11.リーガル・ハイ
しかし、違法薬物ねぇ…。
違法薬物は中毒性のある植物から作られている。医療用に使用されるものは中毒症状を起こさない決められた量を使用しているが、シソーラス(チョウセンアサガオ)や、サルビアなど幻覚症状や痙攣を起こすものがある。毒性が強いから早めに処置しないと死ぬからな。
実際、生霊女が言っていた植物の根皮も幻覚症状や嘔吐、下痢などの症状が出るが、情緒不安定になったり高揚感などないはずだ。
だが、生霊女は嘔吐等の症状が出たことがないという。
お茶に柑橘類の果汁と、ある動物から採れるものを後から入れて数時間煮出すそうだ。
そこから考えると、あの商人は根皮粉末に何か混ぜていたはずだ。高揚感を高め中毒性のある何かをな。有名な芥子科の樹液の粉末やマリファナ、ハーブの組み合わせで効果がでるものとか…。
例えば教会で葬儀で焚くセージは魔除けや浄化の効果がある。
死者を祀る鎮静効果のある香木も然り。
長い年月をかけて固まった沈丁花科の樹の樹脂の鎮静効果がある沈香や、沈香の最も上質な伽羅、樹の年輪の中心の芯だけ香る白檀なんかは鎮静効果、緊張や不眠、興奮、精神疲労に効果がある。
香木は高価だから一般にあまり出回る事はない。
だが、オレが最初にいた紫陽花公園の古城跡地が滅ぶ前は、生け贄信仰があった。
悪魔憑きを鎮めたり、雨乞い祈願だったり色々と。
まあ、ぶっちゃけりゃあ、王族の権力を知らしめる為のでっち上げなんだけどさ。
儀式をするために香木を焚き、その中に芥子科の植物や麻科の植物を乾燥させたものも途中で焚くのだ。
儀式の参列者はみなその煙を知らず識らずのうちに浴びて参加する。
煙で肉体についた浄化と称し、暗示にかけて信者を増やす。いわゆる洗脳だ。
素敵紳士もその可能性から、調べているらしい。
その手の事に詳しい治安警備隊の知人も巻き込んで色んな方向から探ってる所だそうだ。
最近ハイドランジアでも増えてきている違法薬物はハイドランジア政府も対策を強化している。
商業協会や治安警備隊が張り紙やチラシを配ったり新聞で告知しているが、識字率があまり良くない…、というか色んな国の文字がごった煮状態のハイドランジアでは、やはり認知されるまで時間がかかる。
世界共通語はあってないようなもんだし。大抵自国の言葉で事足りるもんな。世界共通語は話せるが読めない、また読めるが発音が難しくて話せない、とか。思考がそれたけが、
生霊女の事情には同情しなくもないが、素敵紳士に取り憑くってのは御門違いだろ。
お前さんが素敵紳士に取り憑いてる事で、素敵紳士の寿命の理が狂っていく事を、根気よく説得したら解ってもらえたみたいだ。
『私だって解っているの…。でもそうよね、私のせいでカエデ様が苦しんでいるなんて…』
顔を伏せて震える生霊女の表情は視えないがなんかゾワゾワする。