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ここはどこ?

「まぁ、決着も付いたことだし帰りますか」


「そうだね。お腹すいたしね」


 怒ったルミナをなだめて俺達は魔法で地形が変わってしまった荒野を歩き始めた。


「……ルクス?」


「…………なに?」


「今私達ってどこにいるの?」


「……わかんない」


「えっ……それってやばいんじゃ……」


 そう、やばい! 俺達はゼルハイジャンのトランスファーという転移魔法で移動してきたのだ。この場所がどこなのか一切分からない。当のゼルハイジャンは俺の魔法で跡形もなく消えてしまったし……


 周りを見渡しても、只々荒野が広がっているだけで、建物などの建造物は存在しておらず人の気配はない。


 うん、やばい! ピンチ!


「確かにやばいけど、幸い水も保存食も大量にある。きっと歩いているうちに人の住んでる所が見つかるさ。そこでイグナイトへの帰り道を探そう」


「そ、そうだよね。ルクスと一緒ならきっと大丈夫だよね」


 若干不安そうな表情を見せたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。


 ごめんな、ルミナ。俺があんな魔法使ったから……せめて場所さえ聞いてれば……


「よし、そうと決まれば食糧の確認をしておこう。何日かかるか分からないからな。最悪、森でも見つかれば水や食料は確保できるけど」


「分かったわ。森よりも先に町を見つけたいけどね」


 とりあえず今日はテントを張って荷物の確認をして寝ることにした。お互いのボックスを確認したところ普通に食べても1か月はもつくらいは入っていた。特にルミナのボックスには常人では消費しきれないほどの保存食が保管されていた。それでもルミナには1か月もつかどうからしいが……


「ルミナ、保存食嫌いじゃなかったっけ……」


「嫌いよ。でも何も無いよりはましでしょ。飢えて死ぬなんてぜぇぇぇぇぇたいに嫌だもの」


 ほんとルミナは1日食べないだけでも我慢できないだろうな。でも今回は助かった。俺だってルミナには飢えて苦しんでほしくない。食料があることに少し安心して、眠りについた。


 ……そして1か月後


「ルミナ、そっち行ったよ!」


「任せて!」


 ルミナはゆうに5メートルを超える虎のような魔物を一振りで絶命させた。


「ふう、これでこの辺りの魔物はいなくなったかな」


「うん、じゃあご飯の時間ね。準備するから待ってて」


「あぁ、いつもありがとな」


 俺達は見知らぬ荒野で放浪して3日目にして今いる名前もわからない森に辿り着いた。そこまでは良かったのだがこの森が広いのなんの。毎日ひたすら歩き続けているが一向に出られる気配がない。


助かったのは、この森には多くの果実や野草が生い茂り、多種多様な動物が多く存在していた。そのお陰で食料には困っていない。テントも以前最高級の物を購入していたので快適に過ごせている。困ったのは先ほどのような魔物が頻繁に現れることなのだが……


 この森に生息する魔物は今までに見たこともない魔物ばかりだった。なので名前も分からない。それに例外なく強い! ギルドのクエストだったら最低でもA、基本はS以上の強さを持つ魔物ばかりだ。普通の冒険者だったら1日も生きられないだろうな……ルミナも最初の数日は苦戦する魔物もいたが、今ではかすり傷一つ負うことなく討伐することができている。いいレベル上げになっていることだろう。


「はい、できたよ」


「おぉ、今日も一段とおいしそうだな。いただきます」


 目の前には焼いた豚肉にオレンジのソースをかけた、とても遭難中の森の中で出てくるとは思えないお洒落な料理だった。一口食べてみると甘酸っぱくさっぱりとしていて、脂っこい豚肉にとてもマッチしていた。


「うん、今日もうまい。前から料理は上手だったけど、この森に来てさらに腕が上がったな」


「ふふふ、町と違ってお店がないから毎日作らなきゃだしね。それに材料も限られてるからメニューを考えるのも大変よ」


「そんな無理しなくても、たまには楽してもいいよ。おかげで保存食もいっぱい残ってるし」


「うん、ありがと。でもやっぱりルクスに少しでも喜んでほしいし……将来の役に立つだろうし……」


 ルミナはそう言って恥ずかしそうに皿の上に乗った巨大な豚肉の塊を黙々と食べ始めた。将来……結婚したらとかそういう話かな……想像すると俺も恥ずかしくなってしまい、お互いに食べ終わるまで話さなくなってしまった。


「ごちそうさま、皿は俺が洗っておくから休んでていいよ」


「うん、いつもありがとう。それにしても中々森を出られないね」


「ほんと広すぎだろ、この森。もう一生二人っきりで森から出られないかもな」


「一生この森で二人っきり……」


 ルミナは思いつめたように顔を伏せた。しまった、不安にさせたかな。


「冗談だよ。もう少しできっと出られるさ」 


 と俺が励まそうと明るく話しかけると、


「わたし……子供は二人ぐらい欲しいかな……ルクスは子供嫌い?」


 ルミナは不安そうなまま顔を上げ、突拍子もないことを言い出した。


「えっっ、何の話?」


「だってルクス一生二人っきりって……」


 何かとんでもない勘違いをしたようだ。そういう意味で言った訳じゃないと説明すると、顔を真っ赤にして逃げる様にテントにあるベットの中に隠れてしまった。


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