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長かった……

「やったー、やったよ、ルクス! やっと抜けたよー」


「あぁ、やっとだな……さすがに疲れたなぁ……」


 ルミナは両手を上げて喜んでいる。俺の方に振り返ると喜びのあまり涙を流していた。気持ち分かるよ……


 ゼルハイジャンとの戦いから2カ月……ようやく俺達は一生続くのではと思えるほどの森を抜けた。遠くには町も見える。久しぶりに見る人工物だ。


 さすがの俺もキツイ日々だった。ゴールの見えない道ほど辛いものはない。知らない場所で、正解かも分からない道をひたすら進んでいく。さらに多数の高レベルの魔物……衣食住の心配なかったのは本当に助かった。いくらレベルが高くても飢えてしまってはどうしようもない。


「早く町へ行きましょう! おいしいご飯が私を待っているわ」


 新しい町=ご飯というのはこんな時でも変わらないらしい。


「いやいや、まずは情報収集だろ。早く帰らないと……」


 ロッソのイグナイトを離れてかなりの時間が過ぎてしまった。シャルルやグレイブにも心配をかけていることだろう……もしかしたら死んだと思われているかもな……


 それにアスールの状況も気になる。俺がまだブランやプラシアにいたときは平静を保っていたが、いつ事態が変わるか分からない。ロッソの動きも気になる……特にあのグラムという男……


「ねぇ、どうしたの?」


 俺が考え込んでいると、ルミナが顔を覗かせてきた。


「ごめん、ごめん。ちょっと気になることがあって。じゃあ急ごうか」


「うん! じゃあ、あの町まで競争ね! 負けたらご飯奢りだからね。ヨーイ、ドン!!」


 俺の答えを聞く前にルミナは猛スピードで走り出してしまった。


 あんなに楽しそうなルミナは久しぶりに見た気がする。しょうがない、付き合ってやるか。まぁ、負けてやるつもりもないけどな。



「うぅぅぅぅぅぅ、ルクスのバカぁ。ルクスが本気出したら私が勝てるわけないじゃない」


 俺に町の数百メートル前で抜かされて逆転負けをくらったルミナが膝を地面について悔しがっていた。


「競争って言うんだから、そりゃあ本気で走るさ」


「女の子相手なのに……レベル差凄いのに……」


 泣きそうな顔で、俺を上目づかいで見てくる。ずるいぞ……


「分かってるって。ご飯なら俺が奢るから機嫌直してよ」


「えっ!? 本当に? 後から無しっていってもダメだからね」 


 そう言うとルミナはすくっと立ち上がり町の中に入っていった。相変わらず簡単な女の子だ。


「はいはい」


 それにしてもルミナのスピードが想像以上だった。思わず途中から本気を出してしまった。この2カ月魔物を狩りまくったおかげかレベルも上がっているようだな。あとで落ち着いたら聞いてみよう。


 町に入る。イグナイトやブランのように大きくはなく、こじんまりとした町だ。今まで行ったことがある中だったらガザンに近いか……けれど中々活気のある町のようだ。人々も皆笑顔だ。平和そうな町だな。だが……


「ルミナ、一応警戒しておこう。ここがどこの国か分からない以上、俺達が他国の人間と分かるとどういった対応をされるか分からない」


「うん、そうだね。わかったよ」


 俺達が町の入り口で立ち尽くしていると一人のお婆さんが話しかけてきた。


「あんた達見ない顔だけど旅人かい? どこから来たんだい?」


「いえ、私達アスールのプラシアから来たんですけど、迷ってしまって……」


 おいおい、ルミナ! さっき警戒しようって言ったばかりじゃん!


 お婆さんは怪訝そうな表情を浮かべ俺達を見ている。


「ふむ、アスールから……迷ってたどり着ける場所でもないんだけどね……もしかして冒険者の方々かい?」


 よかった、とりあえずあまり警戒はされてないようだ。でもこのままルミナに任せていたら危ない。俺が変わろう。


「はい、そうなんです。アスール、もしくはロッソのイグナイトってところに行きたいのですが……」


「ちょっと遠すぎて私にはわからないねぇ。でもあそこにいけば分かるんじゃないかしら。冒険者の方もいっぱいいるみたいだし」


 そう言って、ひときわ大きな建物を指差す。ギルドかなぁ。


 お婆さんに礼を言って、お婆さんが指差して方へ向かった。

  

「ねぇ、ルクス。ここがどこなのか何で聞かなかったの?」


「あっ、忘れてた……」


「も~、そんなことだと思ったよ。急に話に割り込んできたから何かあるのかと思ったのに。そっか、久しぶりに私以外の人に出会ってテンションがあがったのね。しょうがないなぁ」


 ルミナは一人で納得して、どんどん先へ進んでいった。


 確かに俺も抜けてたけど、元はと言えばルミナがいきなりアスールとかいうからじゃん! しょうがないはこっちのセリフだよ! とは言えず俺はどこか納得できないままルミナの後ろを付いて行った。



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