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38.片翼の戦い



「よし、結界を再設置した! だが国内にモンスターが侵入している!」


 ナイラは大した策略家だ。

 あらゆることを予想し、計画を立てている。

 裏を返せば、ナイラの行動で何をしたいのか分かるのだ。

 魔法国の襲撃。

 ただミーシャだけが目的だとは思えない。


「……私達が食い止めます!」

「え? まだ無理だよ!」とリーネの言い出しにラミーが反論する。


 まだ戦闘能力は低いが、力の使い方は教えられた。


「だけどこのままじゃ……」


 するとバシュッバシュッと血界を破る音が聞こえる。

 もう既に魔法師塔の入り口の前にはモンスターが集まっている。


「行きます!!」

「私も!!」


 二人は階段を駆け下りる。

 その後ろにラミーもいた。


「貴方達をほっとけないもん!」


 エントランスまで降りるとモンスターが結界を破壊しようとしていた。

 

 しかし何故だろう。


「ラミーさん。私、モンスターって人より知性って低いと思うんですけど……」

「あぁ、確かにそうだけど……これは」


 結界を破壊しようとしているモンスターたちはこの魔法師塔に向かって、結界を破壊している。

 まぁ、襲う対象がいるなら別だが、さっきまでエントランスには人はいなかった。


「操られているのかも!」

「その可能性が高い……」


 バキッと結界に亀裂が入る。

 まさか魔法使いの中でも最も優れた人物ベルゼンダークが張った結界がもう既に破られようとしている。


「それに強化もされている……このままじゃ破られるのは時間の問題だろう」

「……なら、ふん!」リーネは右手を前に出し、意識を集中させる。


 魔力を操作し、魔法を展開する。

 足元に純白の魔法陣が展開され、神々しく光り輝く。


「ほぉ、これが召喚魔法……」間地かで見るのは初めてのラミーは釘付けになる。



「くッ……」リーネは何かに耐える。


 召喚魔法は通常の属性魔法より魔力を消費する。

 その理由としては召喚させる時に起こる召喚獣の実体化と留めておくために必要な魔力供給……召喚専門の魔法使いは召喚時に魔力を多く消費し、維持はそんなにつらくはないと言う。

 恐らくリーネもそのタイプだろう。

 更に初めての召喚で魔力の流れと消費量に影響し、身体全体に圧が掛かっている。


 そして純白の光は巨大化し、更に光が強くなる。

 いよいよ召喚だ。


「風と光の獣よ、我に従え!――霊獣ヴェルバーディア!!」


 この召喚獣が記載されていたページに呼び出すための詠唱が書かれていた。

 教えられたわけではないが、一目見て覚えられたみたいだ。


 その瞬間、空間が白く輝き何かが共鳴する。


「オォォォォォッ――――」低い咆哮と共にそれが現れた。


 黄金の毛並みに碧眼の狼と狐が合わさったような外見をしている。


「はぁ……はぁ……」

「二度目となる召喚……まさかまだ若い君が主とはな。しかし召喚できたということはそのくらいの技量はある。主、早速契約としたい所だが……」


「え、契約?」

「召喚獣は契約することで双方にメリットのある効果を齎すんだ」契約のことについては召喚魔法の基礎には含まれないし、状況は魔力操作なら猶更だ。

 ミーシャが教えていないものしょうがない。


「だがそのようなことしている場合ではないようだな!」


 その言葉に全員が前方を見ると結界に入った亀裂が全体に広がる。

 そして遂に崩壊を遂げる。

 

「主、命令を!」

「ッ……ここに侵入させるわけにはいかない! どうにか食い止めて!!」


「了解した!」霊獣という部類は単純な物理攻撃は通用しない。


 霊と獣、半分が実体ではないため単純な物理攻撃は通用せず、自身の弱点となる属性も耐性をつけることができる。

 獣という部類の中では頂点に立つ存在で、使役する召喚者は現代にはいないだろう。

 

「グワァァァッ!!」人より凌駕した身体能力で素早く縦横無尽に動き回り、その一撃で相手の急所を見抜く。

 

 この純粋な戦闘能力はこの国で一番だ。

 知性があろうとも動きが鈍ければ一瞬、素早くとも先読みされて終わり……。

 本にはあらゆる魔族、魔人と戦い、無敗。

 召喚者の寿命によって消え去ったと……。


「す、凄い……」

「一体だけでモンスターの群れを凌いでいます!」


「……まさか、これほどなんて……」三人は揃って、霊獣ヴェルバーディアの戦闘に圧倒されていた。


 

 そして最後のモンスターと倒したと同時に何かが解き放たれ、暗雲に埋め尽くされた空に光が灯る。


「やった!」勝利したことに心が浸る。


 だがすぐに別の事に意識が向く。

 リーネが向いたのは、崩壊した道からミーシャが歩いている光景だ。


「師匠!!」

「ミーシャ様!!」


「流石、ミーシャ!」三人と一人は魔法師塔の前で再開する。


 何の傷も負ってはいないが、内面には確かに傷が見えたリーネ。


「師匠、大丈夫ですか?」

「あぁ、だがスッキリはしないな。確かに引きずり込まれそうだったが、私は自分からあっちに行かないと決めた。なんせお前達がいるからな!」と笑顔でリーネとシナの頭を撫でる。


「う、うわぁぁぁん!! よかったですぅぅぅ!!」と声を上げ、涙を流しながらミーシャに抱き着く。


「主の、師匠……」


 背後から聞き覚えのない声が聞こえ、振り向くとデカい狼がいた。


「え……嘘、霊獣ヴェルバーディア!! まさか、召喚できたの! 嘘!!」

「そ、そうです。私が召喚したんです!!」と涙を拭き、エッヘンと胸を張る。


「よくやったな! 誇らしいぞ~!!」

「わ、私も頑張ります!!」


「あぁ、シナも負けるなよ!」


 純粋な嬉しさが溢れ出したのはいつぶりだろう。

 これが弟子が成長した瞬間であり、抱く感情なのか……。

 

 師匠、貴方も……。


 万能の魔法使いは弟子の成長を喜び、同時にこれが師匠というものなのだろうと理解するのだった。

 



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