ……もし破滅の魔女が世界征服だったら、止められる存在は限られ、最後は君の前に立ちはだかるだろう。その時になるのを待つか……それとも抗うのか……?」
真剣な表情でミーシャに問い掛ける。
全くの無関係ではない、正しい。
止められる存在は限られ、最後には自分、あり得る。
結果、世界が滅びる。
しかし私の本心は過去を忘れたがっているが、そんなことは不可能だと確信した。
だって……二千年の中で一年でも過去を忘れたことなんてなかった。
だから生涯向き合い続けなければいけないもの……そして簡単に忘れられるものでもないこと……それは死を望んでいるのと同じだ。
なら、直接向かわず対策はできる。
「抗うとも、だけどやり方はこっちで……」
「まず何をするのだ?」
「……魔王城へ向かい確かめる。方向性はそこからだ……そうだなこれは私の問題、だから自分で決めるが、すぐには無理だ。だけど抗う!」
「……そうか、まぁ私より遥か長く生き、実力も上なのだから反論もできないが、自分が思うように、だな……才能を育てたい親はそう言うだろう」
「ふん……親かぁ~、もう記憶にないや」椅子の背もたれに体重をかけ、豪華な天井を眺める。
するとダダダダッと廊下を走る音が近づき、ハイルが飛び込んできた。
「ミーシャ様! ベルゼンダーク様! 結界を張ったはずのこの魔法師塔の魔導書保管庫が破られていました!!」
「何!?」
ハイルの案内で魔導書保管庫に向かうと確かに荒らされていた。
そしてミーシャは奪われたものが場所ですぐにわかった。
「奪われたのは、この世界の書……もう世に出ているのはあの本しかない」そう言いながら荒らされた本を手に持ち、本棚にしまう。
ミーシャの後にハイルも片付ける。
「世界の書?」
「あぁ、あれは魔王城の地下で見つけたもの……別に魔法に必要じゃなかったからここにしまっていたが……まさか、これが本命だった。それくらいあいつには必要なものだったということか……ふん。こっちはいつでも、最終的に貴様をこの手で!!」
正直、本命は威力偵察か、だたのちょっかいだと思っていたが、違った。
見事に外れた。
その悔しさで最初は押しつぶされそうになったが、その気持ちがやる気へと瞬時に変化されたのだ。
知能は向こうの方が少し、少し上だと思うが、火力では絶対に負けることはない!
いいや、私自身がそれを許さない。
それだけが私の取り柄、そして奥の手をもう少し増やしておく必要もある。
自分の伸びしろは終わっちゃいない。
「今から魔王城に向かう! 突然だがこちらが攻めない以上、私たちが一歩先へとあいつが差が広がっていく。なら隠れても仕方がないからな!」
「そうか……この国のことは任せておけ!」
「あぁ、今までもそうだったろ!」
「師匠、私達も行きますよ。それが弟子というものですから!」
「私も、行きます!」
「当たり前でしょ。お前らを置いて行ったらラミーが死んじゃうよ!」
世界の書。
二千年より前に書かれた書物。
その中身は世界の構造や要素、創造時に作られたものが細かく記されていた。
世界征服を企んでいるあいつには必要な本だ。
世界の仕組みを理解すれば、世界を操り、駒と化すのも容易になる。
「……これが、久しぶりの誰もいない故郷へ」
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